週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

休眠預金活用法への拭えない疑問(鷲尾香一)

10年以上放置されている“休眠預金”を民間の公益活動に活用する「休眠預金活用法」をご存じだろうか。すでに昨年12月9日に法律が公布されている。

休眠預金の活用が最初に浮上したのは2012年。この時は銀行界を中心に反対の声が上がり頓挫したが、14年に超党派「休眠預金活用推進議員連盟」が発足し、ついに実現の運びとなった。

休眠預金とは最後の取引または最後の満期日等から10年以上経過した預金のこと。この時点で形式上は預金者の権利は消滅、金融機関は休眠預金を利益として計上し、その利益に課税される税金を支払わなければならない。

形式上というのは、日本の金融機関は休眠預金であっても預金者から払い出しの請求があれば応じているからだ。ただし、ゆうちょ銀行では07年9月30日を基準に20年2カ月を経過したものは権利が消滅する措置を取っている。

核家族化が進み、独居高齢者が増加していることも一要因となり、毎年、巨額の休眠預金が発生している。金融庁の「休眠預金の発生・払戻状況」によると、休眠預金は年度平均900億円程度が発生し、払い戻しが行なわれた後も600億円程度の残高がある。つまり国にとり、この年間約600億円が休眠預金活用の原資なのだ。

休眠預金活用法では、活用の範囲を「子どもおよび若者」の支援にかかわる事業、「日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者」(生活困窮者)の支援にかかわる事業、「地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域」の支援(地域活性化等の支援)にかかわる事業、これらに準ずるものとして「内閣府令で定める」事業の3分野に限定し、「個人への給付ではなく、団体の活動」に対して、「助成あるいは融資」をすることになっている。

しかし、どの団体のどの事業を対象とするのか、助成と融資をどう線引きするのか等々、具体的な議論はこれから。法の施行は18年1月1日となっており、実際に助成・融資が開始されるのは19年秋頃になる見通しだ。

政府はこの春にも内閣府に休眠預金の活用に関する審議会を設置する。ここで詰めの作業をし、19年の春には対象となる団体の指定を行なう考えだ。

筆者はいくつかの懸念を持っている。たとえば東日本大震災の復興支援事業では、助成を受けるだけ受けてほとんど中身のある事業を行なわないまま消えてしまったうさんくさいNPO団体が少なくなかった。まっとうな団体と詐欺まがいの団体を見分けるノウハウはあれから確立されたのか。助成や融資を受けた団体がその資金をどのように活用しているのか、会計処理は適切に行なわれているのかなどを継続的に監視する体制の構築はできているのか。あるいは助成・融資を受けた団体が破綻し、損失が発生した場合はどのように処理するのか――こういった多くの疑問は解消されていない。

所有者が特定できない預金とはいえ、あくまでも“他人の財産”だ。他人の財布に手を突っ込む“筋の悪い”政策なのだから、せめて管理・運用だけは厳格に行なわれることが最低条件だろう。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。3月17日号)

治安維持法に反対し、暗殺された衆院議員がいた

山本宣治の遺影を前に行なわれた墓前祭。共謀罪への危機感があふれた。(写真/土岐直彦)

戦前、治安維持法反対を貫き1929年、右翼に暗殺された衆議院議員山本宣治(愛称「山宣」、1889年生)の第88回墓前祭が命日の3月5日、京都府宇治市の山本家墓地前であった。現代版・治安維持法と言うべき共謀罪制定の動きが切迫する中、反対に命をかけた山宣の墓前に、法案化と戦争する国づくり阻止を誓い合った。

山宣は東京帝大で動物学を専攻、1928年の第1回普通選挙で労農党から当選した。反戦平和の立場から治安維持法と官憲の拷問を追及、暗殺前日の3月4日には、全国農民組合大会で、「山宣ひとり(反対の)孤塁を守る。だが、背後には多くの大衆が支持している」と演説。翌日、国会で論陣を張るつもりだったがかなわず、その夜、宿舎で襲われた。

墓前祭は同実行委員会主催で、230人が参加。各団体・政党代表の「追悼のことば」では、共謀罪に対し、表現の自由、集会・結社の自由を奪う監視社会になるとの危機感が相次いで示された。山本家代表で挨拶した、孫で医師の山本勇治氏は「共謀罪が成立したら、祖父が何のために命をかけたか分からない」と話した。

近くの山宣実家の旅館に会場を移した講演会では、杉山潔志弁護士(京都南法律事務所)が「人間の尊厳を守るのが山宣の訴え」と指摘。共謀罪の危険性について、「相談や計画しただけで処罰対象とされかねない」と弾圧への警鐘を鳴らした。

(土岐直彦・ジャーナリスト、3月17日号)