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「大間原発の無期限凍結を」――函館市長が不信感表明

2014年8月8日5:11PM

口頭弁論終了後に会見する函館市の工藤壽樹市長(中央)と弁護団。(撮影/小石勝朗)

口頭弁論終了後に会見する函館市の工藤壽樹市長(中央)と弁護団。(撮影/小石勝朗)

「きわめて横暴で、強圧的なやり方だ」――。本州最北端の青森県大間町に電源開発が建設中の「大間原発」をめぐり、対岸の北海道函館市が国と同社に対して、建設の差し止めなどを求めた訴訟の第一回口頭弁論が7月3日、東京地裁であった。冒頭、原告側意見陳述で工藤壽樹函館市長は、国と電源開発への不信感を露わにしたのだ。

大間原発から函館市まで、津軽海峡を挟んで最短23キロ。事故が起きれば大きな被害を受ける可能性が高い。市は「3・11」後に30キロ圏内の自治体として避難計画の作成を国から義務づけられたが、大間原発建設への「同意権」はないまま。工事が12年10月に再開された際も「電源開発は一方的に通告しに来ただけ」(工藤市長)。

工藤市長は大間原発の問題点として、(1)毒性が非常に強いプルトニウムを使った燃料だけで動かす世界初の「フルMOX」方式で危険性が大きい、(2)津軽海峡は領海が3カイリ(約5・5キロ)しかなくテロリストに狙われやすい、(3)福島原発事故を招いたずさんな審査基準で許可されている、と列挙。「無期限凍結」を訴えた。

市が訴訟の根拠に掲げるのは「地方自治体の存立を維持する権利(地方自治権)」と、市有財産の所有権だ。重大事故によるこれらの権利への侵害を排除・予防するために原発の建設中止を求めている。口頭弁論では国の代理人も異例の意見陳述に立ち、「地方自治権は憲法が保障する自治体固有の権利ではない」「自治体の財産権は個人の財産権のようには保護されず、市には原告適格がない」として訴えを却下するよう主張した。

これに対して市の弁護団は「福島の事故では自治体の『生命』が失われており、存立権を実体ある権利として扱うべきだ」「改正原子炉等規制法には『国民の財産の保護』が明記され、市にも原告適格はある」と反論。この点が最初の争点になるだろう。

(小石勝朗・ジャーナリスト、7月25日号)

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