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沖縄知事選、玉城デニー氏擁立の背景に幅広い民意

渡瀬夏彦|2018年9月12日6:09PM

誇りある豊かさを

8月29日の出馬表明会見で、「アイデンティティーが大事」と述べる玉城デニー氏。質問する記者に対しても時折、優しい目になる。

表向きは慎重な物言いを続けてきた玉城デニー氏本人だが、その意識は日を追うごとに前向きになっていった。そばで見ていて、日増しに「知事選への意欲」が漲っていくのが伝わってきた。それはつまり、彼を支える周辺環境が整いつつあることと同義だった。

8月31日の事務所開きの集いで玉城デニー氏は、沖縄県がその日「辺野古・埋め立て承認の撤回」に踏み切ったことを受けて、全面的にこの手続きを支持し、翁長知事の遺志でもある「辺野古新基地建設阻止」を貫徹する姿勢を改めて強調した。

もちろん、玉城氏とブレーンは、辺野古問題のみならず、観光・経済・地域振興、教育・福祉等に関するきめ細かい諸政策を、速やかに練り上げていくだろう。相手候補も、あの手この手の「ニンジン作戦」を考えていることだろう。

ただはっきりしたのは、もはや安倍官邸・佐喜眞氏陣営には、辺野古を争点から外し、ごまかす戦術は許されなくなった、ということである。

沖縄県民は何度「辺野古新基地NO」の民意を示せばよいのか。理不尽極まりない状況が続いているし、安倍官邸による民意切り崩しの分断工作は、絶えず沖縄で行なわれているわけだが、しかし、それでも「沖縄の底力」は健在だ。安倍官邸にコテンパンにやられかけた「負け戦」からギリギリのところで抜け出し這い上がり、「勝てる候補」の擁立を成功させた。

玉城デニー氏は、出馬表明の日に「政府は新基地建設と振興策を絡めてわたしたちを揺さぶり、沖縄に分断と対立を持ち込んだが、わたしたちは分断や排除という言葉は持ちません。イデオロギーよりもアイデンティティーが大事だと言える、誇りある豊かな沖縄をつくっていきます」とまっすぐ前を向いて、明るい声で高らかに宣言した。

玉城デニー氏こそは、「オール沖縄」の再構築を可能にし、翁長知事が志半ばだった基地に頼らない「誇りある豊かさ」をさらに推し進めることのできる、新時代沖縄の希望の星である。

(わたせ なつひこ・ノンフィクションライター。2018年9月7日号)

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