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「南スーダンPKOに参加した多数の自衛隊員にPTSD発症」 元自衛官が証言

元自衛官らが中心となり6月1日に設立されたベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(平和を求める元自衛官と市民の会/VFPジャパン)が9日、衆議院第一議員会館(東京都千代田区)で設立記念シンポジウム「戦場のリアルと戦争する国の経済のリアル」を開催し、約170人が参加した。

VFPの本部は米国にあり、連携組織は今回の日本の他、英国・韓国・フィリピン・ベトナムなどにもあるという。

元陸上自衛隊レンジャー隊員でVFPジャパン代表の井筒高雄氏は、「戦争という選択をしないで紛争解決を目指すという思いで、世界のVFPの仲間たちとともにこれから日本で活動していきたい」と抱負を語った。

金子勝慶應義塾大学経済学部教授は基調講演で「アベノミクスは展望のない状態に入り、日本の競争力は恐ろしい勢いで落ちている」とし、「安倍政権は産業政策にも失敗して、原発輸出と武器輸出に頼らないと生きていけないような状況に追い込まれている」と語った。そして、武器製造はラインが動き続けないと採算が取れないため、「絶えずどこかに行って戦争にコミットしないとやっていけなくなる」と警告を発した。

VFP米本部・PTSD(心的外傷後ストレス障害)被害調査グループリーダーのサム=コールマン氏は、「アフガニスタン戦争やイラク戦争などに従軍した元米兵の中にPTSDを発症するケースが多く、自殺率も高い。深刻な問題だ」と警告を発した。また、ベトナム戦争に従軍した元米兵のPTSD等生涯有病率(予測)を「男性31%、女性27%」と試算し、「これは日本の将来でしょうか」と日本の行く末を心配した。

井筒氏はこれを受け、「南スーダンで戦闘が発生した結果、PKO(国連平和維持活動)に参加していた自衛隊員多数にPTSDが発症している」と実態を語った。

(星徹・ルポライター、6月16日号)

<原発事故>指定弁護士、東電元会長らの認識を詳述

2011年に起きた東京電力福島第1原発の破局的事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の初公判が6月30日午前、東京地裁(永渕健一裁判長)で始まった。元会長の勝俣恒久被告(77歳)が「震災当時、津波による事故を予見するのは不可能でした」と述べるなど、3人とも無罪を主張した。

他に起訴されているのは、ともに元副社長の武黒一郎(71歳)と武藤栄(67歳)の両被告。

冒頭陳述で、検察官役の指定弁護士は、福島第一原発に敷地高さの10メートルを越える高さの津波が襲来することについて、冒頭陳述では〈被告人武藤は平成20年(2008年)6月10日、被告人武黒も遅くとも同年8月上旬には、上記計算結果を実際に認識していました。〉〈平成21年(2009年)2月11日には、当時原子力設備管理部長であったLが「もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて」などと発言しているのですから、被告人勝俣も上記事実を知ることができました。〉と断言。〈被告人らが、費用と労力を惜しまず、同人等に課せられた義務と責任を適切に果たしていれば、本件のような深刻な事故は起きなかったのです。〉としている。

指定弁護人による冒頭陳述の全文はこちら。

(伊田浩之・編集部)

管官房長官の陰湿人事(西川伸一)

外務省は森本康敬・在釜山日本総領事を6月1日付で退任させた。森本氏は昨年5月1日付の発令なので、在任は1年1カ月でしかなかった。前任者が3年、さらにその前任者が2年勤務してそのポストで定年退職している。つまり、在釜山日本総領事はノンキャリ外交官のいわば「上がり」ポストなのである。森本氏もここで定年を迎えるはずだった。

なぜそうならなかったのか。昨年12月に釜山の日本総領事館前に「慰安婦」問題を象徴する少女像が設置された。日本政府は対抗措置として、森本氏と長嶺安政駐韓大使を今年1月から4月まで一時帰国させた。その帰国中、森本氏は知人との私的な会食の際に政府の対応を批判した。それが官邸に伝わって、事実上更迭される事態となった。

ではなぜ私的な会話を官邸は知り得たのか。これについて『週刊文春』6月15日号は、「森本氏は『政権寄りの新聞社が取材メモを官邸に持ち込んだようだ』と漏らしていました」との「外務省関係者」の発言を紹介している。新聞社が政権にご注進に及ぶとは。事実ならば癒着もきわまれりだ。加えて、私的会話にまで目くじらを立てる政権の陰湿さには驚く。

菅義偉官房長官は6月1日午前の記者会見でこの人事を問われ、「(政権の対応への批判は)承知していない。通常の人事だ」と口を拭った(6月1日付『朝日新聞』夕刊)。何をもって「通常」というのか。森本氏の次のポストはまだ決まっていないではないか。

同様の強引な人事は過去にもあった。6月3日付『毎日新聞』によれば、2015年夏の総務省人事で、ある幹部の昇格を菅官房長官が「それだけは許さない」と阻止したという。この幹部には、菅氏の「手柄」であるふるさと納税創設にかかわる規制緩和に異を唱えた「前」があった。高市早苗総務大臣は面目をつぶされた。菅氏による人事介入の制度的根拠となったのが、内閣人事局である。

14年5月に内閣官房に設置された同局により、政権は各省庁の事務次官と局長・審議官級の約600人の幹部人事を一元管理することを目指した。首相に委任された官房長官が幹部候補者名簿を作り、各省の大臣は首相と官房長官と協議して、名簿登載者の中から適任者を任命する。したがって、官房長官が強い影響力を発揮できる。当時、菅氏は「公務員には省益ではなく国益を考えて活動してほしい」と語っていた(14年5月20日付『毎日新聞』夕刊)。

とはいえ、内閣人事局が発足して3年が経過したいま目立つのは、「国益を考えて活動」するのではなく、政権の意向を忖度して動く官僚たちだ。「モリカケ問題」はまさにそれを実証している。小沢一郎自由党代表は、内閣人事局は「ゴマスリ役人製造機」になっていると喝破した(3月20日付ツイート@ozawa_jimusho)。

批判的な発言は私的なものさえ封じ込め、忖度官僚を侍らせる。菅氏のいう「通常の人事」とは、この3年間でそうした人事が「通常」化したことを意味していたのか。菅氏の次の発言はその点で参考になる。「慣例のみに従って人事はやるべきではない。私は当たり前のことをやっているんです」(2月27日付『朝日新聞』)。

その代償こそ公正な行政の崩壊である。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。6月16日号)

民主主義を窒息死させる共謀罪(宇都宮健児)

共謀罪(テロ等準備罪)法案は、5月23日の衆院本会議で、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決され、現在参院で審議されている。(編注:6月15日、“異例”の中間報告により参院法務委員会での採決を省略し、参院本会議で可決・成立)

安倍晋三首相は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて(共謀罪の)創設が不可欠だ」と強調し、共謀罪法案をあたかもテロ対策法案であるかのように説明している。

しかしながら一方で政府は、2000年11月に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために、共謀罪法を制定する必要があると説明してきている。

国際組織犯罪防止条約は、マフィアなどによる国境を越えた麻薬取引、人身売買、マネーロンダリングなどの経済的利益を追求する組織的犯罪を取り締まることを目的とした条約である。

したがって、政府が説明しているようなテロ対策を目的とした条約ではないのである。テロ対策に関しては、日本は既に「ハイジャック防止条約」「人質行為防止条約」「爆弾テロ防止条約」「核テロリズム防止条約」など13の国際条約を批准している。

また、国際組織犯罪防止条約を批准するために、共謀罪の新設が必ず必要とされるかというとそうでもない。わが国では、内乱罪、殺人罪、強盗罪、爆発物取締罰則違反などの重大犯罪については、「予備」「準備」「陰謀」「共謀」などを処罰する制度が整っているので、新たに共謀罪を新設しなくても、国際組織犯罪防止条約を批准できるのである。

国際組織犯罪防止条約は187カ国・地域で既に批准されているが、共謀罪を新設したのはノルウェー、ブルガリアの2カ国だけである。

共謀罪は過去三度廃案となっているが、今回の法案で新たに要件として付け加えられた「組織的犯罪集団」や「準備行為」は定義があいまいであり、実質は「犯罪の合意」を処罰する法律であるという点では、これまでの共謀罪法案と変わらない。

わが国の刑事法体系は、「意思」を処罰するのではなく、法律違反の「行為」を行なったこと、すなわち「既遂」を処罰することを原則としてきている。

共謀罪法案は、法律に違反する犯罪行為を実行しなくても、話し合っただけで市民を処罰できる思想・言論の処罰法である。

「犯罪の合意」を処罰する共謀罪では、盗聴が共謀立証の重要な手段になってくる。そのため、電話、メール、ライン、市民の会話などの盗聴が行なわれ、市民の日常生活が監視される危険性がある。また、共謀立証のためいろいろな団体やグループに捜査機関がスパイを送り込んだり、協力者をつくり、共謀があったことを密告させることになりかねない。

このように共謀罪法案は、わが国において監視社会化を進め、自由な言論活動を萎縮させ民主主義社会を窒息死させる法律である。

国連のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏も共謀罪法案に関し、「プライバシーの権利や表現の自由を不当に制約する恐れがある」と批判している。

あまりにも問題の多い共謀罪法案は、参院で廃案にするしかない。

(うつのみや けんじ・弁護士、6月16日号)

支持率急落の自民党に攻勢をかける小池新党 都議選契機に崩れるか安倍一強

都議選の応援をする若狭勝衆院議員。(撮影/横田一)

小池百合子都知事の“盟友”でともに自民党を離党したばかりの若狭勝衆院議員が、「都民ファーストの会」候補者の応援演説で、情報公開を旗印にした安倍政権打倒を呼びかけ始めた。都議選(23日告示、7月2日投開票)は、情報公開に後ろ向きでゴマカシ政治のアベ自民を選ぶのか、情報公開に前向きの「都民ファーストの会」を選ぶのかの“(政権)選択選挙”と訴えているのだ。

「一方は情報公開に後ろ向き、他方は情報公開を積極的に進めるという対立軸になっている。加計学園問題は、自民党一強、安倍首相一強の下での情報公開に後ろ向きである表れなのです。『情報公開をする』ということは、いろいろなことを曝け出すことでゴマカシ政治はできなくなるのです」(17日の応援演説)。

元東京地検特捜部副部長の若狭氏は、加計学園関連の文書を見た途端、「間違いなく文科省にある」と捜査の専門家として確信した。

自民党離党前の記者会見で、「菅官房長官が『怪文書』と言っているが、そんな稚拙なことは止めて下さい」と抗議をしたのはこのためだ。加計問題での対応を自民党離党の理由の一つに挙げた若狭氏は、安倍政権打倒をこう訴えた。

「情報公開は正しい政治をするための『命』、『要』なのです。情報公開に後ろ向きの自民党が政権をやっているのは問題がある」「情報公開によって初めて都民、国民に『何が問題となっているのか』『どういうふうに考える必要があるのか』という題材を提供する一つの大きな道具、手段が情報公開なのです。今後、数年、5年、10年、20年の国政、都政のあり方を考える際に、今、どちらを選ぶのかという選択の重要な“(政権)選択選挙”と言っても過言ではない都議会選挙が始まろうとしている。今の自民党“アベ一強”の下では情報公開に消極的で国民の目線に立った政治から離れてしまう。『それはいかん』と思っていただけるのか。『このまま情報公開に後ろ向きでゴマカシ政治でいいと思うのか』という選択だと思うのです」

「非自民勢力結集による安倍政権打倒」の呼びかけといえる。都議選で「情報公開に後ろ向きのアベ自民党」を惨敗させ、次期総選挙でも同じ“旗”を掲げて自民党を政権から引きずり降ろすという近未来図を思い描いているのだ。

豊洲問題の都対応も批判

加計問題を追及しながら衆院に公文書管理法改正案を共同提出したばかりの野党4党が、この“旗”の下に結集するのは確実だ。蓮舫民進党代表は都議選で情報公開が争点化していることについて、こう答えた。

「情報公開は民主主義の要。安倍内閣はまさに隠蔽をすることが常套手段ですから、その部分では古い古い古い自民党の政治を遺伝子でお持ちの方だと思っていますので、都議会自民党とこの情報公開の部分で戦っていくのは私達も同じです」(15日の会見)

小池知事も、一貫して情報公開の重要性を訴えている。18日の立川駅前の街宣では、加計問題の文書管理の混乱ぶりに触れる一方、自民党が支えた石原都政時代の杜撰さを批判した。「(豊洲新市場の土地売買に関する)メモが(売主の)東京ガスにあったのに、都にはなかったことではいけない」(20日、豊洲移転を正式表明)。

候補者も小池知事や若狭氏の考えを共有していた。「都民ファーストの会」の幹部クラスの都議は、こう答えた。「加計学園も国家戦略特区自体は国政マターだが、『情報公開が足りない』というのは都政も国政も同じだ。加計問題は国民、都民から不信を招いていることでは、投票の参考になるのではないかと思っている」。

15日、究極の共謀罪強行採決(本会議での中間報告)で会期延長を回避した安倍政権だが、内閣支持率は急落。自民党関係者から「首相が都議選の応援に入る予定になっていたが、現場が『来なくてもいい』と判断して流れた」という声も漏れ聞こえてきた。情報公開を旗印にした非自民勢力の結集、アベ自民党打倒の気運が都議選でどこまで高まるのかが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、6月23日号)

日本の若い世代に「慰安婦」問題を伝えるための基金が発足

日韓「合意」以降、「慰安婦」問題に対する日韓の市民意識のギャップは広がり続けている。「合意」への抗議運動の韓国の若い世代の爆発的な広がりに比べ、日本の若者をとりまく環境は、学校教育、メディアで「慰安婦」問題はタブー視され、被害者の名誉を傷つける言説がネットを中心に繰り返されている。こうした状況を変えるため、日本の若者に学ぶ場を提供しようと、長年「慰安婦」問題解決に取り組んできた活動家、研究者、性暴力問題に取り組む弁護士らが一般社団法人「希望のたね基金」(愛称:キボタネ)を発足した。

6月9日に開かれた記者会見で代表理事の梁澄子さんは、「日本の若者が『慰安婦』問題を学び、日韓の若者交流をとおして記憶を継承していくことが性暴力のない未来への一助になれば」とその目的を語った。

理事の太田啓子さん(弁護士)は、性暴力事件に取り組んできた経験から、性暴力被害者に対する誹謗中傷が出るメンタリティは、「慰安婦」問題への反応と地続きであり、若い世代とともにその暴力性と闘いたいと述べた。

希望のたね基金は、韓国の財団法人「日本軍性奴隷制度問題解決のための正義記憶財団」と連携して活動していく。同財団は「合意」後、500余の市民団体と市民が10億ウォン(約1億円)を集め昨年6月に発足した。韓国内被害者の福祉および人権活動支援、アジアの被害者支援、真相究明と追悼事業、若者への記憶の継承と教育などを始めている。

同財団常任理事の尹美香さんが来日し、10日の記念集会では、26年にわたるサバイバーと支援者たちの闘いの歴史を当事者の肉声をまじえて紹介。「『合意』はむしろ大きな希望へ向かう礎となった」と言い切った。韓国の市民社会は変化し、社会の共通の課題として認識するようになり、何より若い世代を動かしたというのだ。

この日、福岡から参加したという20代の男性は、韓国で「慰安婦」問題に取り組む若者との交流からもっと知りたいと思い、ネットで知って駆けつけたと言う。

同基金では、講師派遣、スタディツアー、留学支援、若者による企画への助成などを行なっていく。そのための募金集めがスタートした。
URL www.kibotane.org

(岡本有佳・編集者、6月16日号)

失われた家計の利子所得は600兆円超(高橋伸彰)

かつて日本の企業が経済のエンジンと評されたのは、家計の預金を銀行経由で借り入れ、自己資金(キャッシュフロー)を上回る投資をして得た収入を、賃金や利子の形で家計に還元し経済の好循環をリードしたからである。

しかし、バブル崩壊以降、日本の企業は賃金を抑制して人件費を削り、キャッシュフロー以下に投資を減らし銀行への借金返済に奔走するようになった。その結果、日本の企業部門は1998年度以降フローベースで貯蓄超過に転じ、日本政策投資銀行の中村純一氏(「無借金企業の謎」)によればストックベースでも実質無借金(有利子負債を上回る現預金を保有)を含めると、日本の上場企業主要5業種(製造業、建設業、不動産業、商業、サービス業)の40%強が今や無借金経営だという。

中村氏は無借金が日本では優良企業の証しとして語られることも多いと言うが、経済思想史家のハイルブローナーは無借金を誇る経営者は「現代の地主」にすぎないと喝破する。ケインズの言う「血気(アニマルスピリット)」をもって不確実な投資に挑むわけでも、シュンペーターの言う「企業家精神(アントレプレナーシップ)」を発揮して技術革新にチャレンジするわけでもなく、人件費を削減して利益を上げ内部留保の蓄積に努める経営者など、経営者として失格だというのだ。

企業が借金を減らしたことで銀行は預金の運用に苦しみ、やむを得ず低い利回りしか期待できない公債を購入するようになった。実際、銀行の総資金利回りは全国銀行ベースで2015年度には0.96%にまで低下し、人件費などの経費率0.87%を差し引くと、預金に利子を付けるのはほとんどむずかしい状況に陥っている。

借入金利以上の利益を目指して投資を行なう(かつての?)日本企業と異なり、最初から利益を目的としない政府に資金を回しても高い利回りは期待できない。この結果、家計が得る利子所得は「国民経済計算」によれば1991年度の37.5兆円をピークに15年度では5.4兆円に減少している。

家計が保有する現預金が同期間に511兆円から920兆円に増加していることを考えれば、家計の預金利回りはバブル崩壊後の長期停滞の中で7.3%から0.6%へと10分の1以下に低下した計算になる。しかも、この利回りはデフレ脱却を目的にした日銀の金利操作によってさらに低下しつつある。

企業が生みだす付加価値の中には、人件費や営業利益と並び借入に対する支払い利息が含まれている。お金を借りて投資を行ない、利益を上げて利息を払うことは付加価値の創造でもあるからだ。この支払い利息の推移を「法人企業統計」でみると、91年度の34.6兆円から2015年度には6.6兆円に減少している。

これこそ、既述した家計が得る利子所得減少の主因にほかならない。徒(いたずら)に無借金を目指す保守的な経営で失われた家計の利子所得を、ピーク時との差額として試算すると92年度から15年度までの累計で600兆円を超える。

失われた賃金に加え、失われた利子所得もまた家計の節約志向を強めて、長引く消費停滞を引き起こしていることを見落としてはならないのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。6月9日号)

原子力機構大洗センター、改善されないずさん管理と隠蔽体質

原子力機構水戸事務所などが入居するビルの前で抗議活動。茨城県水戸市。(撮影/崎山勝功)

6月6日午前11時15分ごろ、日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究開発センター(茨城県大洗町)の、燃料研究棟108号室で核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中に、核燃料物質が入ったビニール袋が破け、作業員5人が被曝した。

作業員の汚染検査で5人中3人の鼻腔内からα線(最大24ベクレル)を検出。核燃料サイクル工学研究所(同県東海村)の肺モニタで5人の肺検査の結果、50代の同機構職員の肺から「プルトニウム239が最大2万2000ベクレル検出された」という(10日には「身体の表面に残った放射性物質の影響で本来よりも高い値を計測の可能性」と発表)。

7日には作業員5人(同機構職員2人、請負労働者2人、派遣労働者1人)を放射線医学総合科学研究所(千葉市)に移送し、再除染やキレート剤を飲ませるなどの処置を行なった。12日時点で5人の健康状態は「異常なし」という。

茨城県や大洗町、水戸市など周辺8市町村の職員が7日に事故現場に立ち入り検査し「排気モニタ、モニタリングポストの値に異常がなく、環境への影響は認められない」ことを確認した。茨城県原子力安全対策課は取材に「6日から特段の異常はない」という。同課は事故原因や調査結果や再発防止策を23日までに出すよう同機構に申入書を送った。

同機構は、事故原因は「調査中」と発表。取材に対し「(報道機関の)個別の取材には応じていない。各社ともそうしている。電話取材もお断りしている」と回答を拒否した。

8日に同機構に申し入れを行なった、共産党茨城県委員会の川澄敬子・茨城町議によると「事故のあった燃料研究棟を廃止するに当たり、核燃料の入った缶の数を減らしたいために、他の缶にすき間があれば移し替えようと考えていた。(ビニール袋の)破裂は予想していなかった」と、同機構が回答したという。同センターには安全に作業を行なうためのグローブボックスがあったが、今回の作業では使われず、肺モニタ設備やキレート剤も大洗の同センターにはなかったなど、事故の際の安全対策が不十分だったという。

原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「この件に限らず、原子力機構では放射性物質のずさんな取り扱いが多い。過去に何回も問題になっているのに改善されていない」と問題視。その上で大洗町役場への情報提供が事故発生から約1時間後と遅れたことも「今回に関してもすぐに情報が発表されなかった。その辺は変わっていない」と、同機構の情報隠し体質を批判した。

【水戸市では抗議行動】

同機構水戸事務所と東海第二原発を所有する日本原子力発電茨城総合事務所が入居する「茨城県開発公社ビル」(水戸市笠原町)前で9日夕方、東海第二原発の再稼働に反対する「原電いばらき抗議アクション」の参加者ら20人が抗議活動を行なった。

抗議活動は2012年7月から毎週金曜日に行なわれており、抗議活動メンバーの玉造順一・前水戸市議は「大洗町で被曝者が出た事故は今回で3回目。原子力ムラの中で、福島の原発事故が何の教訓化もされていない」と語った。

一方、事故が起きた大洗町では、同町を舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)(注)のファンらが大洗駅で同アニメのグッズを購入していた。同町内の土産物店員は「海水浴客に影響が出ないか心配。『ガルパン』で町が盛り上がり(東日本大震災の)津波被害から立ち直ったというのに」と、海水浴客やアニメファンらの客足が遠のくことを懸念した。同町は全国各地からアニメファンらが「聖地巡礼」名目で観光に訪れるなど、同町の経済活性化に役立っている。

玉造前市議は「茨城の県民生活にとって原子力施設はマイナスでしかない。そろそろ県民も声を上げるべきだ」と脱原発を訴えた。

(注)大洗町の高校を舞台に、戦車を用いた武道の一種「戦車道」に取り組む女子高校生らを描いたアニメ。

(崎山勝功・『常陽新聞』元記者、6月16日号)

公立学校の建設業者が抗議住民を盗撮し「事実」をでっちあげ 行政と共謀か

東京・杉並区高円寺に杉並区(田中良区長)が計画している小中一貫校の校舎建設計画(6階建て。総工費約80億円)に伴なって同区と区教委が開いた工事説明会で、説明者として同席していた工事事業者が、説明会に参加している住民の肖像をビデオカメラで隠し撮りしていたことがわかった。事業者は後に、その映像を証拠として、住民から妨害を受けたなどとして事実を捻じ曲げた内容で東京地裁に妨害禁止の仮処分申し立てを行ない、同地裁が認めた。

杉並区はこの「盗撮」を事実上黙認しており、了解ずみだった可能性が高い。公共工事に住民は文句を言うなと言わんばかりの暴挙に、「田中区長は独裁者になったのか」と強い疑問の声が上がっている。

共謀罪法案には威力業務妨害も対象とされているが、これが成立すれば、今回のような例も警察の捜査対象になり得る。公共工事をめぐる住民運動を弾圧する強力な「凶器」として、民間企業や役人、政治家たちに「活用」されるのは明らかだ。

隠し撮りをしていたのは昨年11月、小中一貫校工事の本体工事を約54億円で受注した白石建設(株)(北澤暖社長)の社員。契約から1カ月後の同年12月17日、予定地の高円寺中学校で開かれた工事説明会に出席したが、前方から聴衆席に向けて小型ビデオカメラを密かに向け住民らの肖像を撮影した。参加者によれば、それまでの区の説明が十分でなかったことから、説明会は時期尚早であると住民らが口々に抗議を行なった。高齢者や女性が多く、手を出すなど暴力的なことは一切なかった。

これに対して白石建設は、このとき密かに撮った映像から静止写真を切り取り、「説明会を妨害する住民」の証拠だなどとして、4月27日、妨害禁止の仮処分を申請した。静止写真には住民の名前が書き込まれていた。会場では受付名簿が用意され、参加者に氏名・住所の記載を求めていたことから、本人特定に杉並区が協力した可能性がある。

区は「隠し撮り」を知らなかったというが、発覚後の反応は奇妙。

以下、伊藤克郎営繕課施設整備担当課長取材時のやり取りだ。

(筆者)住民説明会で事業者が住民を隠し撮りしていたのは重大な問題ではないか。(伊藤課長)撮影は事業者が必要だと考えてやったのだろう。事業者のやることに区があれこれ言うことはできない。(筆者)隠し撮りに問題はないのか。(伊藤課長)答えられない。(筆者)事情聴取や注意はしたのか。(伊藤課長)簡単に聞いた。注意はしていない。――白石建設の盗撮行為をとがめる様子がないのだ。

【取材時と違う業者の説明】

白石建設の言い分も怪しい。建築許可がまだ下りていない今年1月30日、白石建設社員らは測量などの作業を行なおうと現場を訪れ、中止を求める住民10人ほどと遭遇。取材していた筆者が目撃したのは、終始穏やかなやりとりだった。

「区と話し合っている。着工は待ってほしい」。住民の1人がそう静かに説明をし、社員らは手を前に組んでおとなしく聞いている。そして納得した様子で自ら引き揚げていった。住民たちが手にしていたのは画用紙だけのプラカードで、マイクすらなかった。

同社幹部は筆者にこう説明した。「住民の人の意見を聞くのはきょうがはじめてだ。持ち帰って検討したい」。

ところが、仮処分ではこんな話に変わっている。「メンバーが西門の前にたちはだかり、作業員らの入場を妨害した。結果当日は敷地内に入場できず、作業に着手することができなかった」。

少なくともこの日に関しては、白石の「妨害」説はである。

盗撮され、妨害“犯人”に仕立て上げられた住民の1人、孝本敏子さんは言う。

「子どもから日光を奪い住民の住環境を破壊する学校の改善を求め、また、地盤調査が不十分なのに巨大校舎建設は不安だと訴えてきただけです。理不尽でも“お上”に従えということなのでしょうか。納得できません」

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月16日号)

小池都知事が情報公開と公文書管理で安倍自民党を牽制

定例会見で「情報公開」を強調する小池百合子都知事。6月9日。(撮影/横田一)

野党の加計学園疑惑追及が安倍政権を直撃、東京都議選(6月23日告示、7月2日投開票)にも波及し始めた。自民党を離党した1日に「都民ファーストの会」代表となった小池百合子東京都知事は、安倍政権の情報公開が不十分と指摘、都議選を「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党対情報公開の小池新党」の対決構図と位置づけ、3日と4日の応援演説でも加計疑惑に触れたのだ。

有権者の反応も上々。離党前の世論調査では自民党「17%」に対して都民ファーストの会「11%」とリードを許していたが、離党後はほぼ拮抗・逆転するまでに追いついた。都議選の帰趨を決める七つの1人区で小池新党が圧勝、自民党惨敗の可能性が高まった。12日の『週刊現代』に「都民ファースト5→46議席、自民57→37議席」という予測が出たのはこのためだ。

加計疑惑をめぐる安倍政権の対応批判に手応えを感じたに違いない小池知事は、9日の定例会見でも情報公開の重要性をこう訴え、都政と国政を対比してみせた。

「今回の第2回定例議会において、一つは情報公開の条例の改正、二つ目が公文書の管理徹底の条例成立ということです。まさしくこういった点が今、国会の場においても『文書があるのないの』とか、『共有がどうなっているの』とか、そこに注目がいっているわけです。基本的に記録は残す。そして、重要な文書については、所管課限りでなく他部署が関与するダブルチェックにより廃棄するというのが、今回の公文書管理のポイントにもなっているわけです。行政である以上はしっかりと情報の管理、公文書の管理をするというのは当然の話だと思います」

【国政との挟み撃ちを図る】

「東京大改革の一丁目一番地は情報公開」とする小池都政と連動するように、民進・共産・自由・社民の4野党も9日、公文書管理法改正案を衆院に共同提出した。政府機関や独立行政法人の職員が書いた個人メモも行政文書として扱い、電子データは削除せず保存するという内容で、提出者の今井雅人衆院議員は「行政が管理しないといけない文書が破棄され、国民の権利が毀損されている」と必要性を訴えた。今井氏は民進党の加計学園疑惑調査PTの共同座長だ。

情報隠蔽のアベ自民党を国政と都政から挟み撃ちにする形となる中、小池氏は10、11日も2週連続で都内11カ所を回って応援演説。情報公開の重要性を強調しつつ、加計疑惑に触れる街宣を繰り返した。特に10日には、元文部科学大臣の下村博文自民党都連会長の地元・板橋区に駆け付けた。

「都連会長(下村元文科大臣)は文科行政に最も詳しい人だ。教育行政はどうあるべきか。このこともまず情報公開から始めなければいけない」「事務次官まで務めた人(前川喜平氏)が顔をさらして伝えている。そのためにはいかに公文書を管理するか(が重要)で、東京大改革の土台。その土台の都議会を変えなくてはならない」

小泉政権下で環境大臣を務めた小池知事は2005年の小泉郵政選挙を参考に、「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党イエスか、ノーか」「アベ友ファースト自民対小池新党など非自民」の“情報公開選挙”を都議選で仕掛ける可能性が高まったと言える。

「都民ファーストの会」幹事長に就任した野田数前代表も1日の総決起大会で、「(国政の)文書管理や情報公開の杜撰さを調べた上で都政で見本を示すという考えがあるのか」との質問にこう答えた。

「恐らく東京都で情報公開をさらに加速化させていくと、それは国であろうが、他の道府県であろうが、方向性としては情報公開の方向にベクトルが向かっていくのではないかと思っております」

都議選を情報隠蔽の安倍政権に「NO!」を突きつける場にする狙いと、「東京から国政(安倍政権)を変える」という意気込みがみえてくる。公文書管理法改正案を提出した野党と連動、都議選の構図がそのまま次期総選挙に持ち込まれる可能性も出てきた。小池新党は国政進出まで見据えているのではないか。

(横田一・ジャーナリスト、6月16日号)