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オウム死刑執行で見えた日本のレベル

西川伸一|2018年8月13日12:05PM

フジテレビの臨時ニュース。(Yahoo!ニュースより。撮影/編集部)

7月6日午前に、オウム真理教の一連の事件で死刑が確定していた元代表・松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ほか元幹部6人の死刑が執行された。3月14日から15日にかけて、この事件での確定死刑囚13人のうち7人が収容されていた東京拘置所から他の拘置(支)所に移送された。これで年内執行の準備は整ったと思われた。だがなぜこの日だったのか。

上川陽子法務大臣は同日の記者会見で、死刑執行命令書に署名したのは7月3日だったと公表した。刑事訴訟法により大臣の決裁から5日以内に執行される。土日の執行はないので6日(金)が「期限」になる。

3日早朝には、サッカーワールドカップで日本がベルギーに敗れた。これを受けての署名だったと推測する。サッカーで国中が沸騰しているときに死刑執行はできまい。一方で、署名を急がせたのは、その前日に明らかになった天皇の体調不良だったのではないか。もし容態が重篤になれば執行は見送られよう。

共犯関係にある死刑囚は同日執行の慣例がある。とはいえ、移送後も東京拘置所にはオウム関連で6人の死刑囚がいた。1日での執行には刑場が追いつかない。そこで教祖および最高幹部がまず選ばれたのだろう。そもそも13人の一斉執行では国際的イメージを大きく損ねる。7人でも1日の執行数としては1993年の死刑執行再開以降で最多となる。その前夜、上川法相は自民党所属国会議員が集まる酒席を楽しんでいた。どういう神経をしているのか。

私は国家による殺人として死刑に反対である。経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国で通常犯罪に死刑があるのは日本・米国・韓国のみで、韓国は97年を最後に執行がない。国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナル日本は、今回の執行について〈1日に7人の大量処刑は、近年類を見ない。彼らの犯行は卑劣で、罪を償うのは当然である。しかし、処刑されたところで、決して償いにはならない。(略)日本政府は「世論が望む」から死刑執行は避けられない、と繰り返し主張してきた。しかし、本来、国がすべきことは、一歩踏み出して、人権尊重を主導することである〉などと抗議した。

国会には超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」がある。第4代会長の亀井静香氏が2017年10月の衆議院選に出馬せず引退して以降、会長は空席が続いている。残念ながら、近年の活動実績はないようだ。それでも今回の執行について、亀井氏は「人が人の命を奪うことで裁くことには根底から反対だ」と語った(7月7日付『朝日新聞』)。

内閣府による2014年11月実施の世論調査では、「死刑もやむを得ない」との回答が8割を超える。被害者とその家族の感情を重視するのだろう。ただ、映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』には、11年7月のノルウェー連続テロ事件で息子を失った父親が登場する。ムーアが「犯人を殺したいとは?」と問うと「復讐は望まない」と答える。「仇は討たない?」と重ねて尋ねられると「犯人と同じレベルに下りてこう言えと? “お前を殺す権利がある”そんな権利ないさ」とムーアを諭す。

死刑は国家が「復讐」のために「犯人と同じレベルに下りて」いるに等しい。これこそ死刑廃止を根拠づける原点である。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。2018年7月13日号)

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