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安田純平氏は日本に「拘束」中 
外務省の「出国禁止」に根拠なし

藤原亮司|2019年8月9日11:48AM

安田純平さん。帰国後もなお自由を奪われた状態が続く。(撮影/藤原亮司)

シリアで拘束され、昨年10月に帰国したジャーナリストの安田純平氏に対し、外務省は今月10日付けの通知においてパスポート発給を拒否した。その理由を、トルコから5年間の入国禁止処分を受けたからだとしている。旅券法13条1項1号にある「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」には「一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる」を適用した。しかしパスポート申請の際に渡航計画提出を求められた安田さんは渡航先をインドや欧州としており、トルコに立ち寄る計画はない。

2015年、シリア取材を計画していたカメラマン・杉本祐一氏が外務省により返納命令を受けたケースでは、その後再発給されたパスポートはシリアやイラクへの入国が認められない制限付きのものであった。多少状況は違うとはいえ、安田さんには渡航先制限付きパスポートさえ発給せず、出国そのものを「禁止」した。

同1項1号が理由ならトルコ入国だけ制限すればよく、出国禁止状態に置く理由にはならない。この措置は明らかに過剰な行政裁量、つまり「解釈」でしかない。

杉本さんの件で代理人を務めた弁護士・中川亮さんは安田さんへの措置について「政府にプライベートの家族旅行を止める権利などない。それを制限できるという考え自体が傲岸不遜」と話す。「旅行計画にトルコが含まれていないにもかかわらず発給を拒否するのは、悪質な嫌がらせとしか考えられない。法律以前の問題であり、誰が考えたっておかしい」

旅券法13条1項には別の条文がある。同7号に「著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」には、パスポート発給を拒否できる旨のことが書かれている。

しかし、日本の法律を犯したわけでもない安田さんに、「日本国の利益を害する」とうたう同7号を適用するわけにもいかないので、同1号を行政裁量により「実質上の7号適用」とした、と考えざるをえない。要は「迷惑をかけたやつ」への懲罰的措置だ。

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