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森友問題、昭恵「夫人付」職員の「尻尾切り」で終わらすのか?

2017年4月10日12:11PM

安倍昭恵氏(左)と谷査恵子氏(右)。2015年3月。(撮影/横田一)

「(土壌汚染の)撤去に要した費用は、(中略)買受の際に考慮される」「(工事費の立て替え払いは)平成27年度(2015年度)の予算での措置ができなかったため、平成28年度(16年度)での予算措置を行う方向で調整中」――。

3月23日16時ごろ、衆議院予算委員会で証人喚問に立った学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長がこの文面を読み上げると、議場内がどよめいた。これは、安倍昭恵「夫人付」の政府職員である谷査恵子氏が15年11月に籠池氏に送ったファクスの2枚目だ。1枚目は、国有地の10年の定期借地契約を延ばせないかと打診してきた籠池氏からの“森友案件”を谷氏が財務省に問い合わせ、昭恵氏に報告したとの内容。2枚目には、同省国有財産審理室長・田村善啓氏からの回答がある。回答の内容は“特別な取り計らい”によるものなのか、谷氏の行動は昭恵氏関与の“公務”か否かが争点となり、官邸は火消しに躍起だが、昭恵氏の関与は文面からも明らかだ。

籠池氏によると、ファクスが届く約1カ月前の15年10月、定期借地契約を10年より長い期間へ変更できないか昭恵氏に相談の電話をし、留守番電話にメッセージを残したという。すると11月17日にファクスが届き、1枚目には「現状ではご希望に沿うことはできない」と書いてあったものの、2枚目には冒頭の内容が記されていた。さらに、ファックスが届く前の10月26日には、籠池氏が谷氏に手紙を送っていたことも、共産党の大門実紀史議員により明らかになった。手紙には、定期借地期間を50年に延長し、「早い時期に買い取る」との意向などが記されていた。

注目すべきは、ファックスが届いた4カ月後の16年3月15日、籠池氏は、谷氏に回答をした財務省の田村室長と面談を果たしていることだ。9日後の24日には籠池氏は土地の買い受けを申し出ており、30日には土壌汚染の対策費として国から森友学園に1億3200万円が支給されることが決まった。15日の面談でこの一連の流れが協議されていた疑いが生じる。大門氏は「籠池氏の手紙と突き合わせていくと、要望はその後すべて実現している」ため、「満額回答」だと指摘した。

【「夫人付」の肩書きで財務省に問い合わせ】

民進党の福山哲郎議員は参議院での籠池氏の証人喚問で、昭恵夫人付が動いたことは「非常に大きなこと」だとして、「ある種、忖度が働いても仕方のない状況」と指摘した。籠池氏も同日、衆院予算委で、「昭恵氏は政治家的」であるとし、「財務省に多少の動きをかけていただいた」とも言及。財務省によると、谷氏は電話で同省に問い合わせをした際、「夫人付」の肩書きを使っていたという。これは明らかに「公務」としての問い合わせで、背後の昭恵氏に忖度し、財務省が動いたことがうかがえる。

しかし、菅義偉官房長官は証人喚問後の会見で、「忖度以前の『ゼロ回答』」だったと強調し、昭恵氏の関与を否定。籠池氏側からの問い合わせ先は昭恵氏ではなく谷氏であるとして、谷氏「個人」に責任を押し付ける“トカゲの尻尾切り”をした。谷氏の行動が「公務」だとなると、「妻や私が関わっていたのなら総理大臣はもとより国会議員を辞めますよ」と豪語していた安倍晋三首相は議員辞職せざるをえないからだ。

だが、谷氏が個人的に“森友案件”で動くとは考えにくい。元文部科学省官僚の寺脇研氏は、「一心同体のようにこき使っておきながら、いざとなると役人に責任をなすりつけて切り捨てるのは、都合が悪くなった時の政治家側の常套手段。とんでもない」と話した。

これまで昭恵氏が参加したシンポジウムや集会の数々に谷氏は同行しており、両者は国会議員と秘書のような密接不可分の関係にあった。15年3月15日に仙台であった国連防災世界会議の関連シンポにも昭恵氏は谷氏を同行させている(写真右)。昭恵氏のこうした場での決まり文句は、「(この問題について)夫に伝えます」というもの。安倍首相に日常的に“直訴”するなど、陳情窓口としての“政治家的”な側面が垣間見える。

谷氏「個人」の切り捨てで終わらせないためにも、昭恵氏、谷氏、田村氏を証人喚問する必要がある。

(横田一・ジャーナリスト、渡部睦美・編集部、3月31日号)

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