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2018年ブラック企業大賞は「三菱電機」 
市民投票賞に「財務省」

斉藤円華|2019年1月20日6:49PM

ブラック企業大賞の賞状とトロフィーが三菱電機に贈られた。(撮影/斉藤円華)

2018年の「ブラック企業大賞」(同実行委員会主催)の授賞式が、昨年12月23日に全水道会館(東京都文京区)で開かれた。大賞を三菱電機、特別賞を日立製作所・日立プラントサービスが受賞。16年に大賞を受賞した電通に続き、日本を代表する巨大企業で労働環境が大きく損なわれている実態が示された。

三菱電機では14年から17年にかけて、20代~40代の男性社員5人が労災認定された。いずれも長時間労働が原因による精神障害や脳疾患が原因で、うち2人が自殺。また、5人はシステム開発に関係するエンジニアまたは研究職で、うち3人に裁量労働制が適用されていた。

授賞理由で同実行委は、「(長時間労働が原因で)4年間に2人もの過労自死を出したことはきわめて重大」「過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善もせず放置し続けた」と指摘。「社会的に決して許されない人権侵害を続けたという意味で日本を代表する企業だ」と同社を厳しく批判した。

日立製作所は、13年入社の20代男性社員が日立プラントサービスに出向中、最大月161時間もの長時間残業が継続。上司からパワハラも受けて精神疾患を生じ、昨年労災認定された。また、日立製作所笠戸事業所では、数百人が働くフィリピン人技能実習生に本来の目的と異なる作業をさせた疑いで法務省などの実地検査を受けた。

これらにより、授賞理由では「経団連会長を輩出する同社がこの体たらくでは、今春から新たな在留資格『特定技能』で働く外国人が使い捨てにされる懸念がぬぐえない」とされた。

このほか、昨年4月に当時の事務次官による女性記者へのセクハラが発覚した財務省が市民投票で869票(ネット864票、会場5票)を獲得して市民投票賞を受賞。長時間労働、および上司による「有給チャンスメール」などのパワハラが発覚したジャパンビバレッジ東京が「有給ちゃんと取らせろ賞」を受賞した。

【「ストへの支持広がる」】

授賞式に続くシンポジウムで、労働運動活動家の河添誠氏は「(正社員が全員加盟する)ユニオンショップ協定を結んでいるのに、三菱電機では過労死が続発しても労組が有効な手を打てていない。日立にしても、外国人が非正規で使い捨てにされる状況が続きながら何もできていない」と提起。

これに全国一般東京東部労組書記長の須田光照氏は「経営者が圧倒的な力を持つ一方、労働者は無権利な状況で、パワハラや過労死が続出している」と応じた。

さらに「経営者のやりたい放題を規制する最大の力である労組が主張し、場合によってはストライキやさまざまな団体行動権を行使して会社のあり方を正さなければおかしい。ところが多くの会社で労使協調が行き過ぎて労使が癒着し、労働者が犠牲になっている」とした上で、「労働者がまともに生活し尊厳を守られるようにするには、困難をともなうが、横にいる労働者と手を取り声を上げる中で労組や会社も変わる」と訴えた。

一方で昨年は労働者が団結する新たな動きも。ジャパンビバレッジ東京の従業員が労組を結成して未払い残業代の支払い等を掲げて順法闘争やストライキを実施。また、練馬区立図書館の非常勤司書職員が労組を結成。昨年末には区営2館の民間委託方針の撤回を求めて時限ストの構えを見せた。

「ユニオン(労組)で闘うことへの敷居が下がった1年だった。ストへの支持がネット上で広がっている」(総合サポートユニオン・池田一慶氏)

大賞の受賞について三菱電機は7日、「何もコメントはない」(広報部)としている。

(斉藤円華・編集部、2019年1月11日号)

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