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石けんを「有害物質」に指定? 
洗剤業界の思惑か

岡田幹治|2020年4月2日12:35PM

石けんで手洗いすればウイルスを除去でき、生態系への影響もない。(撮影/岡田幹治)

政府が石けんを「生態系に有害な物質」に指定したいと提案し、研究者や消費者が猛反対している。

PRTR法(化学物質排出把握管理促進法=化管法)は有害性のある化学物質を管理するための法律だ。人の健康か生態系に有害な恐れがあり、環境中に広く存在している物質を「第一種指定化学物質」(以下、第一種物質)に指定し、政府が環境への排出量などを把握して監視している。

第一種物質は約10年置きに見直されており、2月25日、現在の462物質から527物質に増やすという見直し案が発表された。市民の関心は高く、3月13日に締め切られた意見公募には多数の意見が寄せられたとみられる。

見直し案で消費者が驚いたのは「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」が候補物質に含まれていたことだ。これらは動植物の油脂からつくられる物質で、石けんとして人間が昔から使ってきた。

それをなぜ第一種物質に指定するのか。政府の審議会(厚生労働省・経済産業省・環境省の審議会の合同会合)は、実験室での「生態毒性」試験で水生生物に悪影響が出ており、生態毒性が「クラス2とクラス1」(上から2番目と1番目に強い)であることを挙げている。

これに対して多くの研究者は、実際の河川や海は実験室とは異なると指摘する。河川水や海水にはカルシウムなどが含まれているので、脂肪酸ナトリウム・カリウムは脂肪酸カルシウムに変化し、生態毒性は発現しないという。

第一種物質に指定されるのは、一定以上の生態毒性があり、しかも難分解性と高蓄積性がある物質だ。しかし脂肪酸ナトリウム・カリウムは微生物で分解されやすい性質があり、下水処理場や河川でほぼ100%分解される。この物質が河川や海で検出されたことはなく、この点でも指定要件を満たさない。

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