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経産省らの“脅し”に屈した“エセ改革派”ぶり露呈――橋下市長、再稼働容認「敗北宣言」

 橋下徹・大阪市長は六月一日、関西電力大飯原発の再稼働をめぐり、これまでの反対姿勢から事実上の容認に変わったことについて「負けたと思われても仕方ない」と敗北宣言をした。大飯原発の再稼働を妥当と判断した民主党政権に対して橋下市長は「政権を倒す」とまで言って反対してきたが、急に弱腰となって変節、口先やパフォーマンスだけの“エセ改革派”にすぎないことが露呈したのだ。

 変節の理由について橋下市長は「細野大臣が『暫定的な基準に基づく暫定的な安全判断である』と認めた。電力需要ピークが過ぎた秋には原発を止める期間限定の再稼働と理解している」「発送電分離やネガワット取引などの電力革命の道筋が見えてきた」として、一定の成果を勝ち取ったと説明した。

 たしかに、関西広域連合が五月三〇日に出した「原発再稼働に関する声明」には「大飯原発の再稼働については、政府の暫定的な安全判断であることを前提に、限定的なものとして適切な判断をされるよう強く求める」と書いてある。

 しかし四日に西川一誠福井県知事と会談した細野大臣と共に福井市入りをした仙谷由人政調会長代行は、地元議員向けの説明会で「期間限定の再稼働」とは一切言わず、配布資料にも「『特定の時限性』を持つという意味での暫定的なものとは考えていない」と秋に止める期間限定を否定してあった。

 政府の見解と橋下市長の解釈が食い違う玉虫色の文言となっており、これを成果と強弁するのは無理がある。しかも「秋以降も大飯原発を動かし続けた場合、再び、倒閣に転じるのか」との質問に橋下市長は「人生で倒閣と言えるのは二度まで。次に言うのは大勝負の時」と言って、再稼働問題の重要度をトーンダウンさせた。

 前回の倒閣宣言は「暫定的な安全基準なのに『安全宣言』したから。今回、細野大臣が『暫定的』と正直に認めたから(倒閣の)前提事実はなくなった」と闘う姿勢も消え失せた。

 橋下市長らは政府の玉虫色の空手形に飛びついたわけだが、敗北を喫した原因は「関西地区の夏の電力不足は約一五%で計画停電の可能性もある」という経産官僚主導の恣意的な予測に怯え、停電のリスクを取らされるという“脅し”に屈したのが実態だろう。

(横田一・フリージャーナリスト、6月8日号)

写真展中止、ネット上では個人情報も漏洩――右翼の誹謗中傷に屈したニコン

展示されるはずだった作品を手にする安世鴻さん(撮影/瀬川牧子)

ニコンから届いた「お詫び」文書のコピー(撮影/瀬川牧子)

 

 カメラのニコンは世界中の写真家、写真愛好家の間で愛されているメーカーだ。それゆえ、五月末に各メディアを駆けめぐった名古屋在住の韓国人、写真ドキュメンタリー作家、安世鴻さん(四一歳)の写真展を一方的に中止したニュースは言論・表現の自由に対する裏切り行為そのものと受け止めた人が多かったに違いない。

 報道の自由を擁護する国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」のアジア太平洋局長、ベンジャミン・イシュマル氏は五月三一日、「展示会中止に対しての情報統制を非難する」との正式なコメントを出し、「ニコンという民間企業がナショナリスト的扇動の外圧を受け入れ、検閲に加担したということは大変遺憾である」と述べた。

 六月に予定されていた新宿ニコンサロンでの写真展「重重―中国に残された朝鮮人元日本軍『慰安婦』の女性たち」。中止の理由としてニコン側は「諸般の事情を総合的に考慮」(五月二四日付文書)とし、今回の写真展だけでなく九月の大阪ニコンサロンでの展示のキャンセルまでも一方的に告げた。安さんはその後、ニコン側と文書でやりとりする。筆者が三〇日にニコン広報に電話で聞くと、最後になってようやく「個々の中身は言えないが、抗議の電話、メールがかなりあった」とし、右翼側からの働きかけによって中止を決定したことを事実上認めた。

 実際、五月二五日には東京・有楽町のニコン本社前で、「主権回復を目指す会」が、「祝! 安世鴻写真展中止! 写真展中止は国益に適った判断」との横断幕を掲げ集合。ネットの掲示板でも写真展に関して、「売国行為をやめよう」「ニコンに不買運動すべき」「抗議電話して売国行為やめさせよう」などと非難する声明や誹謗中傷する声が掲載された。

 問題はさらに続いた。写真展中止に関するニュースが流れ始めて二日後の五月二六日、安さんの個人情報がネット上に漏洩。安さんとその家族の身の安全にまでも深い影を落とし始めた。

 今回の展示作品は、戦後中国に置き去りにされた旧日本軍の韓国人元従軍「慰安婦」らを被写体としたもの。九〇歳以上の一二人の元慰安婦らが写真に収まっている。「忘れ去られた女性らを覚えていてほしい」との思いが撮影の動機で、「これのどこが政治的プロパガンダなのだ!」と安さんは怒りに身体を震わせて言う。

「外圧によって写真展を中止したニコンの対応は将来、写真家に『この写真ならニコンには展示できるかできないか』と考えさせる余地を与え、結果として表現の自由が消えていくことが懸念される」

 表現の自由だけでなく、この国には品位も見識もないのか。

(瀬川牧子・ジャーナリスト、6月8日号)