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アスベストを原一男も映画化――被害者に司法救済を

2012年10月10日6:56PM

 一審で勝訴したものの、控訴審で「国に責任はない」と逆転敗訴し(大阪高裁、三浦潤裁判長)、最高裁で争っている泉南訴訟など大阪アスベスト訴訟の勝利を目指す関西集会が開かれ、五〇〇人余が団結を誓った。

 大阪府立ドーンセンター(大阪市中央区)で九月一四日に行なわれた集会では、大阪アスベスト弁護団の芝原明夫団長が参加者に謝意を述べ、泉南国賠訴訟主任の村松昭夫弁護士が現状報告した後、映画『ゆきゆきて、神軍』などで知られる原一男監督のドキュメント映画『いのちって、なんぼなん? 泉南アスベスト禍を闘う』が上映された。

 泉南訴訟の原告は大阪地裁で勝訴したが賠償を命じられた国が控訴。昨年八月に逆転判決となり、最高裁で係争中。二次提訴では大阪地裁で原告が勝訴している。

 この間にも原告が次々と亡くなっている。映画は一九五〇~六〇年代、紡績工場で幼い娘を工場内で寝かせてアスベストまみれで働き、無念の思いで亡くなった岡田春美さんも描いた。原監督は集会で「多くの人が協力してくださったのに短くて申し訳ない。二時間版も必ず作ります」と約束した。

 尼崎アスベスト訴訟では、機械メーカー「クボタ」の工場周辺住民で亡くなった保井綾子さんの娘の祥子さん(六〇歳)の訴えが、「半径一キロ以内」とするクボタの基準からわずかに外れて敗訴。生まれつき障がいがある祥子さんは車椅子で壇上に上がり「クボタでなければどこがあんなにアスベストを出したんですか」と訴えた。

 関西建設アスベスト訴訟団も次々と登壇し、最後に尼崎訴訟弁護団の野上真由美弁護士が「東日本大震災と福島原発事故で財政危機と自己責任を口実に弱者が切り捨てられる中、手をつないで全面勝利をめざそう」と述べた。

 七年前、「クボタショック」でアスベスト問題に火がついたが被害があまりにも多岐で、当初は救済運動もばらけた感があったものの、今や大同団結している。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、9月28日号)

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