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乳幼児虐待事案で無罪判決相次ぐ 
日弁連セミナーで「揺さぶられ症候群」見直し提言

小石勝朗|2020年3月6日1:54PM

弁護士や医師らが意見を交わした2月14日の日弁連セミナー。(撮影/小石勝朗)

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)を根拠に起訴された刑事裁判で、無罪判決が相次いでいる。日本弁護士連合会(日弁連)は2月14日、「虐待を防ぎ冤罪も防ぐために、いま知るべきこと」と題したセミナーを東京都内で開催。SBS理論の機械的な適用が冤罪を生んだと強調し、関係機関が対応を見直すよう訴えた。

SBSとは、頭にけがをした乳幼児に硬膜下血腫、網膜出血、脳浮腫の3徴候があれば、外傷がなくても激しく揺さぶったこと=虐待が原因とみる理論。これに基づき傷害致死罪などに問われた親らに対し、大阪高裁が昨年10月と今年2月に1審の有罪を覆して、東京地裁立川支部も2月に、それぞれ無罪判決を出した。

SBS事件の弁護にあたってきた川上博之弁護士(大阪弁護士会)は無罪判決を分析し、「病気や窒息、低い位置からの落下でも3徴候がそろう可能性があると認定した」と評価。埜中正博・関西医科大学診療教授(小児脳神経外科)は「SBSは実在する」としながらも、脳浮腫などは発生のメカニズムが未解明だとして「医学だけの判断では虐待かどうか分からない部分がある」と解説した。

SBS理論の刑事事件への適用を見直すため、弁護士や医師に警察、検察、裁判所まで交えた協議の場を求める意見も出た。

SBSが疑われた際の児童相談所による子どもの一時保護や親子分離も問題視され、川上氏は「(親が)虐待を否認すると長期化する」と硬直的な姿勢を批判した。これに対し、児童虐待に詳しい岩佐嘉彦弁護士(大阪弁護士会)は「乳児は保護しないと死に直結するケースもある」と指摘する一方で、児相に専門的な対応ができる体制を整える必要性に言及した。

SBS検証プロジェクト共同代表の笹倉香奈・甲南大学教授(刑事訴訟法)は「無罪判決は当然で常識的な判断。SBSをゼロベースで見直すべきだ」と会を結んだ。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2020年2月21日号)

 

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