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「黒塗り文書」の情報隠し続ける推進派に異議――世界の反TPP反FTA論者集結

議論を重ねる各国の論客ら。日本のTPP推進派への批判も鋭い。(2月19日、ソウル市内。撮影/横田一)

「橋下徹市長はTPP(環太平洋戦略経済連携協定)への交渉参加に賛成していますが、多分、内容をあまり知らないのではないか」

 こんな疑問を投げかけたのは、韓国の通商問題専門の弁護士で『韓米FTAハンドブック』の著者でもある宋基昊弁護士。二月一九日、「TPPのひな型」と米国通商代表部が強調する米韓FTA(自由貿易協定)の調査で訪韓した日本の国会議員との懇談会で、「石原慎太郎都知事と橋下市長の連携の可能性が注目を集めている」との発言が出た直後、宋氏はこう指摘したのだ。

「石原知事はTPP反対だが、橋下市長は賛成。韓国で都知事に相当するソウル市長は、給食への遺伝子組み換え食品の使用を禁止する条例をはじめ三〇の条例がFTAに抵触、変更を求められる恐れがあると懸念表明をしています」

 三月一二日と一三日、宋弁護士をはじめ関係各国の専門家や国会議員やNPOが参加した「TPPを考える国際シンポジウム」が都内で開催され、活発な議論をした。韓国からは、韓米FTA全面破棄を求める国会議員の急先鋒の権永吉氏も参加。三月に発効予定の韓米FTAだが、食の安全や医療分野などでの弊害が知れわたり、四月の総選挙や年末の大統領選挙で一大争点に浮上。野党連勝の場合は破棄の可能性が高い。

 米国の参加者は、ラルフ・ネーダー氏が創設したNPO「パブリック・シチズン」のロリ・ワラック課長(貿易担当)とピーター・メバードック課長(医薬品担当)。日本ではTPP推進一色のように報じられる米国だが、北米自由貿易協定(NAFTA)で失業率増加や賃金低下を招き、米国民には自由貿易協定への嫌悪感が根強く、一部の多国籍企業が中心となってTPPを推進しているのが実態だ。

 TPP交渉参加国であるニュージーランドからは、緑の党共同代表のラッセル・ノーマン国会議員と、『異常な契約 TPPの仮面を剥ぐ』(農山漁村文化協会)編著者のジェーン・ケルシー教授(オークランド大学)が参加。TPP交渉をめぐる最新情報について紹介していった。

 二日間の日程はかなり過密。初日は、午前中に永田町で「議員間意見交換会」、一二時からは有楽町駅前で街頭演説会、そして一三時半には日比谷公園からデモ行進に出発。終了後は一五時からの「TPPを考える国際シンポジウム」に集結するという具合だ。

 翌日も九時から、「専門家会議」で日本医師会や消費者団体などの関連団体と意見交換。「医療・医薬品」と「保険・知的財産・食の安全」と「米韓FTA」の三部構成で、第三部では宋氏と権氏らが全国建設労働組合の関係者と条例への影響などについて議論をした。

 一方、今回の国際シンポについて説明した七日の記者会見では、TPPの新聞広告案に関する黒塗りの文書も配布された。タイトルは「TPP交渉参加に向けた協議に関する広報 平成23年度最重要・重要広報テーマ(新規)に係る政府広報」。電通が作成して一月一三日に内閣府大臣官房政府広報室に提出したものだった。

 この新聞広告は二月に主要全国紙などに掲載予定だったが、TPP慎重派が問題視。掲載延期となった。そこで川内博史衆院議員が「『交渉に参加するのか否かは国民的議論を経て判断する』というのが政府の方針。それに沿った広報であったのかを検証しないといけない」として情報開示を求めた。

 しかし請求から一カ月ほど経った三月五日、ほとんど黒塗りにされた文書が届けられた。

 これに対し川内氏は「全面公開を求める国民の声を巻き起こしていく」と意気込みを見せた。「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農林水産大臣も「食の安全は守られるとか、国民健康保険制度には悪影響を与えないとか、TPPへの交渉参加を一方的に推進するような内容が盛り込まれていたのではないか。徹底的に追及していく」と強調。TPP慎重派と推進派のせめぎ合いは、今後さらに激しさを増しそうだ。

(横田一・フリージャーナリスト、3月16日号)