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福島原発告訴団の思い(5) 渡辺ミヨ子さん

〈「核の恐怖」は覚えていたのに……〉 福島県田村市在住 渡辺ミヨ子さん(70歳)

 私が小学生の時、原子爆弾が落とされた広島の映画を二度見ました。

 爆弾が落とされた場所にいたわけではない人たちまで、髪の毛が抜けたり、体にさまざまな異変が起こったり……。被爆者が苦しむ様子を描いた映画を見て、子ども心にも恐怖に怯えたことを、今でもはっきり覚えています。

 私は1942年に旧・船引町(現・田村市)で生まれました。戦後は貧しかったものの、豊かな自然の中で健康に生きてこられたと思っています。

 嫁ぎ先の旧・都路村(現・田村市)では、原発ができると皆、原発に働きにいくようになりました。そして「核の平和利用」「地域経済の発展」「安心、安全」という美名のもと、次々と原発がつくられていったのです。私は、そんな「地域経済の発展」に身を任せていました。福島県内に原発反対運動をしている人がいることさえ、知りませんでした。そして福島第一原発事故は起きたのです。

 私たちの世代を育んでくれた「うつくしま福島」の豊かな自然は、広島や長崎の人たちが見舞われたのと同じ放射能に汚染されてしまいました。「核の恐怖」を覚えていたはずなのに、うわべの「経済の豊かさ」に目も心も奪われていたのかもしれません。

 そんな私は今、この福島の地で成長していく子どもたちのために、一体何を残してあげることができるのかを、必死に考えています。

(まとめ・明石昇二郎〈ルポライター〉、5月25日号)

元凶は文科省の検定意見か――育鵬社に「改竄引用」との批判

 新しい教科書をつくる会系の育鵬社版社会科教科書について、誤りの箇所が複数あったことが五月一八日、藤岡貞彦一橋大学名誉教授らの指摘により明らかになった。

 公民教科書の一五七ページでは、「外務省ウェブサイトより引用」と明記しているにもかかわらず、厳密にはそうなっていなかった。

 外務省ウェブサイトでは尖閣諸島の領有権に関し、「中華人民共和国政府の場合も台湾当局の場合も1970年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化するに及びはじめて尖閣諸島の領有権を問題とするに至ったものです。/また、従来中華人民共和国政府及び台湾当局がいわゆる歴史的、地理的ないし地質的根拠等として挙げている諸点はいずれも尖閣諸島に対する中国の領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とはいえません」となっている。

 だが、実際の記述では「台湾当局」という主語が抜け落ちている。

 他にも歴史教科書の年表では、「朝鮮が日本領だった事実」は記載しているものの、「台湾が日本領だった事実」はない。

 藤岡氏らはこの日、文部科学省で金澤哲哉・教科書課教科書検定調整専門官に、これらの記述の是正措置を求めた。だが金澤氏は、「教科書会社はそれぞれ工夫し教科書を作っている。一旦検定された教科書は四年間、再審査する制度がない」と回答した。

 その後、同省記者クラブで会見した吉田重信元ネパール大使は、「育鵬社の改竄引用は『台湾は中国と一体』と受け取れる。国際的誤解を招く恐れがあり不当だ」と指摘。また、歴史教科書の年表問題では「執筆者に台湾擁護派の岡崎久彦元駐タイ大使がいるのに、理解できない」と語った。

 この件について育鵬社・教科書事業部は、「検定前の白表紙本では『外務省から引用』と明記し、中国・台湾の両方を記載したが、文科省が二〇一〇年秋、検定意見書で『誤解の恐れあり』と指摘。『台湾を国として扱わないでほしい』と口頭説明したので、台湾を外した」と回答した。

 これについて吉田氏は「白表紙本で『台湾当局』と表記していたら検定意見は付かなかったと思うが、結果的とはいえ、文科省が外務省の公式文書を改竄させることはあってはならない」と語った。

(永野厚男・教育ライター、5月25日号)