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世界的に縮小傾向の原子力市場――人材確保に血眼の原子力業界

東電社員による講演で映し出された文言には必死さが滲み出る。(撮影/野中大樹)

東電社員による講演で映し出された文言には必死さが滲み出る。(撮影/野中大樹)

東京電力・福島第一原発の事故以降、応募者が減っている原子力産業界への人材を確保すべく、日本原子力産業協会は3月17日と20日、東京と大阪で就職活動中の学生むけに「原子力産業セミナー2016」を開いた。ブースを出展したのは東京電力、関西電力、日立製作所、東芝、三菱重工業など原子力産業の中核をになう企業47社。参加した学生数は東京で250人、大阪で143人の計393人だった。

2006年度から実施されているセミナーの参加者数がもっとも多かった年は事故前の2010年度で、計1903人。欧米を中心に原発の再評価(原子力ルネサンス)が高まった時期で、当時の民主党政権も原子力プラント(生産設備)の海外輸出などを国家戦略として打ち出した。

しかし11年に福島原発事故が起きると、その年のセミナー参加者数は496人へと一気に減る。その後は388人(12年度)、420人(13年度)と微減、微増で、今回の393人という数についても「依然として厳しい状況が続いている」(業界関係者)。同協会人材育成部の担当者も「3年間、必要な人材が確保できないと(悪影響が)ボディブローのように効いてくる」と吐露する。

【業界猛アピールの背景】

各ブースでは、原発が日本や世界の電力安定供給に寄与してきたこと、福島原発の事故処理対応に各国の関心が集まっていることなどが説明された。東電若手社員の講演を聴いた学生から「事故処理で得られた知見を廃炉ビジネスとして活かしていく方針か」という質問が出ると、「ビジネスというより、原子力技術の向上のために活かしていく」と回答する場面も。若手社員は、もう一度就職活動するとしたら「東京電力を志望します!」と講演を締めくくった。

東電をはじめ原子力産業界が躍起になるのは、原子力産業界そのものが斜陽にあるからだ。フランスの世界最大手原子力複合企業アレバ社は3月4日、昨年末までの決算を発表し、連結純損失が過去最高レベルの48億3400万ユーロ(約6300億円)に達したことを明らかにした。エネルギー需要が高い中国の原子力市場へ注力することを盛り込んだ「戦略的ロードマップ」を提示し、エンジニアリング部門の組織再編を実施する方針も示した。

アレバの苦境について原子力産業協会は「そのことが原子力産業界全体と連動しているわけではない」と関係性を否定するが、日本国内の原発も廃炉の時代を迎えつつある。17日、関西電力と日本原子力発電は古い原発3基の廃炉を決めた。翌18日には九州電力、中国電力がそれぞれ古い原発を1基ずつ廃炉にすることを決めている。これで国内に法的に存在する原発は43基になった。

安倍政権は昨年4月、原発を「重要なベースロード電源」とするエネルギー基本計画を発表している。関電はそれに基づき、原発の建て替え(リプレース)や新増設に意欲をみせる。

東電も17日、「新潟本社」を4月1日に設立することを発表した。柏崎刈羽原発の再稼働も踏まえ「関東圏のエネルギーを支えている地元と連携を強化する」(広報部)方針だという。

傾く原子力市場を横目に、産業界は業界規模の維持に血眼だ。

(野中大樹・編集部、3月27日号)