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公安調査庁が東京五輪で特別調査本部設置――秘密保護法なくても黒塗り

2013年12月9日5:52PM

「機密性2情報」と指定され、黒塗りにされた公安調査庁の通知文書のコピー。(撮影/片岡伸行)

「機密性2情報」と指定され、黒塗りにされた公安調査庁の通知文書のコピー。(撮影/片岡伸行)

 二〇二〇年開催予定の東京五輪に関する公安調査庁文書を情報公開請求すると、調査体制と思われる部分はほとんどが黒塗りに……。特定秘密保護法がなくてもこのように特定の情報は隠されている。「平和の祭典」と謳われるオリンピックがらみの情報ですら、市民側からの知る権利(アクセス)は限定的に封じられているのだ。

 秘密情報を秘密にしたまま、その情報にアクセスしようとすると「共謀、教唆」などとされて罰則を受ける特定秘密保護法案。開会中の国会では、一一月二六日午前の衆院国家安全保障特別委員会で自民・公明・みんなの党の賛成多数で可決された。しかし、現状でも知る権利が限定されていることを、国会議員はどこまでわかっているのか。

 情報公開請求をした、市民団体「東京にオリンピックはいらないネット」の渥美昌純さんは話す。

「この上に秘密保護法が通ったら、今回私が請求したものも秘密指定され、表に出てこなくなる可能性はないのでしょうか」

 渥美さんが情報公開請求したのは、東京五輪に関わる公安調査庁(尾崎道明長官)と警視庁(西村泰彦警視総監)の文書。一一月一九日に開示文書を受け取った。

 国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、二〇二〇年の東京五輪開催が決定したのが九月八日(日本時間)だが、開示された文書によると、その一〇日後の九月一八日付で公安調査庁は「機密性2情報 事務連絡」とする文書を「各公安調査局長」と「各公安調査事務所長」宛てに通知していた。文書の表題は「『2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連特別調査本部』の設置について」。発出は「公安調査庁次長 小島吉晴」。特別調査本部は同日から「大会終了まで」設置されることになる。

 わずか三枚の開示文書のうち、「作業計画」の記述の一部と、調査本部の体制・調査事項と思われるほぼ一ページすべてが真っ黒に塗りつぶされていた。渥美さんは文書の内容にも驚いた。「特別調査本部」設置の目的が「不穏動向などに関する調査活動及び情報提供」となっていたからだ。

「私たちは二〇一六年の東京五輪招致から反対しています。二〇二〇年五輪招致にも反対です。理由はまず、開催意図が不明確であること。今回は当初、“復興オリンピック”のようにアピールしていましたが(二〇一二年二月の『申請ファイル』)、福島、宮城、岩手の被災三県ではない東京都で開催してなぜ復興オリンピックなのか。ところが、今年一月の『立候補ファイル』では“復興”の文字は消え、“コンパクトな計画”とか“成熟した都市”などと訴えている。わけがわかりません。そのほかIOCの理念に反する知事発言や環境破壊などの問題があります。今回の開示文書によれば、こうして私たちが反対の声を上げていること自体が『不穏動向』などととらえられる恐れがあります」

 行政機関に関わる秘密文書にはランクがあり、各省庁で「秘、極秘、機密」などと区分、機密は極秘よりハイレベルの秘密情報だ。

 先の公安文書にある「機密性2情報」というのは、機密性3ランクのうちの上から二番目で、「行政事務で取り扱う情報のうち、秘密文書に相当する機密性は要しないが、漏えいにより、国民の権利が侵害され又は行政事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報」(『政府機関の情報セキュリティ対策のための統一規範』より)とされる。決してランク下位の秘密情報ではない。

 こうしたことから渥美さんは、公安調査庁の言う「不穏動向」について、こう話す。

「オリンピックに反対=テロリストないしテロリスト予備軍という図式でとらえているのではないでしょうか。私などは真っ先に公安調査庁の調査・監視対象になるのではないかと心配です」

 行政に異議を唱え、機密情報に触れようとすると、現状でも市民が監視対象になる恐れがある。この上に秘密保護法ができたらどうなるのか。

(片岡伸行・編集部、11月29日号)

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