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自民党都議56人を独自調査、「意見交換会」で1100万円超支出の“非常識”

2017年6月14日10:59AM

政務活動費で「新年会」の参加費を払ったことを示す自民党早坂義弘議員宛ての領収書。(撮影/三宅勝久)

自民党東京都議会議員が自治会や消防団、商業団体などに対して、「意見交換会」と称して政務活動費(月額上限50万円)を支払った例は、2015年度1年だけで約1500回を数え、金額は1100万円を超すことが、都議会事務局が保管・公開する領収書類の調査・集計によってわかった。特に1月に集中して多く、800件を超す。「意見交換会」の実態は新年会などの宴会の類が大半とみられる。

また、1日に何件もの支出を行なっている例が多数あり、事実上の有権者に対する「祝儀」になっている可能性は否定できない。

今回調査した領収書は、自民党会派56人(当時の会派所属議員。うち4人は後に新風自民党、都民ファーストの会、無所属へ移籍)の2015年度分。領収書はざっと1万枚もの大量で、大型ファイル41冊につづられている。そのすべてに目を通して「意見交換会」関連のものを抜き出した。

その結果、懇親会の類に支出した自民党都議は50人とほとんど全員で、うち20万円以上の支出があった議員は26人、うち40万円以上は11人にのぼった。

金額の多い都議は次のとおり(敬称略、カッコ内は選挙区、金額は概算。5000円未満の支出は省略した)。(1)堀宏道(豊島)59万円、(2)来代勝彦(港)54万円、(3)鈴木章浩(大田)50万円、(4)山内晃(品川、都民ファースト)49万円、(5)崎山知尚(荒川)46万円、(6)早坂義弘(杉並)45万円、(7)高木けい(北)45万円、(8)菅野弘一(港)43万円、(9)清水孝治(立川)41万円、(10)柴崎幹男(練馬)40万円、(11)高橋かずみ(練馬)40万円。

1回の支出額は、都議会の使途基準で上限を1万円と定めている。その上限いっぱいの1万円を払っている例が大半だ。堀議員の場合、78件で59万円を支出しており、平均額は8000円近い。

【出納簿を公開しない理由】

この78件の内訳をみてみよう。70件が1月に集中している。毎日1件では足りない、1日で3件~5件の「意見交換会」をはしごしている。精力的な「意見交換」の様子は想像にかたくない。2016年1月26日付で、豊島区米穀小売商組合に払った1万5000円のうち政務活動費で支出した1万円について、堀議員の説明書には「健全な営業の維持・向上について意見交換」ともっともらしいことが書かれている。しかし領収書の但し書きにはこうある。

「平成28年度新年懇親会会費」

どうみてもただの新年会である。顔を出して金を置いてきたというのが本当のところではないか。かりにそうだとすれば公職選挙法に抵触する恐れもある。

堀議員にかぎったことではないが、領収書も、税務署に出したら指摘されそうなあやしげなものがいくらでもある。電話番号が載っていればまだよいほうだ。いっさいの連絡先がない。町内会らしい名前、趣味の会のような任意団体。早坂議員は「杉並区民謡連盟」といったゴム印だけの領収書を提出している。実在するかどうかすら一見しただけではわからない。かりに実在するとしても、そこに払われた政務活動費がどう会計処理されているのかはわからない。小泉やすお杉並区議が「団長」だとの情報もあり、単なる自民党“杉並ムラ”の寄り合いということも考えられる。

議会の政務活動費には、政党支部あての支出を認めたり、人件費の金額と支払い先を非公開にするなど、大きな問題がある。しかし世論の関心は高くない。理由の一つは、調査が困難だからだろう。

大量の領収書を開示しておきながら、支出の明細を整理した出納簿を出していない。共産党だけは自主的に公開しているが、特に自民党は整理の悪さも加わって調査に膨大な労力を要する。わざとそうしているきらいがある。

都議会事務局によれば、来年度からインターネットで領収書と出納簿を公開する方針だというが、簡単にできるはずの出納簿の即時公開をする予定はないという。7月2日投票の都議選を控え、多くの議員にとっては見られたくないものがあるということか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月2日号)

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