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戦略特区で得をするのは誰か

佐々木実|2019年7月20日5:39PM

 制度設計に関わったのだから原氏は当然、『毎日新聞』が指摘した利益相反行為が制度上は規制されていないことを熟知している。「内閣府によると、原氏ら民間委員に提案者との利害関係を規制するルールはなく、特区制度自体の公平性・中立性が改めて問われそうだ」と記事は指摘しているが、裏を返せば、国家戦略特区は利益相反行為を可能とするよう巧みに設計されている。

たとえば、特区諮問会議民間議員の竹中氏は神奈川県などで外国人家事支援事業を認める規制緩和の実現に貢献したが、その後、竹中氏が会長をつとめるパソナがこの事業に参入した。国家戦略特区を舞台に加計学園問題が起きたのは偶然ではない。政府に寄生する者たちの“規制緩和ビジネス”がやり放題なのだ。

原氏は『国家と官僚』(祥伝社新書)で、規制改革は「既得権益者=規制利権をもつ人たち」と「一般国民」の対決だとのべている。自分を「一般国民」の味方と思い込んでいるようだが、客観的にみれば、国家戦略特区の実務を取り仕切る原氏こそ、「規制にかかわる利権」を手にしている。

「既得権益者vs一般国民」の対決では多くの場合、ごく少数の既得権益者が勝利を収めることになるとも原氏は語っていたが、政府に寄生するごく少数の者たちによる“規制緩和ビジネス”を考察する際、とても示唆に富む指摘である。

(ささき みのる・ジャーナリスト。2019年6月21日号)

※編注〈毎日新聞の記事で名誉を傷付けられたとして、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の原英史座長代理が毎日新聞社を相手取り、1100万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。提訴は6月26日付。〉(『毎日新聞』7月4日朝刊)。同記事で毎日新聞社社長室広報担当は「記事は十分な取材に基づいて掲載しています。当方の主張は法廷で明らかにします」としている。

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