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「残業代ゼロ法案」に「首切り法案」(高橋伸彰)

2017年2月22日5:18PM

経済3団体が共催する今年の新年祝賀会で、安倍晋三首相は「今年は働き方改革断行の年だ。正規と非正規労働者の不合理な待遇の差は認めない」と挨拶した(1月6日付『日本経済新聞』)。しかし首相の挨拶とは裏腹に『日経』が行なった働き方改革に関する調査では、非正規の処遇改善を優先課題とする企業の割合は1割未満。7割以上は、むしろ長時間労働の是正を優先課題に挙げている(1月10日付『日経』)。

そもそも非正規の処遇改善や同一労働同一賃金が働き方改革の重要課題に浮上したのは、昨年1月27日の衆議院本会議で安倍首相が「働き方改革の重要な柱が、同一労働同一賃金です。たとえば、女性では、結婚、子育てなどもあり、三十代半ば以降、みずから非正規雇用を選択している方が多い(中略)こうした方々のためにも、非正規雇用で働く方の待遇改善は不可欠です」と答弁したのが嚆矢である。これを受けて昨年3月には「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が厚生労働省内に設置された。

同検討会の報告が出る前から、というより、出る前だからこそ安倍首相は畳むつもりもない風呂敷をところ構わず広げた。昨年6月1日の通常国会閉会時の会見では「『非正規』という言葉を日本国内から一掃する」と豪語し、同9月には外遊先で「どのような賃金差が正当じゃないと認められるのかをガイドラインを作って明らかにします」と公言したのだ。

こうした一連の発言がいかに実効性のない空虚なものだったかは、その後に公表された同検討会の中間報告やガイドライン案を見れば明らかである。

昨年12月20日に公表された中間報告では「同一労働同一賃金の考え方あるいは原則を、厳密に定義することはなかなか難しい」と断ったうえで、賃金の決定は本来「当事者である労使の決定に委ねるべきもの」と突き放し、正規と非正規の格差是正に向けて積極的に取り組むと言っていた国(政府)の姿勢は大幅に後退した。

また、非正規の一掃についても「正規・非正規という呼称格差を改め、すべて様々な雇用期間や労働時間の社員という考え方に整理されていく必要がある」と述べるだけで、非正規の呼称はなくすが、待遇は雇用期間に定めがある社員とか、労働時間が短い社員とか、あるいは勤務地や職務が限定された社員というように、社員の概念を細かく分類し、その労働に見合った処遇をすれば問題ないという。さらに中間報告と同時に公表されたガイドライン案でも、どのような賃金差がルール違反になるかよりも、どのような格差なら違反にならないかという企業寄りの事例ばかりが提示された。まさに非正規という言葉は、この国からではなく、働き方改革から一掃されてしまったのである。

非正規の一掃に代わり今国会で再び醜悪な鎌首をもたげているのが、長時間労働是正という名の「残業代ゼロ法案」と金銭解雇の合法化を図る「首切り法案」だ。

非正規をなくすと直前まで訴えながら、国会が始まると大企業が望む法案の成立に奔走するのは国民には想定外でも、安倍内閣には想定通りの流れなのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授、2月10日号)

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