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NHK「ガッテン!」で柔軟剤推奨 
「香害」拡大に加担

岡田幹治|2019年4月10日10:29AM

柔軟剤によるワザを説明した「ガッテン!」。注意書きも添えているが……。(番組公式サイトより)

3月13日に放送されたNHKの番組「ガッテン!」に、「香害」の被害者たちから怒りの声が上がっている。香害をもたらす元凶である「柔軟仕上げ剤」の使用を推奨する内容だったからだ。

被害者が問題にしているのは、番組の後半部分。傷んでヨレヨレになった衣類を復活させるワザとして、大矢勝・横浜国立大学教授が次のような方法を紹介した――10リットルの水に、およそキャップ1杯分の柔軟剤を溶かし、傷んだ衣類を浸して繊維の奥まで浸透するよう30秒程度もみ込む。衣類の形を整え、軽くたたんで洗濯機で脱水する。すすぎはしない。

表示の使用量の目安は65リットルの水にキャップ1杯だから推奨の方法の濃度はその6倍になる。

画面には柔軟剤の容器が何度も鮮明に映し出され、古着業者が大量の柔軟剤を使って古着を新品のようにして店頭に並べていることも紹介された。ゲストの「ゆすがないで皮膚は大丈夫か?」との質問に、大矢教授が「この程度なら大丈夫」と答える場面もあった。

派手なCMで大量に販売されている柔軟剤は、日本消費者連盟が一昨年実施した「香害110番」で原因のトップだった。その理由は成分を見れば理解できる。

花王の柔軟剤「フレア フレグランス」を例にとると、有効成分は(1)エステル型ジアルキルアンモニウム塩だ。このほか(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルや③香料が含まれている。

このうち、(1)は「陽イオン型」の界面活性剤で、洗剤などに使われる「陰イオン型」の界面活性剤より皮膚などへの刺激性・毒性がはるかに強い。(1)は別の分類では「第4級アンモニウム化合物」になる。この化合物は生物の細胞膜を不安定にして細胞を殺す作用をもち、アレルギー・皮膚炎・角膜障害などの原因になる。

(2)は、政府が〈人の健康を損なうか、動植物の生育に支障を及ぼすおそれ〉がある物質と判断し、監視している462物質の一つだ。

(3)の「香料」は、3000以上もある成分(物質)からメーカーが複数(数種~数十種)を選んでブレンドした調合香料(個々の物質名は明らかにされない)。香料成分の中には、アレルギーや喘息の原因になる成分、ホルモン攪乱作用や発がん性のある成分などのあることが明らかになっている。

「ガッテン!」が教えたワザを使った衣類が増えれば、どうなるか。まず着用した人に皮膚炎などを起こす可能性がある。もっと心配なのは、繊維にくっついた上記の成分が気化し、周囲に放散されることだ。これを化学物質に敏感な人たちが吸い込めば、喘息や化学物質過敏症を発症したり、症状を悪化させたりする。

番組では「柔軟剤の香りが気になる方」向けに「もう一度洗濯する」「無香料の柔軟剤を検討する」などの注意が流されていたが、これは何の意味もない。香りが気になる人たちは、他人の使う柔軟剤で健康被害を受けているからだ。

番組が放送されると、ツイッターなどには「NHKにクレームを!」「柔軟剤を広めるのはやめてほしい」などの声が飛び交った。

日本消費者連盟は3月15日「抗議文」をNHKに送った。抗議文は「番組は、香害という公害被害の拡大に加担しているに他なりません」「香害が社会問題となっているこの時期に、その元凶である柔軟剤を推奨する番組を放送したことの責任は重大」とし、「番組内容の訂正、撤回を求めます」としている。

「ガッテン!」は、2017年10月18日の「なぜか出るホコリ!原因はソコだった!?」でも、柔軟剤をしみ込ませた「除電ぞうきん」で床・壁・棚などを拭く方法を推奨している。

(岡田幹治・ジャーナリスト、2019年3月29日号)

 

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