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「慰安婦像」理由にサ市と姉妹都市解消 
問われる吉村大阪市長の独断

粟野仁雄|2018年11月20日10:26AM

「市長の独断による姉妹都市解消は許せない」と語る方清子さん。(撮影/粟野仁雄)

1957年以来、60年余の歴史を持つ大阪市とサンフランシスコ市(以下サ市)との姉妹都市がついに途絶えた。理由は、求めていた「慰安婦」像の撤去にサ市が応じなかったこと。10月2日、吉村洋文市長は「信頼関係は破壊された」と解消通告した。

サ市の公園で昨年9月に除幕されたブロンズ像は、背中を向き合わせて手をつなぐ3人の少女を、少し離れた位置からチマチョゴリ姿の高齢の女性が見上げる。韓国、中国、フィリピンの少女で、女性は旧日本軍による「慰安婦」の過去を明かした金学順さん(故人)がモデル。民間から寄贈された像の設置を認めたサ市のエドウィン・リー市長が昨年12月に死去し、吉村市長は改めて、今年7月に就任したロンドン・ブリード市長(女性)に、9月末を期限とする最後通告を送っていた。

発端は2013年5月に当時の橋下徹市長が「慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」などと発言したこと。これにサ市が反発し、橋下市長の訪問を拒否した。サ市の議会は橋下発言を非難する決議を採択。15年9月には「慰安婦」像を中華街の公園に設置する市民団体の意向を支持する議決をした。橋下市長は反論する書簡を送付し、「橋下後継」の吉村市長は17年9月、「慰安婦像を公有化するなら姉妹都市を解消する」とする書簡を送った。同年11月にサ市議会は全会一致で寄贈受け入れを議決。吉村市長は「碑文の『日本軍が強制連行し、数十万人の女性を性奴隷にし、そのほとんどが捕虜のうちに亡くなった』は一方的な主張。確実に歴史的事実でないものは日本バッシングになる」と姉妹都市解消を表明していた。

ブリード市長は「1人の市長が、60年以上続いた関係を一方的に終わらせることはできない」と反論していたが、解消した吉村市長は「姉妹都市は高度な信頼関係で成り立つ。史実に基づかないものを公共物として積極的に受け入れたことは残念」と会見した。

地方自治法では姉妹都市の締結や解消に議会の決議は必要ではない。大阪市では慣例的に市長が市議会の各派幹事長会に諮ってきたが、吉村市長が所属する大阪維新の会以外の会派は解消に反対した。大阪都構想で市長が取り込みたい公明党も「自治体交流に国の政治を持ち込むのはどうか。近隣諸国とぎくしゃくしている時期こそ、姉妹都市交流が生きるのでは」(土岐恭生幹事長)としていた。

【大阪市民は怒るべきだ】

解消で市長や市議会代表団の訪問などの交流は消え、民間交流にも補助金は一切出ない。

高校生の交換ホームステイを続けてきた「大阪サンフランシスコユースコネクト(SOYNET)」の寺西チエコ副会長は「ブリード市長から、学生を送ってほしいといわれてこの夏も何とか高校生2人を送り出した。市に文句を言っても補助金は出ない。やれる範囲で続けてゆきたい」と話す。

「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」の方清子共同代表は9月にサ市で行なわれた設置1周年のイベントに参加し、現地の「慰安婦正義連盟(CWJC)」と「姉妹都市を解消されても性暴力や戦争の恐怖から解き放たれる世界実現のため連帯し続ける」との共同声明を出した。

「像が中国系の人による日本叩きとする人もいるが、さまざまな人が米国人として、過去のつらい歴史を繰り返さないために努力した結果があの像です。サンフランシスコ市議会に押しかけて『慰安婦は売春婦だ』と彼女らを侮辱した日本人が議員らに諫められる場面もあった。恥ずかしいことです」と方さんは話す。さらに「草の根交流でお互いの文化や歴史を学んできた姉妹都市関係を、市長が自分の意見とは違う、とサンフランシスコ市長に圧力をかけて解消してしまうのは許せない。大阪市民は怒るべきです」と訴える。

サンフランシスコ講和条約(1951年)から7年目での姉妹都市締結は、日米大戦の恩讐を乗り越えて築かれた意義深い国際交流史だ。市長の独断が許されるべきではない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2018年11月9日号)

 

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