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柔軟剤などのニオイ被害急増、消費者団体が「香害110番」を開設

「香害110番」を説明する日消連の杉浦陽子さん。7月13日、消費者庁。(撮影/岡田幹治)

強い香りをつけた商品が増え、ニオイで不快になる人や健康を害する人が急増している現状を放置できないと、消費者団体の日本消費者連盟(日消連、東京都新宿区)が動き出した。まず「香害110番」を実施して、苦しんでいる人たちから被害の状況や悩みを聴く。

柔軟仕上げ剤や消臭除菌スプレーに香りつき商品が増えたのは、5年ほど前から。その後、制汗剤や洗剤などにも広がり、いまでは文房具や洋服にまで香りつきが売り出されている。しかも香りが強く長持ちする商品が増えた。

結果が、ニオイの蔓延と香りによる被害(香害)の急増だ。いまや、あらゆるところにニオイが漂うようになった。電車などの車内・職場・学校・保育園・病院・介護施設などなど。住まいにも近所から流れ込む。

香りは好きな人もいるが、不快に感じる人もいる。それ以上に問題なのは、香りつき商品に含まれる微量の化学物質が人々の体内に取り込まれ、健康に影響を与えることだ。中でもニオイに敏感な人たちは、頭痛をはじめとする多様な症状に悩まされる。化学物質過敏症(CS)やアレルギー疾患を発症させたり、悪化させたりすることも少なくない。

CS患者の「駆け込み寺」であるCS支援センター(横浜市中区)には年間2000件ほどの相談が寄せられるが、「最近は香りに関連するものがほとんど」と広田しのぶ理事長はいう。たとえば――。

賃貸マンションに住んでいるが、春に引っ越してきた隣人の洗濯物のニオイがきつく、体調を崩してしまった。洗濯物が干してないときでも、隣家の通気口や換気扇から吐き出されるニオイが入ってくる。最近は頭痛・吐き気・のどの腫れ・発熱・倦怠感が強く、仕事にも行けなくなった。すれ違った人のニオイも気になるようになり、外出もままならない。隣人には管理会社を通じてお願いしたが、無視されている。この先、どうすればいいのか(30歳代の女性)。

【香害追放へなすべきは】

香害問題で日消連は、昨年2月、首都圏の私鉄・東京急行電鉄によるアロマ散布問題に洗剤部会が取り組んだ。東急が主な駅の改札口でアロマを拡散器で流し始めたため、公共交通機関では問題だとし、中止要請と公開質問状を二度送った。他の利用者からの意見もあり、東急は昨年9月で散布をやめた。

これをきっかけに各地のCS患者会などと協力するようになり、昨年夏には埼玉県熊谷市と神奈川県厚木市で、市庁舎などでのアロマサービスを止めさせた。そうした実績を踏まえ、運動を広げることにした。

まず機関誌『消費者リポート』7月号で「『香害』は『公害』」と題する特集を掲載。続いて「香害110番」で被害者たちの生の声を聴き、「香害に悩まされない暮らしと社会」をめざして企業や政府・自治体に働きかけていきたいという。

香害はタバコでいえば受動喫煙に当たると、筆者は考えている。喫煙はかつてごく普通の風習だったが、健康に有害とわかって禁煙者が増え、社会では分煙が進み、いま受動喫煙の防止が課題になっている。その過程に学べば、香害をなくすためにまずなすべきは以下のようなことではないだろうか――。

▽香り商品による健康被害の実態を広く知らせ、とくに子どもを守るため、保護者・教職員・医療関係者などの理解を深める。

▽芳香柔軟剤や消臭除菌スプレーなど、使えば有害だが、ちょっと手間をかければ使わなくて済む商品が多いことを広める。

▽公的な施設では香料を自粛するよう自治体などに求める。とくに学校・保育園・図書館や病院・介護施設などでは香料を使用しないように指導してもらう。

▽企業には、香り商品の宣伝・広告の自粛を求める。商品に「健康を損うおそれがある」といった警告表示をするよう働きかける。

◆香害110番は7月26日(水)と8月1日(火)の午前11時~午後3時。TEL 03・5291・2166(電話は1本、上記日時だけ)

(岡田幹治・ライター、7月21日号)

東ちづるさん初プロデュース映画のテーマはLGBT

左から増田玄樹さん、東ちづるさん、有村昆さん。(写真/赤岩友香)

「『LGBT』という言葉は広がっていても、当事者一人ひとりにとってはまだ距離が大きい」

こう語るのは俳優で一般社団法人Get in touchの代表を務める東ちづるさん。現在、LGBTをテーマとした作品の映画祭であるレインボー・リールが東京で開催されているが、東さんが初めてプロデュースした作品『私はワタシ』が出品されている。7月4日に東京都内で上映会が行なわれた。監督は「(この作品を)撮るまでLGBTを知らなかった」という増田玄樹さん。映画はLGBTについて活動をしている45人へのインタビューで構成されている。

映画コメンテーターの有村昆さんは、トランプ大統領を引き合いに出し、「“わからない”からこそ壁を超える必要がある」と指摘し、「5年後には、LGBTは当たり前になっている感じがする。LGBTの方以外に見てもらうべき映画だ」と述べた。

本作は、7月16日18時25分から東京・南青山のスパイラルホールで公開される。映画祭が終わってからも上映会などを通じ全国的に展開する予定だ。東さんは、「(LGBTに対しては)地方の反応の方が大きい。この作品は営利目的ではなく啓発目的」と語り、本作の活用を呼びかけた。
詳細はURL http://getintouch.or.jp/

(赤岩友香・編集部、7月14日号)

遺伝子組み換え企業から公共品種守るため「日本の種子を守る会」設立

「日本の種子(たね)を守る会」の設立総会が7月3日、参院議員会館講堂で開かれ、4月に国会で廃止が決まった主要農作物種子法(種子法)に代わり種子の公共品種を守る新たな法律の制定を求める方針を決めた。

同会は種子法廃止を受け、山田正彦元農水相が中心となって結成を呼び掛けてきた。同法は稲や麦、大豆などの穀物種子を国が管理して各都道府県が原種を維持することを定め、種子を農家に安定供給することを可能にしてきた。コメの種子が100%国内自給できたのは、同法によるところが大きい。

しかし、規制改革推進会議は同法の存在が「民間企業の参入を阻害している」として廃止を打ち出し、2月に閣議決定。十分な審議もなく4月14日、参院本会議で廃止法が可決、成立した。これにより、いずれ世界の遺伝子組み換え企業が日本の種子市場を支配していくことは避けられない。

会場には350人の市民が詰め掛けた。総会に先立ち、発起人代表でパルシステム連合会前理事長の山本伸司氏が会設立の経緯を説明。西川芳昭龍谷大学教授が「種子の多様性を守る~人間と植物の共生の視点から」の題で講演した。

総会では参加者から活発な意見が交わされ、「私たちは大きな公共財産を失うかもしれない瀬戸際にいる。前の世代から受け継いだ豊かな財産を将来の世代へとしっかり渡していく責任がある。それには日本に種子の公共品種を守るための新たな法律が必要と考える」などとする設立趣意書が採択された。

会費や役員などを規定した会則を承認するとともに、発起人代表でJA水戸の八木岡努氏を会長に選出。山田氏は顧問に推され、受諾した。

同会は国会議員や地方議会などに働き掛け、種子法が廃止される2018年3月末までに新法制定を実現する構えだ。

(高橋清隆・ジャーナリスト、7月14日号)

40歳代後半~50歳代前半男性の賃金が下落するわけ(鷲尾香一)

「デフレを脱却するスピードを上げるには、賃金、給与という形で実体経済に表れてくることが一番早い」

覚えておいでだろうか。デフレ経済からの脱却を目指す安倍晋三首相が、低迷する個人消費を盛り上げるために、日本経済団体連合会など経済団体に対して賃上げを要請した時の言葉だ。

厚生労働省が2月に発表した2016年の賃金構造基本統計調査によれば、一般労働者の所定内給与は前年比0.0%と横ばいだった。

それよりも問題なのは、雇用構造的に企業が賃上げを抑制しているのが明らかなことだろう。

賃金構造基本統計調査を見ると性・年齢階級別では、45~54歳男性と60歳代前半男性と60歳代女性の賃金が下落していることがわかる。労働者数を勘案すれば40歳代後半~50歳代前半の男性が最大の賃金押し下げ要因となっているのは明らかだ。企業規模別にみると、大企業の男性賃金のみが全体を押し下げている格好だ。

ではなぜ、この年齢階級の男性の賃金が下落しているのか。その要因として考えられているのは、大企業のこの年齢階級は、バブル期前後の売り手市場で大量採用された世代であり、年齢的にも昇進率の低下などにより平均賃金が下がっている可能性が高いと見られている。

60歳代前半男性と60歳代女性の賃金の下落については、定年延長等による賃金低下が影響していることが明らかだ。

しかし40歳代後半~50歳代前半の男性の賃金下落については、実は、別の要因が働いている可能性が高い。

通常、昇進が止まった時、給与が据え置かれることはあっても、引き下げられることはないだろう。だが、今は給与の引き下げが行なわれているのだ。その要因は、定年延長にある。

60歳で定年を迎えても、本人が希望すれば企業には継続して雇用する義務がある。企業は定年延長後の給与を大幅に引き下げるとともに、その支払いに備えるため40歳代後半~50歳代前半の給与引き下げを行なっているケースが多いのだ。もちろん、その後は給与の据え置きを続けるか、引き下げる。間違っても、引き上げることはない。

40歳代後半~50歳代前半は、大学生の子どもがいたり、親の介護が始まる時期でもあり、生活費がかかる年齢層。加えて、老後の生活費を考えなければならない年齢でもある。当然、貯蓄に力を入れることになる。

60歳代になっても、年金受け取りの開始時期まで給与所得があればいいが、定年とともに大幅に減給されるため、消費を控える。

つまり、デフレ経済の脱却に必要な個人消費は定年延長などの要因を背景に企業側が賃金の引き下げを行なっている以上、盛り上がる可能性は低い。

賃上げを実現し、個人消費を活性化しようとするならば「企業は利益のXX%は給与として従業員に配分しなければならない」といった規則を作るとか、定年延長後の給与の引き下げに歯止めを掛けるとか、年金受け取り開始年齢を60歳からとして定年後すぐに受け取れるようにするなど、何らかの対策が必要ではないか。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。7月14日号)

NTT西日本グループ企業が韓国人の外国語通訳者を“偽装派遣”か

電話での通訳翻訳業務をする契約社員として採用されたのに派遣社員として扱われ雇い止め(解雇)になったとして、韓国人の盧相永さん(47歳)が採用先のNTTマーケティングアクト(大阪市)を相手に、労働契約上の地位確認と300万円の慰謝料などを求めて大阪地裁に提訴。第2回口頭弁論が7月7日に同地裁で開かれ、被告側が準備書面による陳述で反論した。

原告の盧さんは1991年に来日したニューカマーで現在は大阪外語専門学校の非常勤講師をしている。被告はNTT西日本の子会社としてコールセンター業務を展開するなかで、企業や自治体向けに英語、中国語、韓国語の通訳翻訳サービスを提供する多言語センターを運営する。

訴状によると、盧さんは2015年11月ごろ、多言語センターで韓国語を担当する知人の韓国人から求人の情報を聞き、16年2月に同社の採用試験を受けた。その日のうちに知人から電話で合格を知らされた。約1週間後、指示された大阪市内のマンパワーグループへ行くと、3カ月ごとの有期契約であることなどを告げられた。3月から多言語センターで勤務を始めたが、マンパワーが大手人材派遣会社であることを知り、多言語センターの上司に問い合わせると派遣社員であると言われた。盧さんは勤務を続けながら大阪電気通信産業合同労働組合に加入して直接雇用を求めたが、17年1月になってマンパワーから3月末で契約を打ち切るとの雇い止め通告を受け、3月に提訴した。

原告側は「労働契約による直接雇用が成立し、派遣は偽装にすぎない」と主張。被告側は「採用決定通知をした事実はなく、労働者派遣契約による就労だ」と反論している。裁判に踏み切った理由について、盧さんは「ニューカマーは在日と比べてもより悪い権利状況に置かれ、就労形態が不明朗なまま解雇されても泣き寝入りするしかなかった」と話す。

(平野次郎・フリーライター、7月14日号)

東京都議会を仕切るのは公明か(西川伸一)

7月2日投開票の東京都議会議員選挙は、自民党の歴史的惨敗と小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会の圧勝で幕を閉じた。自民党は過去最低の23議席を獲得したにとどまった。一方、都民ファーストの会は擁立した50人の候補者のうち49人が当選するという快挙であった。

7月3日付『読売新聞』「社説」は、「安倍首相は、今回の敗北を重く受け止め、政治姿勢を真剣に反省しなければなるまい」と書いた。そのとおりで、上記の結果はこの選挙が安倍晋三政権への「懲罰投票」だったことをよく示している。

久しぶりに胸がすく思いがしたが、溜飲を下げてばかりもいられない。有権者が政権への不満を都議選ではらした「ねじれ」を冷静に考えるべきだろう。「自民対小池」の劇場型選挙の中で、都議選として本来問われなければならない都政の問題が、無残なまでに埋没してしまったからだ。

立候補した自民党現職議員49人のうち28人が落選した。彼らの中には、地域が抱える問題に熱心に取り組んできた議員も少なからずいたはずである。その業績評価ではなく、しかも彼らのあずかり知らない「安倍政権の驕りと緩み」(前述の『読売』「社説」)のために落選の憂き目にあった。地域での地道な議員活動が報われず、「東京大改革」との空疎なスローガンが巻き起こした「風」になぎ倒されてしまった。こんな議員には心から同情する。政権が掘った墓穴に地方議員がはまったようで釈然としない。

言い換えれば、今回の都議選は(「も」か?)「記号」をめぐる争いだったのだ。多くの有権者は個々の候補者を吟味して投票したわけではなく、「都民ファ」「自民」「小池」「安倍」といった「記号」を意識して投票したのではないか。都議選が終わるとすぐに小池知事が都民ファ代表を辞任してしまったことは、この点を象徴している。

ここで、都民ファーストの会公認で立候補して当選した議員たちの属性をみてみよう。49人中実に38人(77・6%)が新人議員である。当選2回が8人、当選3回が3人となる(選挙後に、都民ファは推薦して当選した無所属議員6人を追加公認したので、都民ファ所属都議は55人になった)。

このようないびつな議員構成を抱えて、都民ファは党内をガバナンスできるのか。また、圧倒的第1党として都議会を円滑に運営できるのか。かつて大阪維新の会が大阪市議会に大量進出したとき、多くが新人の彼らに代わって公明党議員が市議会の「仕切り」を担ったそうだ。大阪選出のある公明党国会議員から聞いた話である。都議会でもその再現になりかねない。

さらに、都民ファ新人議員38人の経歴に着目すると、彼らのうち25人には区議や市議の経験がない。地域の事情にほとんど通じていない彼らが、都議としての職責を果たしていけるのか。「風」が凪いで化けの皮を現すことを強く懸念する。7月6日付『朝日新聞』によれば、都民ファは議員に対する研修会を週2回程度開いていく予定というが。

とまれ、安倍政権や自民党への支持は決して強固なものではないことがわかった。「魅力」ある受け皿さえ用意されれば民意は簡単に離れてしまうのだ。ただしその「魅力」が見かけ倒しならば、落選議員は浮かばれまい。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。7月14日号)

中国侵略の盧溝橋事件から80年に記念集会 駐日中国大使も発言

講演する笠原十九司・都留文科大学名誉教授。(撮影/片岡伸行)

「戦争には前史と前夜がある。今はまさに、戦争前夜に突入するかどうかという状況だ」。日本が中国への侵略を本格化したとされる盧溝橋事件(1937年)の起きた7月7日、東京・元麻布の駐日中国大使館で開かれた「『7・7事変』80周年記念集会」で、歴史学者の笠原十九司さん(都留文科大学名誉教授)はそう述べ、侵略の歴史を否定しながら「戦争政策の仕上げ」(=9条改憲)を目指す安倍政権に警鐘を鳴らした。

集会を共催したのは「不戦兵士・市民の会」(高野邦夫代表代行)、「日中友好8・15の会」(沖松信夫代表幹事)、関東日中平和友好会(新宅久夫会長)、「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」(姫田光義代表)の4団体。まず、挨拶に立った程永華駐日中国大使は「日本軍国主義の戦争責任を明確にすることは歴史の教訓を銘記し、二度と戦争を起こさず、未来を築くため」とし、両国の国交正常化45周年、来年の平和友好条約締結40周年という節目での集会の意義について語った。

4団体の代表はそれぞれの思いと団体の経緯を語りながら、「侵略戦争を心から反省し、歴史を正しく見つめる大切さを次世代に引き継いでゆきたい」などと述べた。

昨年11月にマウンテンバイクで瀕死の大事故を起こし、6月7日に退院したばかりという笠原さんは、近刊の『日中戦争全史(上・下巻)』(高文研刊)を紹介しながら、盧溝橋事件に至る背景や海軍と陸軍の確執などに触れ、日中戦争前夜の田中義一内閣と現在の安倍政権の共通性も指摘。「歴史を学ばない、学ばせない。その典型が日本。盧溝橋事件と同じようなことが尖閣列島で起こらないという保証はない。戦争前夜に突入しないよう、叡智ある国民になってほしい」などと結んだ。

講演後は、紫金草合唱団(大門高子代表)の合唱朗読『紫金草物語』が披露され、男女約40人による平和を希求する歌声が響いた。

(片岡伸行・編集部、7月14日号)

拝啓 前川喜平様(佐高信)

先日、前川さんの先輩の寺脇研さんに会い、前川さんは寺脇さんと同じ“河野スクール”の出身だと聞きました。

河野スクールの“校長”の河野愛さんは私より3歳下で寺脇さんより4歳上の文部(現文科)官僚でしたね。

1996年2月22日に47歳で病死してしまった河野さんのことを私は『世界』に連載していた「葬送譜」で追悼しました。もちろん、寺脇さんに追悼集等を用意してもらってです。

河野さんは後輩が「弱い者の心がわからない役人」にならないよう戒めたのですね。

そう鍛えられたのが寺脇さんや前川さんだと知って、私は今度の前川さんの行動がわかるような気がしました。

前川さんは『文藝春秋』7月号の「わが告発は役人の矜持だ」という手記で、「私には、加計学園の獣医学部新設問題で行政が歪められていく様子を目のあたりにしながら、それを看過してしまったことへの忸怩たる思いがあります」と言っていますが、「それでいいのか」と問いかける先輩として河野さんの顔が浮かんだのではないでしょうか。

東大法学部出で美人で仕事ができて、そのうえ思いやりがあってゴルフがうまくて酒が飲める。こんな河野さんを称して、麻雀でいう三倍満(めったにできない役満の次に高い手)だという人もいたそうですね。

忘れられない先輩の故・河野愛さん

労働組合の役員なども引き受けた河野さんは、後輩が差別的に仕事を逃げることを決して許しませんでした。

ある後輩が大分県の社会教育課長として出向していた時、文部省の社会教育課の課長補佐だった河野さんが彼を訪ねました。

会食の席で、その後輩が離島の村へ行かなければならないのに逃げているという話が出て、河野さんは顔色を変えたのです。

「あなた、何しに大分県に来ているの、仕事でしょ! いつから自分の好き嫌いで仕事選ぶほど偉くなったの、そんな気持ちじゃ県に対して失礼です! 直ぐに国に帰りなさい!」

大柄だけに、ふくよかな顔つきでも、怒った時の河野さんは恐かったそうですね。

逆に、どんな人に対しても、かばうべき時は部下をかばったとか。

河野さんの父親の力さんは、作家の川口松太郎が『亡妻追慕』の中に「二人と得ない妻、二人とない母、二人とない恋人」と告白していることに触れながら、自分にとっても娘は「二人とない娘」だった、と書いています。そして、娘が在職中、一番憤激にたえないと思ったのは、リクルート事件ではないか、と推測しているのです。その時の彼女のメモには、「不正に対し自分の生き方で闘っていく」と書かれていたとか。

「仏教では『百ヶ日』のことを『卒哭忌』というらしいが、これは泣き終わる日ということか。泣き終えて立ち直るという意味でもあるのだろう。もうすぐ三回忌がくる。『色即是空』『一切皆空』として悟るべきか。南々西の空にこれが娘の『愛』ときめている星がある。今朝は又格別キラキラと美しく輝いていた」

逆縁で娘に先立たれた河野力さんの追悼文の哀切な結びです。「私には過ぎた娘、心から誇りに思う娘であった」ともお父さんは述懐していますが、前川さんにとっても決して忘れられない先輩であり、“校長”だったでしょうね。

前川さんは前記の手記で、「次官の辞表を叩きつけてでも抗議できたはずで、自分の不明と勇気のなさを恥じるばかりです」とも述べていますが、しかし、前川さんの行動がどれだけ多くの人を勇気づけたことか、と私は思っています。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、7月14日号)

下村元文科相、闇献金の見返りで加計認可なら収賄罪の可能性も

横浜市へのカジノ誘致は加計問題に通じると江田民進党代表代行。7月8日。(撮影/横田一)

加計問題からの闇献金疑惑が6月29日発売『週刊文春』で報じられた下村博文・元文部科学大臣への追及が核心に迫ってきた。同誌が追及第2弾を出した7月6日、民進党の疑惑調査チームや国対ヒアリングで加計問題が取り上げられ、「献金の見返りに働きかけたのではないか」という収賄事件の可能性が出てきたのだ。

山井和則・同党国会対策委員長は、前日(5日)の疑惑調査チームによる日本獣医師会ヒアリングについて、次のように紹介した。「日本獣医師会は、『もともとは加計学園獣医学部新設は無理と見ていたが、下村文科大臣になって動き出し、新設の可能性が出てきた』と話していた。実際、2015年6月に政府は国家戦略特区で獣医学部新設を検討する方針を示した」。

下村氏が文科大臣だったのは、第2次安倍政権が誕生した12年12月から15年10月までの3年弱。この在任期間中に獣医学部新設が動き出したことと、『文春』の闇献金報道を山井氏は重ね合わせた。「(『文春』の記事によると)加計学園の室長がパーティ券200万円分を持ってきた。これが加計学園からの献金だったら、法に触れる可能性があるからあえて名前を隠しているのではないか」。

どんな法に触れるのかを明らかにしたのは、大西健介衆院議員だ。「一般論として、職務権限がある文科大臣が200万円の資金提供を受け、働きかけを行なった場合にどうなるのか。収賄罪になるのか」と聞くと、国対ヒアリングに出席していた法務官僚は刑法197条(収賄罪)を読み上げて答えた。「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、またはその要求もしくは約束をしたとき、5年以下の懲役」。

戦後最大の疑獄事件「ロッキード事件」では、1976年に田中角栄・元首相がワイロを受け取る一方、同社の航空機購入を働きかけたとして収賄罪容疑で逮捕されたが、もし下村氏が加計学園から献金を受けた見返りに獣医学部新設を働きかけた場合、刑法197条違反の可能性が出てくるのだ。

こうした疑惑について下村氏は、「都議選が終わったら説明する」と明言していたが、投開票から1週間経っても実現していない(10日現在)。説明責任を果たさない姿勢に対して先の山井氏から“二枚舌批判”が飛び出した。

下村氏は民主党政権時代の10年5月、川端達夫・文科相(当時)の事務所費不正処理疑惑を国会で追及、「会計帳簿や領収書などの証拠開示がない限り、国民の目には、川端大臣の発言についての信憑性を検証する手段がない」と迫っていた。「川端大臣は関係書類を公開して身の潔白を証明した。同じことを下村氏はすべきだ」(山井氏)。

言行不一致なのは、安倍晋三首相も同じだ。国会閉幕直後の会見では「丁寧に説明する」と言いながら、閉会中審査の日程を外遊中に設定し、前川喜平・前文科事務次官らの参考人招致(10日)を欠席した。都議選で惨敗してもなお、口先だけの反省で乗り切れると考えているに違いないのだ。

【横浜市長選は“アベ友”審判】

そんなアベ自民党の審判を問う大型地方選挙がある。カジノ推進で安倍首相と二人三脚を組む菅義偉官房長官(神奈川2区)の地元である「横浜市長選(7月16日告示・30日投開票)」のことだ。

カジノ反対候補擁立に動いた江田けんじ・民進党代表代行は、加計問題とカジノ誘致を次のように重ね合わせた。「『岩盤(規制)にドリルで穴を開ける』と言って加計に落ちるように開けた。カジノ法案強行採決でも、安倍官邸と大阪維新が連携をしてドリルの穴を(二大有力候補地の)大阪と横浜だけの穴を開けようとしているのではないか」(8日の集会)。

自公支援の林文子市長とカジノ反対派候補が激突する横浜市長選は、「岩盤規制改革の美名を借りた“アベ友ファースト”政治(菅官房長官の地元・横浜へのカジノ誘致)」イエスかノーかを問う選挙戦ともいえる。もう1枚のレッドカードを横浜でアベ自民党に突きつける結果になるか否かが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、7月14日号)

共謀罪にトンチで対抗(雨宮処凛)

「共謀罪」法が成立した。

いつも通り、反対の声など鮮やかに無視するという方法で。

そんな共謀罪に関して、「素人の乱」(東京・高円寺周辺の暇で貧乏な人たちの集まり)の松本哉氏が「【必勝!】共謀罪対策!」というブログを書いている。まだ成立前に書かれたものなのだが、これがいちいち馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。

たとえば「共謀しないでいきなり実行に移す」とか「自民党員と共謀する」とか、「なんとかだまくらかして政権を奪い、共謀罪で自民党や金持ち階級を弾圧しまくる」とか。さすが「トンチの神様」松本氏である。

そう、これから私たちがすべきなのは、「権力とのトンチ合戦」だと思うのだ。

そんなことを考えていて思い出したのは、2年前、安保法制反対運動が盛り上がる中、「素人の乱」界隈の人たちと開催した「アジア反戦大作戦」だ。

アジア各国との対立ばかりが煽られる中、アジアの人たちと「反戦」というキーワードで繫がろうという企画だ。これには韓国や台湾やフランスの人々が賛同し、同時多発的に世界各国でデモなど反戦アピールをしたのだが、東京の人々は、デモでの道路使用許可ではなく、「映画の撮影」ということで道路使用許可を取った。なぜか。デモだといろいろ警察がうるさいに決まってるからである。

が、「映画の撮影」ということであればおそらく自由にできるはず。しかも「撮影」開始時間を、高円寺阿波踊り初日の、まさに阿波踊りが始まる時間にぴったり合わせた。阿佐ヶ谷は、高円寺の隣。杉並警察署は阿波踊りで大忙しで、ちょっとやそっとのことでは阿佐ヶ谷に来られないだろうという計算だ。

そうして2015年8月29日午後5時、「映画の撮影」は始まった。監督役の「スタート!」のかけ声とともに駅前にやってきた迷彩柄の車(ミサイルを模したものを搭載している)に私たちは群がり、「戦争はやめろー!」「安倍はやめろー!」などと叫びながらブッ壊しまくったのだ。駅前で、「暴徒」のような集団が車を破壊しまくる。普通であれば、逮捕者が出たっておかしくない状況だ。

が、これはあくまでも「映画の撮影」。ちゃんと許可だって取っている。そうして破壊された車の前で「安倍はやめろ!」「戦争法案反対!」などと存分にアピールし、「映画の撮影」は終わった。ちなみに車は「この計画は歴史に残る! ぜひ自分の車を壊してほしい!」という有志の提供を受けたのだった。

共謀罪成立で、萎縮する、自由が奪われる、なんて声がある。だけど、自由は時に「トンチ」によって勝ち取れることもある。ゲームの難易度が上がった今、どんな作戦を立てようか、ワクワクしている。

(あまみや かりん・『週刊金曜日』編集委員。7月7日号)