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米国型資本主義は世界標準ではない(佐々木実)

2018年2月8日2:54PM

ドナルド・トランプが大統領に就任してから1年がたった。アメリカ合衆国は1776年に英国から独立した。初代のジョージ・ワシントンから数えて45代目の大統領がトランプである。

そもそも米国は、欧州がまだ君主制の時代に、国民の投票によって大統領を選び、国家元首とする制度をつくった。民主主義を政治システムとしてはじめて確立した国家で、45代目にしてトランプのような大統領が生まれたのはなぜか。

経済学者の岩井克人は米国型資本主義との関係からトランプを論じている。

「民主主義国であるべき米国の中で専制君主のように振る舞うこの大統領は、米国型資本主義が『グローバル標準』ではなくなったことの戯画なのである」(1月4日付『日本経済新聞』「経済教室」)

日本を含む非西欧社会、さらに近年では欧州大陸諸国でさえ、米国型資本主義こそが「グローバル標準」だとみなす思考にとらわれてきた。トランプ大統領の登場はこうした思考を打ち砕いたというのが、岩井の視点である。

それでは米国型資本主義とはなにか。岩井が挙げるのは、自由放任主義と株主主権論。自由放任主義は、政府の介入をできるだけなくして市場システムを最大限に活用せよ、という市場原理主義的な考えだ。

株主主権論は企業をめぐる法制度に反映されている。株主利益を最大化するには経営者も株主になればいいと導入されたストックオプション(株式購入権)など、経営者の取り分を格段に高める報酬制度が整備された。その結果が、経営者の報酬が平均的労働者の350倍という米国の現在である。

90年代に入ってバブル経済が崩壊して以降、日本は長年にわたって不良債権問題に苦しむことになった。礼讃されていた日本型経営は指弾の対象となった。米国の経済が金融自由化などの成果で完全復活を遂げ、米国型資本主義、米国型経営こそ「グローバル標準」だという思考が急速に支持を得た。

「グローバル標準」に追随する制度改革こそが社会改革だ。そうした風潮のもと、米国型経営ができるよう、株主を重視する制度の整備、雇用の大胆な規制緩和などが矢継ぎ早に実行された。

ところが、お手本であるはずの米国が行き着いた先が「上位1%が全所得の20%を手にする社会」という“落ち”がついてしまった。とりわけリーマン・ショック以降、隠しようもなく顕在化した不平等社会がトランプ大統領の産みの親である。岩井が指摘したとおり、いまトランプ大統領はわが身をもって、米国型資本主義がお手本ではありえないことを示しつづけている。

自由放任主義でも株主主権論でもない資本主義をどうつくりあげるのか。岩井は「私たちの意思と決定にかかっている」とのべている。もっともな結論だが、素朴な疑問が残る。軍事では同盟関係を強化して日米一体化を促進しながら、経済だけ米国型資本主義から遠ざかることができるだろうか。「グローバル標準」幻想が潰えて目の前に現れたのはリアルな世界である。

(ささき みのる・ジャーナリスト。2018年1月26日号)

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