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安倍政権は「株式市場の良識」を崩壊させた(鷲尾香一)

加計学園問題とは何か。

文部科学省が、獣医師が過剰になることを理由に半世紀以上も既存の大学以外に獣医学部を新設することを認めずに定員を規制していた中で、通常の行政ルートではなく国家戦略特区の仕組みを使って獣医学部の新設を認めようとしたものだという解説がある。

また一方では、政治家なのだから政策実現のために政治力を行使することは何らおかしいことではなく、当然のことであると安倍晋三首相を擁護する向きもある。

しかし少なくとも、加計学園問題は株式市場に計り知れない悪影響を与えてしまったようだ。

これまで株式市場関係者からは「株式市場は安倍政権に全幅の信頼を置いているので、株価が大きく下落することはない」という声が多く聞かれていた。

ある株式投資専門紙の社説は「株価は政権交代を明確に対比できる数字の一つ。民主党政権の厳しい時代から日経平均株価を倍以上に伸ばし現在進行形で結果を残している点を評価する投資家は多く、(安倍政権を)支持しない理由はない」と主張していた。

筆者が驚かされるのは、この社説が「加計学園問題やPKO(国連平和維持活動)日報問題などは何が違法なのかはっきりしない」とし、加計学園問題やPKO日報問題で無駄な時間を使うなら経済政策を進めるべきと主張していることだ。

株式投資専門紙であるのだから「国を監視する機能」が求められるジャーナリズムとは存在理由が違うという理屈はわかる。しかしその主張は、あまりにも身勝手で稚拙だと言わなければならない。

ところが、株式市場そのものが、この専門紙の主張を裏付けるような動きを見せる。加計学園問題や日報問題の不透明さには無反応なのに、7月27日に民進党の蓮舫代表が辞任表明をすると、日経平均株価は上昇したのだ。ある株式市場関係者は「蓮舫代表の辞任を好感した」と説明する。

市場取引は、それが公正で透明であって初めて参加者が安心して参加する。公正性や透明性を担保しているのはルールがきちんと説明されているかどうかだ。

政治も同じだろう。政治家、政党、役所それぞれに権力があるからこそルール厳守が求められるのであり、もしどこかに不公平や不透明さがあれば、国民に対する説明義務が発生する。

だから安倍首相や「腹心の友」である加計孝太郎理事長には、国民に対して丁寧に説明する義務がある。それが国民の信託(忖度ではない)を得ることにつながる。

株式市場がもっとも忌み嫌うべき「不透明さ」を、政治の世界では良しとしてしまう姿勢は、株式市場を不健全なものにしかねない。

株式市場は、アベノミクスによって日本銀行が実施してきた金融緩和の恩恵を得ている。特に、日銀のETF(上場投資信託)買い入れによる株式購入は、株式相場を下支えしてきている。

市場関係者の多くは、相場が下落すると日銀のETF買いに期待する。それによって株式市場が持つ本来の経済的機能などが壊されているにもかかわらず。

どうやら、安倍政権=アベノミクスは、「株式市場の良識」までをも崩壊させてしまったようだ。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。8月18日号)

裁判を受ける権利を侵す 再審請求中の死刑執行に非難の声

金田勝年法相(当時)が命令した7月13日の死刑執行に抗議する集会(主催=死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90など5団体)が同27日、東京都内で開かれた。執行された2人のうち1人は再審請求中、もう1人は自ら控訴を取り下げて裁判員裁判による判決が確定していた。ともに憲法32条の裁判を受ける権利を侵すとして、執行を強く批判した。

死刑を執行された西川正勝さん(執行時61歳)は、5月にした再審請求について裁判所から意見を求められ、回答の準備中だったという。金田法相は記者会見で「再審請求を繰り返す限り、永久に死刑執行をなしえない」から「棄却されることを予想せざるをえないような場合は、死刑執行を命ずることもやむを得ない」と説明した。

しかし、二審の弁護人だった小田幸児弁護士によると、西川さんは再審の請求理由としてMCT118型と呼ばれるDNA鑑定のおかしさを挙げていたようだった。この手法は精度が低く、足利事件(再審無罪)では冤罪の原因になっており、「この部分の再審の可能性はあった」と指摘した。

安田好弘弁護士は、(1)再審請求中の死刑執行は控えるのが刑事訴訟法の趣旨、(2)同一理由での再審請求は禁止されており永久に執行できないわけではない――と金田法相に反論した上で、「再審の可否は裁判所が判断するのに、政策論で執行したのは三権分立に反する越権行為だ」と非難した。

もう1人の住田紘一さん(執行時34歳)の事件は被害者が1人で、本人に前科がなく、上級審で減軽される可能性があった。弁護人が控訴したが、翌月、本人が取り下げて死刑が確定した。

一審の主任弁護人だった杉山雄一弁護士は「過去の最高裁判例に照らしても上級審で改めて厳密に審査されるべきだった」との声明を寄せ、死刑事案では必ず高裁や最高裁の審理を受ける「必要的(自動)上訴制度」の導入を訴えた。

(小石勝朗・ジャーナリスト、8月18日号)

小学4年生に憲法9条を教える前に自衛隊を学ばせる文部科学省

文部科学省による、自衛隊についての肯定的な教え込みが、小学生の早い段階から進んでいる。

文科省が法的拘束力ありとする学習指導要領(以下、指導要領)の参考資料にすぎない『小学校指導要領解説 社会編』(6月公表。以下、『解説』)で、4年生の段階から、「自衛隊」は「わが国の平和と安全を守ることを任務とする」と記述。市民らが社民党の福島みずほ参院議員を通じ根拠を問うた質問書に、同省は7月28日と8月8日の回答書で、「自衛隊法第3条第1項に基づく」とした。

小学校社会科の指導要領は従来、〈3年で市区町村→4年で都道府県→5年で国土の様子と国民生活→6年で国の政治の働き〉などと、発達段階に配慮し教える構造になっており、自衛隊の軍事(防衛)面は、中学3年で憲法第9条との関係を含め、初めて学ぶ。

質問書では、「(日本国憲法第9条を学ばない)小4から自衛隊の軍事面を、政府見解や政権政党の政策に沿い肯定的にだけ教え込むのは、発達段階への配慮を欠くし、改定教育基本法第14条の政治的中立性に違反する」などと質した。だが文科省は、指導要領や『解説』、自衛隊法の条文を載せるだけで、正面からの回答を避けた。

文科省は3月31日“官報告示”した改訂小学校指導要領4年社会の「自然災害から人々を守る活動」で、県庁・市役所とともに「国の機関」として自衛隊を明示し、「取り上げる」よう求めたが、この原案などに関し3月15日まで公募していたパブリック・コメントで、「自衛隊の主任務である国の防衛についての教育も充実されたい」という意見があったことを、『解説』での前掲記述の理由にあげる。

しかし、文科省が3月31日、ホームページに掲載した「パブコメ結果」一覧の自衛隊に係る「意見内容」の欄は、前掲を含む賛成・推進の意見だけ掲載。市民らは「周辺だけでも10人ほどが反対意見を送付しており、反対意見を追記すべき」と質したが、同省は「行政手続法に基づ」くとするのみ。また、「賛否の数の集計は行なわないこととしている」と説明する。

市民らは、「安倍首相が謀む憲法“改正”の国民投票が仮に政治日程に上った時、“賛成”にマルを付ける若者を“量産”することになりかねない」と文科省を批判する。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、8月18日号)

菅義偉内閣官房長官は“はなたれ小僧”か(西川伸一)

第3次安倍晋三内閣の第3次改造内閣が8月3日に発足した。首相の大叔父にあたる佐藤栄作元首相は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」と言ったとされる。首相の求心力の低下は否めない。「各派が希望した初入閣待機組のほとんどが登用されず、党内には不満が充満している」という(8月4日付『朝日新聞』)。

今回の内閣改造で私が最も注目したのは、内閣人事局長の人事である。中央省庁の幹部職員の一元管理などを目指して、2014年5月、内閣官房に内閣人事局が設置された。初代局長には当初、事務担当の内閣官房副長官である元警察官僚の杉田和博氏を充てる予定であった。これにも政治家を据えては、政治主導がいきすぎると懸念されたためである。

そのはずが、発足直前になって政務担当副長官の加藤勝信衆院議員にすげ替えられた。トップが事務副長官では、政治主導の威令が行き届かないと菅義偉内閣官房長官が考え直した(14年5月21日付『日本経済新聞』)。

政務副長官には衆参両院議員から各1名が起用される。加藤官房副長官は、15年10月の第3次安倍内閣の第1次内閣改造に伴い、萩生田光一衆院議員に交代した。内閣人事局長も萩生田副長官が兼務した。首相の最側近である萩生田氏が内閣人事局長に座る。この含意は官僚たちに「忖度」を働かせる十分な動機づけとなったことだろう。たとえば、「森友」問題に関する国会質疑で、「記録に残っていない」と答弁して「殊勲(しゅくん)甲(こう)」の佐川宣寿・財務省理財局長は、17年7月5日付で国税庁長官に栄進した。

さて、このたびの人事で萩生田氏は自民党幹事長代行に転じた。そして、後任の内閣人事局長には事務副長官に留任した杉田氏が就いたのである。野党が「加計」問題と絡めて、「人事権を政治家が握ることで官僚が首相官邸の意向を過剰に忖度している」などと政務副長官との兼務を問題視していた(8月4日付『読売新聞』大阪版)。菅官房長官は萩生田氏のことを「局長として適切に業務を行った」とかばった(8月5日付『岩手日報』)。ならばなぜ局長を事務副長官兼務に代えたのか。

内閣改造の前日、福田康夫元首相が「共同通信」のインタビューで吠えた。内閣人事局については「政治家が人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗だ」と強く批判する。その結果、「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている。官邸の言うことを聞こうと、忖度以上のことをしようとして、すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ」とたたみかける。

首相の政権運営にも「(自民党内に)競争相手がいなかっただけだ。(脅かすような)野党もいないし、非常に恵まれている状況だ。そういう時に役人まで動員して、政権維持に当たらせてはいけない」と容赦ない(8月2日付「共同通信」配信記事より)。

福田氏の官房長官在任日数は1289日に及ぶ。菅・現長官に抜かれるまで最も長かった。政官関係を知りぬいたゆえの直言だろう。御年81歳の福田氏からみれば、68歳の菅官房長官など「洟垂(はなた)れ」なのかもしれない。大先輩の忠告に耳を傾けよ。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。8月18日号)

上関原発計画の漁業補償金受取めぐり、祝島漁民が地裁に仮処分の申し立て

6月20日、山口県漁協本店前。左から、祝島支店の清水敏保さん、本店職員、祝島支店の橋本久男さん、同竹谷芳勝さん。(提供/山秋真)

上関原発計画に35年間抗い続けている山口県祝島の漁民たち。その山口県漁協祝島支店の正組合員2人が7月4日、山口地方裁判所岩国支部へ仮処分の申し立てを行なった。同支店の5月10日の組合員集会で提出された「修正案」について、6月14日に組合員へ配られた書面議決書による採決の禁止を求めるもの。「修正案」は、同支店の昨年度の赤字補填に、上関原発のための漁業補償金を充てたい、その手続きとして総会の部会の開催を本店へ請求してほしい、という内容だ。

この漁業補償金は上関原発の建設と運転への同意を謳う契約に基づくため、同支店(旧祝島漁協)は受けとりを17年間拒んでいる。13年2月に受けとり賛成を議決と報じられるも、過半数である31人の正組合員が翌3月、受けとらない旨、1人1枚の書面に署名捺印して本店へ提出。だが本店主導で補償金の配分案が作られ、採決を迫られた。島ぐるみで原発計画に抗う祝島は混乱したが、15年4月の配分案否決で収まった。

ところが、先述した今年5月の集会で本店の幹部が、「修正案」を出すよう一組合員を促しつつ「定款規約の定めでその場で採決が必要」と介入。6月14日には「修正案」への賛否を問う文書と書面議決書が組合員へ配られた。差出人は山口県漁協祝島支店「運営委員長兼組合員集会議長 恵比須利宏」、提出期限は6月21日、返送先は同支店か光熊毛統括支店。

だが恵比須さんは「この文書を作っていない」と明言したと、本人に尋ねた組合員が話す。彼は祝島支店の運営委員長を5月の集会終了時に辞めたうえ、議長の任は集会終了までだ。この文書は内容に虚偽があり、それに基づく書面議決書は無効だと、同支店の運営委員・岡本正昭さんと橋本久男さんは回収しようとした。その際、提出された書面議決書がすべて光熊毛統括支店にあると判明。「祝島の組合員集会のことだから、祝島支店で保管する」と6月19日、ふたりは同支店の竹谷芳勝支店長とともに光熊毛統括支店へ行き、書面議決書の回収を求めた。

だが「本店の許可なく返せない」と拒まれ、翌20日は本店(下関市)へ行き、仁保宣誠専務理事らと祝島支店側が面談。本店は書面議決書を有効と主張したが、「作成したのは本店」と認めた。祝島支店の運営委員会に知らせずに配布せよと、本店が指示したことも分かったという。

【今なお蠢く新規の原発計画】

なぜ運営委員会に知らせなかったか。5月の集会の最後に「修正案」は継続審議にすると議長が宣言し、出席者から異論もなかった、それは、「会は、その議決により続行することができる」と定める定款に則ったに等しく、「修正案」は継続審議になった、議事録にもそう記載されたからと本店は説明したという。

だが、「出席者からの異論は出ていた。目下、集会を録音した音源と照合して議事録案を確認中で、議事録も未承認だ」と橋本さん。一行は山口県農林水産部団体指導室へも走り、県漁協への指導を要請した。事前に通知された事項につき、集会開始前に提出する旨を定款規約に定める書面議決の濫用等を訴えたが回答は「権限外」。

6月21日の提出期限直前、「開票は強行せず、協議して実施」と関係者が祝島で合意した。

しかし中国電力は6月30日、この状況のもと上関原発の予定地で追加ボーリング調査を開始。7月4日の仮処分の申し立ては、こうした経緯で行なわれた。

翌5日、「司法の判断が出るまで開票しない」ことを関係者が合意。8月24日に審尋の予定となり緊張感が漂う7月18日、祝島支店運営委員の補欠選挙があった。旧祝島漁協の元組合長ら4人が棄権、白票1人という異例の状況で、先の「修正案」を出した組合員が当選。幼い子をおいて原発問題で駆け回った女性は「私らからすれば3日前のような最近に加入した人」の当選を嘆いた。3・11の東京電力・福島原発大事故から7年目。新規の原発計画が今なお蠢いている。

(山秋真・ライター、8月18日号)

安倍政権の隠蔽体質があらためて露呈 加計問題、特区会議の議事録を改竄か

8月2日、福島で講演した前川喜平・前事務次官。(撮影/横田一)

「加計ありきではない」と言い張る安倍晋三首相の主張が根底から崩れ始めた。「国家戦略特区諮問会議の議事もすべて公開」「プロセスに一点の曇りもない」と強調していたが、肝心要の議事録が一部隠蔽(改竄)された可能性が高いことが、「特区会議に加計幹部 議事要旨に出席・発言の記載なし」と銘打った8月6日付『朝日新聞』の記事で明らかになったのだ。

愛媛県・今治市が国家戦略特区への提案を申請した翌日の2015年6月5日に開かれた諮問会議のワーキンググループ(WG)のヒアリングで、同県と同市から3人が出席し、質疑応答をしたが、この場に加計学園幹部が出席して発言もしたのに、議事要旨に記載されていなかったのだ。

この報道を受けて翌日の7日、民進党の「加計学園疑惑調査チーム」が会合を開き、塩見英之内閣府参事官を問い質した。塩見氏は「(加計学園幹部は)『説明補助者』という非公式な立場だった。発言も公式なものではないため、記載していない」と説明したが、調査チーム共同座長の桜井充参院議員は納得せず、「結局、加計ありき、加計を隠したがることばかり」「本当は『非公開で』というやりとりがあったのに、議事要旨に『公開でいいか』の問いに『はい』と記載したのは改竄ではないか。行政文書の信用、内閣府の信頼の問題に関わる」と追及。議事録全文の提出を求めた。

また議事要旨には、『朝日新聞』が報じた加計学園幹部の発言(教員確保の見通しやカリキュラムの特徴についての質疑応答)が入っていないことから、「意図的に削除したのでは」「なぜ公開する内容を調整しなければならないのか」と疑問が噴出。調査チームの次回会合(10日)で速記録などの議事録全文や加計学園側の資料の提出を求めたが、情報公開されることはなかった。

安倍政権の隠蔽体質が改めて露呈した形だ。菅義偉官房長官も会見で「加計学園は共同提案者ではなく、(説明)補助者。ルールに基づいている」と強調。WG座長の八田達夫氏も同じ内容の弁明をして事足りている。「加計学園の獣医学部新設が国家戦略特区に相応しいのか」「閣議決定をされた“石破4条件”を満たしているのか」という検証をするための情報が欠落している状態なのだ。

【規制緩和論者ばかり】

2日の福島市内での講演で前川喜平・文部科学前事務次官は、こう指摘した。

「文科省は『今治市から提案のあった内容は、他の大学ですでにやっていることなので、(石破)4条件に合致していない』ということは繰り返し言っている。それに対して『新しいものだから認めるべきだ』という意見が出たのですが、きちんとした議論はなされていない。ワーキンググループのメンバーは規制緩和論者ばかりで、獣医学の“獣”の字を知っている人は1人もいないのです」

獣医学の専門家の鹿児島大学・岡本嘉六名誉教授も、「要請があれば二つでも三つでも獣医学部を承認」という首相発言を「何の根拠もない素人の戯言」などと批判していた。「日本には国際的な獣医学部が一つもなく、欧米に比べてレベルが低いことが問題になっていた。それで文科省はレベルアップのために大学再編による『共同獣医学部』構想を進めていたのに、内閣府から『国家戦略特区で獣医学部新設』という横槍が入った。だから文科省が怒り、前川喜平・前事務次官が怒りの告発をした。安倍首相は共同獣医学部構想に逆行することを進めたのです」(岡本氏)。

「共同獣医学部」の構想は現在進行中で、文科省は資料で現状を示して諮問会議で説明をしていた。前川氏が「岡本名誉教授の言う通り、獣医学部新設は日本の獣医学部のレベル低下を招く」と懸念するのはこのためだ。

獣医学の専門家の意見を聞かない“素人集団”が、議事録を隠蔽・改竄しながら獣医学部新設をゴリ押しした実態が浮き彫りになる。文科省の大学設置・学校法人審議会は9日、加計学園の獣医学部新設を“認可保留”としたが、加計問題の疑惑は深まるばかりだ。

(横田一・ジャーナリスト、8月18日号)

相模原障がい者施設殺傷事件から1年 追悼式への違和感とは

亡くなった19人の名前も遺影もない無機質な祭壇。(写真/猿渡達明)

昨年7月26日、神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」で障がい者19人が刺殺、27人が重軽傷を負った相模原障がい者施設殺傷事件から約1年。7月24日、相模女子大学グリーンホールで、県・市・かながわ共同会共催の追悼式が行なわれた。

最初に違和感を感じたのは無機質すぎる祭壇。19人の名前も公表されず、家族会や園長の追悼の辞でも「◯◯のあなた」とだけ。この日も存在が消されている。悔しい。約670人が出席の中、車椅子のひとは10名程度で、今入所している仲間の声も聞けない。塩崎恭久厚労相が代読した安倍総理のメッセージや、出席した黒岩祐治県知事の式辞で繰り返された「19人の御霊よ安らかに」のフレーズ。官僚が考えた言葉をただ読んだとしか思えなかった。形式的な1時間程度の追悼式。

私たちは、「私たち抜きに私たちのことをきめるな」をスローガンに地域で活動してきた。県が設置した部会による再生基本構想がもうすぐまとまるが、知的障がいの当事者は1名のみ。この事件に関して、国県・市町村・かながわ共同会は、さらに連携を取るべきであり、国は、分離・隔離政策をしてきたことを当事者や家族に謝罪し、インクルーシブ(包摂)教育や介助者(ヘルパー)不足等、生きる為にお金を使うべきだ。私たちは最後まで地域で生きたい!

(猿渡達明・一歩の会、8月4日号)

火山灰濃度の影響評価100倍に引き上げ 日本の全原発が非常時の基準満たさず

原発の火山灰の影響評価について、原子力規制委員会は7月19日の会合で、評価に用いる火山灰濃度を百倍規模に引き上げる基本方針を承認した。すでに許可済みの川内、高浜、伊方、美浜、大飯、玄海原発は、稼働中も含め、現状で規制の要求を満たしていない。

審査で用いられる規則及び火山影響評価ガイドは、火山灰によるフィルターの目詰まりで非常用ディーゼル発電機が機能喪失に陥ることがないよう要求している。電力各社は、火山灰濃度を仮定し、フィルターが詰まる時間と交換に要する時間を算出し、交換できることを示し、許可を得ていた。

仮定する火山灰濃度について、規制委は昨年10月に、米国セントヘレンズ火山での観測値を採用し、基準を約十倍に引き上げた。しかしその値は、観測機器の性能から過小評価の可能性があると観測者当人が指摘していたものだった。 また、同時期の規制委に、富士宝永噴火の推定値により、火山灰濃度が最大でセントヘレンズの約30倍になるとの電力中央研究所による新知見が報告された。

規制委は今年になって外部専門家を交えた検討チームを立ち上げた。その中で規制庁は三つの方法で試算を行ない、二つを採用したが、いずれもセントヘレンズの百倍規模となったのである。

電力各社は、許可済みの原発について新基準での試算を行なったが、川内、伊方、玄海原発は、交換の限界となる濃度の3~4倍に。大飯や美浜も限界濃度を超えた。高浜原発は同程度となったが、規制委が電源2系統の機能維持を要求したことから現状では新基準をクリアできない。電力各社は、フィルター性能を向上させ、運転しながら交換できるようにするというが、いずれも今後のことだ。

原発を直ちに止め、再審査なしに再稼働を認めるべきではない。8月7日14時から参議院議員会館にて規制庁交渉を予定している。

(阪上武・原子力規制監視市民の会、8月4日号)

ブラックホール化する日本銀行(高橋伸彰)

日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、2%の物価目標達成時期を2019年度頃と、昨年10月に同会合で展望した2018年度頃から1年先送りした。見直しは今回で6度目。当初の2015年4月と比較すると4年以上も先送りされたことになる。それにもかかわらず、日銀の黒田東彦総裁は同日の記者会見で「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し(中略)安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します」と述べ、従来のスタンスに変更はないと言明した。

黒田総裁は、貨幣量さえ増やせば物価は必ず上がるという極端なリフレ派ではない。就任時の挨拶でも、デフレの原因は多様であり「あらゆる要素が物価上昇率に影響している」と述べてリフレ派とは一線を画していた。ただ、物価安定の責任論に話題が及ぶと一転して「どこの国でも中央銀行にある」と主張し「できることは何でもやるというスタンスで、2%の物価安定の目標に向かって最大限の努力をすること」が日銀の使命だと言い切った。

これに対しケインジアンの吉川洋氏(「物価と期待Ⅱ」日興リサーチセンター)は、4年以上マネーを増やし続けても2%の物価上昇を達成できない「実績」を見れば、リフレ派の理論は「否定」されたという。実際、この4年余りの間に日銀が供給する貨幣量(発行銀行券と当座預金の合計)は141兆円から460兆円に319兆円も増加したが、生鮮食品を除いた消費者物価指数(以下、物価指数という)の上昇率は昨年3月から12月まで10カ月連続で下落したうえ、今年に入ってからも0%台前半の上昇率で推移している。

日銀の展望通りに物価が上昇しないのは人々のデフレ期待が根強いからではない。吉川氏が指摘するようにリフレ派の物価理論が間違っているからだ。日銀が目標に掲げる物価指数とは、現実に存在し観察できる物価ではない。個々の財やサービスの価格を加重平均して計算される統計データである。

それでは物価指数の基になる個々の財やサービスの価格はどのように決まるのか。吉川氏によれば大多数の価格は生産費用をベースに生産者が決め、その価格を消費者が「公正」と認めれば、現実に価格は変動し物価指数も変わる。つまり、鍵を握っているのは賃金をはじめとする生産費用であり貨幣量ではないというのだ。

事実、日銀が貨幣量を増やしたからといって価格を上げる生産者はいないし、そう言われて値上げを受け入れる消費者もいない。生産者が価格に転嫁せざるを得ないほどに、また消費者が値上げを認めても良いと思うほどに、賃金や原材料価格が上がらなければ個々の物価も、その加重平均である物価指数も上昇しないのである。

改めて日銀法を繙けば物価の安定は手段であり、目的は国民経済の健全な発展にある。手段より目的を優先するなら、黒田総裁は「疑ったら飛べなくなる」とピーターパンを引き合いに出し自らの方針を正当化するのではなく、「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」の故事に倣い、日銀のスタンスを転換すべきだ。そうでなければ日銀は国債を際限なく飲み込むブラックホールと化してしまう。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。8月4日号)

「新専門医制度」に全国1560人の反対署名 地域医療の弱体化懸念

新専門医制度を批判する安藤哲朗代表(中央)ら=7月21日、厚生労働省。(撮影/片岡伸行)

一般社団法人日本専門医機構(吉村博邦理事長)が2018年度からの導入をめざす「新専門医制度」に対し「反対」の声が上がっている。「専門医制度の『質』を守る会」(代表・安藤哲朗安城更生病院副院長)は7月21日、東京・霞が関の厚生労働省を訪れ、全国1560人の反対署名を塩崎恭久厚生労働大臣と「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」遠藤久夫座長宛に提出した。

同制度については昨年、地域からの強い懸念の声を受けて塩崎厚労大臣が「立ち止まって考えるべき」と発言。今年4月からの導入予定が延期された経緯がある。

提出後の会見で安藤代表は「1年経っても根本的な問題は変わらず、専門医研修の質の担保はない。地域医療の弱体化につながる恐れがある新専門医制度をゴリ押しすべきではない」などと述べた。共同代表の坂根みち子医師(茨城県つくば市)は「女性医師にとって現状でも医療現場は過酷なのに、この制度では結婚・出産という時期に5年間も複数の研修施設を転々とすることになる。法的根拠のない第三者機関がこんなことを勝手に決めてしまっていいのか」と批判。福島県南相馬市の神経内科医・山本佳奈医師は「産科の専門医を取りたいと思ったが、この制度では南相馬から離れなければならず、私は南相馬に残ることを選んだ。医師の希望の芽を摘んでしまう制度だ」と指摘した。

また、仙台厚生病院の遠藤希之医師は「機構には1億4000万円の負債があり、そのうち8000万円を貸しているのは日本医師会。審査される側がカネを貸すという利益相反の関係だ。一任意団体のために日本の医療と若手の夢を潰してはいけない」と訴えた。

日本専門医機構は8月4日に理事会を開くが、“紛争の火種”を残しながら制度開始を宣言することになれば医療界の混乱を招きかねないと懸念する声も出ている。

(片岡伸行・編集部、8月4日号)