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沖縄知事選、玉城デニー氏擁立の背景に幅広い民意

渡瀬夏彦|2018年9月12日6:09PM

経済人も支持を表明

8月29日、後援会に当たる「ひやみかち うまんちゅの会」会長には呉屋守将・金秀グループ会長(左)、選対本部の顧問には照屋義実・照正組会長が就任した。経済界有力者のデニー氏へのバックアップ態勢も固まってきた。

わたしを含めた県民有志は藁にもすがる思いで、各方面に玉城デニー氏の名前を訴えかけて歩いた。ここでいう県民有志とは、大学生、大学院生、社会人1~2年の若者から、若いママさんたち、会社員、自営業者、研究者、教育関係者、法曹関係者らからなる非常に幅広い賛同者のグループを指す。ヤマト(日本「本土」)からの移住者のわたし以外は、ほとんどが良識あるウチナーンチュの面々だった。間接的に「玉城デニー氏が予定候補となること」への賛意を伝えてくれた大学教授には、オール沖縄会議共同代表の高良鉄美氏もいた。

玉城デニー氏の正式出馬表明が近づいたころ、高良氏は、取材に応えてこう語った。

「僕は憲法を研究して当たり前のことを言っているだけなのに、なぜか左翼と決めつけたがる人が多い。でもわたしは、オール沖縄が本当の意味で再構築を果たすには、玉城デニーさんのようなウイングの広さやウチナーンチュとしての大らかさを持った人が必要だと思っていました。デニーさんが知事を引き受けてくれるなら応援したい、とすぐに思いましたよ」

わたしたち有志は、8月19日の日曜日にも緊急記者会見をやろう、という話までまとめつつあった。20日から始まる週の早い段階で、候補者は3人の中で絞り込まれると予想される。その前に、マスコミを通じて玉城デニー氏の名前を大きくアピールしたい、という狙いがあった。

さて、そんな18日の夕刻、有志数人のミーティングの場に驚くべきニュースが飛び込んできた。翁長知事の生前のメッセージの存在が明らかになり、玉城デニー氏と呉屋守將氏の名前が期待できる後継者として挙げられているという情報だった。

鳥肌が立つ、とはこのことだ。

わたしたちはその場で「ここは記者会見への動きをいったん休止して、調整会議の再検討の行方を見守ろう」という取り決めをした。

これ以後は、周知の通り、調整会議が人選を白紙に戻し、再検討の議論をし、全会一致で、玉城デニー氏への正式出馬要請へと一気に進んでいくのである。

ようやく「勝負になる選挙戦」が見えてきた。8月31日の事務所開きの時点で、後援会に当たる「ひやみかち うまんちゅの会」会長に呉屋守將氏、選対本部長に仲里利信氏(前衆議院議員、元沖縄県議会議長)、顧問に照屋義実氏(建設会社照正組会長)という陣営幹部の名が発表された。保守から革新まで幅広い層の県民と財界人が協力して、全力疾走で相手候補を追い上げる態勢が整った。

照屋義実氏は、今回の知事選に懸ける思いをこう教えてくれた。

「4年前は、県商工会連合会会長という立場もあり、思うように動けませんでした。こんなに早く亡くなられるとは思ってもいませんでしたが、今はせめて翁長さんの思いに応えたい、という気持ちが非常に強いです。玉城デニーさんなら、翁長さんの遺志を継いで、幅広い層の支持をまとめられる。超短期決戦を突破できる魅力あふれる人物なので、どうぞ地のままのキャラクターを思う存分発揮されてください、と言いたい。呉屋さんは『オール沖縄会議』は抜けたけれど、むしろ『オール沖縄』の可能性をさらに広げたいという思いを強く持っています。わたしも含めて、経済人はデニーさんをしっかりバックアップします」

仲里利信氏が選対本部長に決まったのは、8月28日のことだった。わたしはその夜、仲里氏と電話で話した。

「(選対本部長を)押し付けられたから、もう引き受けるしかなかったよ。絶対に負けられない選挙だからね」

照れくさそうな苦笑いを含みながらも、語気は強かった。「戦争につながる繋がるすべてのものに反対する」と明言する、沖縄保守の本流を歩んできた政治家だ。

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