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石けんを「有害物質」に指定? 
洗剤業界の思惑か

岡田幹治|2020年4月2日12:35PM

【石けん普及運動への牽制か】

そもそも脂肪酸は、人間を含む生物を構成している天然の有機化合物で、川や海の生物が食べれば栄養源になる。このように脂肪酸ナトリウム・カリウムは自然界で循環している物質なのであり、「生態毒性」試験の対象にするのも、PRTR法の対象にするのも適切でないと吉野輝雄・国際基督教大学名誉教授は指摘する。

この問題は前回の見直し(2008年)で取り上げられ、政府は脂肪酸ナトリウム塩の一部(ステアリン酸ナトリウムとオレイン酸ナトリウム)を第一種物質の候補にした。これに対し研究者らが環境中には存在しないなどの反対意見を提出。政府は「両物質は環境中では不溶性のカルシウム塩になるので、水に溶ける限度以下の濃度なら毒性の発現がないと考えられる」として、生態毒性を「クラス外」に修正し、候補から取り下げている。

問題が蒸し返された背景には合成洗剤業界の思惑があると、長谷川治・洗剤・環境科学研究所代表はみる。

洗濯洗剤やシャンプーなどに幅広く使われている合成洗剤関係では、九つもの物質が第一種物質に指定されている。これらの物質は手荒れを起こすなどの健康影響のほか、自然界ではなかなか分解せず、生態系に悪影響を与えるからだ。

この点を石けん普及運動をする人たちに批判されている業界は、これをなんとかかわしたい。それには石けんも第一種物質に指定されれば好都合だ。そうした業界の思惑に政府は応えようとしているのだろう。

いま新型コロナウイルスの感染予防策として、石けんを使った丁寧な手洗いが奨励されているが、仮に石けんが第一種物質に指定されれば、人々は本当に使っていいのか迷ってしまいかねない。

廃食油からリサイクルで石けんをつくっている団体や企業を環境省が表彰していることとも矛盾することになってしまう。

政府は石けんを第一種物質の候補から取り下げるべきだ。

(岡田幹治・ジャーナリスト、2020年3月20日号)

 

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