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アスベスト除去作業で「不都合な」報告書を削除指示
堺市

粟野仁雄|2018年4月20日1:06PM

大阪府堺市の北部地域整備課事務所の煙突解体に伴うアスベスト除去作業で、アスベスト測定報告書の一部を市が「隠蔽」していた。

3月28日に閉会した市議会で市側は「隠蔽」を認め、(1)(一社)建築物石綿含有建材調査者協会に再調査を依頼する(2)元の資料を保管する、などを約束した。

除去作業は、市から受注した建築会社が昨年3月から4月にかけて高圧水噴射で行なったが、作業後に下請けの測定会社による濃度の調査中、アスベストの取り残しが多く見つかった。建築会社は測定会社による写真付き文書を市に報告し、相談したが市はその部分を削除するように指示した。同市は理由について「依頼した調査は大気のアスベスト濃度測定であり、取り残しは依頼内容と無関係なため」(建築課)と説明していた。

A4判で全93頁の報告書から、取り残し部分の写真が添付されていた部分など34頁を抜き取っていた。この問題を市議会で追及していた長谷川俊英市議(無会派)は、「文書は業者作成なので公文書ではないが、私文書偽造には当たる」と指摘する。

堺市では2016年6月にこの施設の別の煙突解体でアスベストを含む瓦礫が幼稚園に散乱し、市と4人の職員が大気汚染防止法違反で大阪府警に書類送検されている。今回の発覚は、堺市の住民で「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子前代表が昨年暮れに情報公開請求した際、途中から頁番号が消えていることを不審に思い、市を追及したのが発端だった。長谷川市議は「古川さんの情報公開請求がなければ、そのまま解体され、住民に健康被害が出る可能性があった」と話す。

新たな危険が判明し、相談されても「依頼していた調査内容でないから」と削除させる行政当局の感覚。「不都合な真実」に蓋をする役所の文書隠蔽は、国政レベルだけではない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2018年4月6日号)

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