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40歳代後半~50歳代前半男性の賃金が下落するわけ(鷲尾香一)

2017年7月26日5:54PM

「デフレを脱却するスピードを上げるには、賃金、給与という形で実体経済に表れてくることが一番早い」

覚えておいでだろうか。デフレ経済からの脱却を目指す安倍晋三首相が、低迷する個人消費を盛り上げるために、日本経済団体連合会など経済団体に対して賃上げを要請した時の言葉だ。

厚生労働省が2月に発表した2016年の賃金構造基本統計調査によれば、一般労働者の所定内給与は前年比0.0%と横ばいだった。

それよりも問題なのは、雇用構造的に企業が賃上げを抑制しているのが明らかなことだろう。

賃金構造基本統計調査を見ると性・年齢階級別では、45~54歳男性と60歳代前半男性と60歳代女性の賃金が下落していることがわかる。労働者数を勘案すれば40歳代後半~50歳代前半の男性が最大の賃金押し下げ要因となっているのは明らかだ。企業規模別にみると、大企業の男性賃金のみが全体を押し下げている格好だ。

ではなぜ、この年齢階級の男性の賃金が下落しているのか。その要因として考えられているのは、大企業のこの年齢階級は、バブル期前後の売り手市場で大量採用された世代であり、年齢的にも昇進率の低下などにより平均賃金が下がっている可能性が高いと見られている。

60歳代前半男性と60歳代女性の賃金の下落については、定年延長等による賃金低下が影響していることが明らかだ。

しかし40歳代後半~50歳代前半の男性の賃金下落については、実は、別の要因が働いている可能性が高い。

通常、昇進が止まった時、給与が据え置かれることはあっても、引き下げられることはないだろう。だが、今は給与の引き下げが行なわれているのだ。その要因は、定年延長にある。

60歳で定年を迎えても、本人が希望すれば企業には継続して雇用する義務がある。企業は定年延長後の給与を大幅に引き下げるとともに、その支払いに備えるため40歳代後半~50歳代前半の給与引き下げを行なっているケースが多いのだ。もちろん、その後は給与の据え置きを続けるか、引き下げる。間違っても、引き上げることはない。

40歳代後半~50歳代前半は、大学生の子どもがいたり、親の介護が始まる時期でもあり、生活費がかかる年齢層。加えて、老後の生活費を考えなければならない年齢でもある。当然、貯蓄に力を入れることになる。

60歳代になっても、年金受け取りの開始時期まで給与所得があればいいが、定年とともに大幅に減給されるため、消費を控える。

つまり、デフレ経済の脱却に必要な個人消費は定年延長などの要因を背景に企業側が賃金の引き下げを行なっている以上、盛り上がる可能性は低い。

賃上げを実現し、個人消費を活性化しようとするならば「企業は利益のXX%は給与として従業員に配分しなければならない」といった規則を作るとか、定年延長後の給与の引き下げに歯止めを掛けるとか、年金受け取り開始年齢を60歳からとして定年後すぐに受け取れるようにするなど、何らかの対策が必要ではないか。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。7月14日号)

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