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「近弁連がヘイト・スピーチの規制求める決議――「表現の自由」めぐり議論も

2014年12月16日8:02PM

差別を煽動するヘイト・スピーチの規制をめぐりそれぞれの観点から論議するパネリストら。(撮影/平野次郎)

差別を煽動するヘイト・スピーチの規制をめぐりそれぞれの観点から論議するパネリストら。(撮影/平野次郎)

「ヘイト・スピーチは表現の自由か」――近畿弁護士会連合会(近弁連)の人権擁護大会が11月28日に大阪弁護士会館で開かれ、ヘイト・スピーチ(差別煽動表現)について「人種的憎悪や民族差別をm動する言動に反対し、人種差別禁止法の制定を始めとする実効性のある措置を求める決議」を賛成多数で採択した。決議に先立ち、当日は冒頭のテーマで市民も参加するシンポジウムが行なわれた。

近弁連人権擁護委員会は2012年の夏期研修会からヘイト・スピーチ問題と本格的に取り組み、各弁護士会が会報や討論会などで差別煽動表現の規制について、賛成派と反対派の議論を重ねてきた。その成果を今回の人権擁護大会に向けて、17人の弁護士が執筆して報告書にまとめた。

報告書は法的規制と表現の自由の関係について、「表現の自由が絶対的なものではなく、公共の福祉による制限に服することには異論がない。(略)個人の尊厳の保護や人格権・平等権という憲法的価値を実現するための規制であることが公共の福祉による制約の根拠となるであろうろう」との意見を掲載。このほか刑事規制を求める提案から規制反対論まで多様な意見を掲載し、まとめでは「表現の自由を盾に人種差別の横行を許す社会ではない」と述べ、差別禁止法制定を求める決議を提案している。

シンポジウムには4人のパネリストが登壇。市川正人・立命館大学法科大学院教授が「表現の自由の保障が十分でない日本でヘイト・スピーチを規制するとどうなるかを考えるべきだ」と慎重論を述べた。一方で、東京弁護士会の師岡康子さん、金尚均・龍谷大学法科大学院教授、ジャーナリストの中村一成さんの3人は「マイノリティの表現の自由が犠牲になっている」などとして、被害者の視点から規制の必要性を訴えた。

表現の自由の盾をいまどこに向けるべきかが問われている。

(平野次郎・フリーライター、12月5日号)

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