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消えた民進党の「2030年原発ゼロ」(高橋伸彰)

2017年3月23日7:46PM

報道によれば、2月27日に民進党の蓮舫代表は今春の党大会における「2030年原発ゼロ」方針の表明を断念した。背景には同党の支持母体である連合の猛反発があったという。

実際、連合の神津里季生会長は本誌2月24日号のインタビューで〈最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざしていく必要がある〉と述べたうえで、〈そこに至る道筋で雇用や国民生活に与える影響を最小化していく努力は不可欠で、その間の再稼働はありうる〉という。原発ゼロの具体的時期には触れず、旧民主党時代に定めた2030年代(2030年ではない!)でさえ連合の方針よりも「踏み込んで」いると評するのだ。

民進党のエネルギー・環境調査会が、党大会に向け策定中の「原発ゼロ基本法案(仮称)」に「2030年ゼロ」を明記する考えを示したのは2月2日。そこから連合傘下の産業別労組へ理解を求める蓮舫代表の説明行脚が始まる。だが結局、合意は得られなかった。これに対し冒頭の断念が報じられた2月28日付『朝日新聞』(名古屋本社版)には「国民や労働者の生命、健康を守らずして何が労働組合か。労組のナショナルセンターとして失格と言わざるを得ない」という読者の声が掲載された。

この声を聞き改めて思うのは、かつての公害闘争で被害住民よりも企業側に立ち、公害の実態を隠そうとした大企業労組の姿勢だ。 公害研究者の宮本憲一は、公害が発生しても企業擁護にまわった労組を批判したうえで「水俣病の初期にチッソの労働組合が患者と対立し、四日市公害裁判を四日市労働組合評議会が提起すると三菱系企業労働組合が脱退したことなどは典型である」(『戦後日本公害史論』)と述べている。

前出の神津会長が原発再稼働の理由に挙げる「雇用や国民生活への影響」も、その主語は誰かと問えば、今回の福島第一原発事故で生業や生活を奪われた被災者よりも、傘下の電力総連を中心とする大企業労組を優先しているのは明らかではないか。

確かに、経営者と一体になって生産性を高め、そこで得られた付加価値の分配と組合員の雇用確保に専念してきた大企業労組にとっては、公害や原発事故の被災者、下請けや未組織労働者、地域住民は自分たちの雇用や生活に無関係な外部者かもしれない。しかし、そうした排除の思想が市民との間に分断を生み、労働組合の組織率や発言力の低下につながってきたことを忘れてはならない。

福島第一原発事故後も再稼働を容認する連合の方針が、いかに時代遅れかは先の新潟知事選挙や世論調査の結果を見れば一目瞭然である。そんな連合の方針に抗せない民進党に政権復帰の資格はないし、また、ともに働き、ともに生きるすべての労働者と市民のために企業や職域を超えて「身体を張り身銭を切った」(熊沢誠『労働組合運動とはなにか』)運動を展開できない連合にも明日があるとは思えない。

市民の生命と健康を危険に晒してまで考慮すべきような「雇用や国民生活への影響」など、私たちが暮らす社会には存在しない。そう考えれば、原発ゼロは2030年でも遅すぎるのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。3月3日号)

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