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講談社、“盗用疑惑”『美しい顔』めぐり業界誌に圧力

岩本太郎|2019年5月28日11:17AM

4月に講談社から刊行された『美しい顔』。

作家・北条裕子さんのデビュー作『美しい顔』(講談社、4月17日刊行)の一件は4月12日号の本欄でも紹介した。東日本大震災の被災地を舞台に小説として書かれた同作品は昨年春に群像新人文学賞(講談社の文芸誌『群像』主催)を受賞。芥川賞候補作にもなったものの、他方で石井光太さんの『遺体』(新潮文庫)など同震災を題材とした複数のノンフィクション作品との内容的な類似箇所を指摘されたことから騒動に発展。北条さんと講談社側はそうした作品の編著者や版元に対して謝罪し、「協議と交渉」を重ねたとしたうえでようやく同作の改稿版の単行本化にこぎつけたが、類似箇所のある作品として名前の挙がった『3・11 慟哭の記録』(新曜社)の編者・金菱清さんに「『剽窃』の疑われている作品の改訂への関与など断じてありえません」とツイッター上で即座に告発されて再び話題を呼んでいた。

しかもこの騒動が出版業界内で思わぬ方面に飛び火した。前述の金菱さんのツイートを出版業界向けメールマガジン『文徒』が4月9日付で紹介したところ講談社の広報室が同誌に対し即座に抗議。2日後の11日には同社がこれまで『文徒』発行元の株式会社出版人(今井照容代表)に毎月支払ってきた広告掲載料の支払いを停止すると伝えてきたというのだ(なお、同記事は金菱さんのツイート以外はネット上の反響を列挙し、末尾で簡単に講談社に「説明の必要があるのでは」と述べた程度だ)。

『文徒』は出版社が対象の会員制業界誌であり、前述の広告掲載料は実質的に会費もしくは購読費に相当する。つまり、構図としては「記事で自社を批判するメディアからは広告を引き揚げる」という、よく大手広告主がメディアに圧力をかける際に使う手段をも彷彿とさせる。『週刊現代』などの雑誌ジャーナリズムの担い手たる講談社の対応としては理解に苦しむ。

出版人の今井代表は抗議をしてきた講談社の乾智之広報室長と、広報担当役員である渡瀬昌彦常務取締役に真意を問いただしたが、先方からは「金菱氏のツイートは事実と異なるもの」といった漠然とした返答があるのみで、具体的な問題点の指摘はなかったという。また、講談社から今井代表には11日の吉川英治賞(講談社が後援)贈呈式の案内が事前になされていたが、乾広報室長はこれについても「ご来場をお控えいただきますよう」と伝えてきたという。言うまでもなく吉川賞と『美しい顔』の件とはまるで無関係だ。

【本誌の記事には抗議せず】

私は『週刊金曜日』編集部員である一方、ライターとして『文徒』にも記事を書いている。今回の『美しい顔』の件では私は『文徒』では当初ノータッチだったが、本誌では冒頭で述べたように4月12日号で金菱さんのツイートのほか独自に講談社広報室に取材したコメントも添えて報じている。しかしこれまで抗議の類は皆無だ。私も4月18日に改めて講談社に電話で問い合わせたが、乾広報室長は先の私の取材と記事に関し「その経緯と結果に対しては全く違和感を持っていません」と回答した。

講談社は前回記事で金菱さんには「誠意を持って交渉を続けてまいりました」と私に回答した。だが金菱さんは私の問い合わせに、講談社から一方的に修正原稿が版元の新曜社に送られてきているが自分はそれを一貫して拒否しているとの旨を回答。新曜社編集部の小田亜佐子さんもそれを認めた。

講談社は今のところ金菱さんのツイートに関する見解は対外的には何も公表していない。広報部門のほか同社文芸部門の担当役員でもある前記の渡瀬常務にメールで問い合わせると、広報室を通じて「誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全文を掲載していただきますよう、くれぐれもお願いいたします」との長文の返信が届いた。紙幅の都合上ここでは無理なので私のブログ(URL https://air.ap.teacup.com/taroimo/1939.html)で誤解を招かないために全文掲載するが、『文徒』も前記の講談社とのやりとりの詳細をアーカイブスで公開中(URL https://teru0702.hatenablog.com/)だ。併せてご覧いただければと思う。こういうのは大っぴらにしてガチでやりゃいいんだ。

(岩本太郎・編集部、2019年5月17日号)

 

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