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【米国】有名無実化する「撤退」発表――アフガンで米軍基地拡張進む

 オバマ大統領は昨年六月、アフガニスタンに増派した兵力三万三〇〇〇人を今年の夏までに撤退させ、残る六万数千人の部隊も、二〇一四年夏までに本国に帰還させると発表した。

 今秋の大統領選を意識し、「アフガンでの戦争終結」を印象づけようとしたものと見られるが、アフガンでは米軍基地が以下のように現在建設中、あるいは新基地が完成している。(1)バグラム空軍基地に、空爆作戦などにあたる軍用機専門の巨大作戦支援センターを併設、(2)同基地内に二〇〇〇人収容の刑務所を併設、(3)カンダハル空軍基地内に一八〇人が駐留できる無人機専門の作戦基地を併設、(4)同基地内に、あらゆる車輌を修理できる一一の軍用工場が完成、(5)今年五月までに、国内九〇カ所に特殊部隊専用の基地を完成予定、(6)イラン国境に近いヘラート空軍基地内に、特殊部隊を支援する空軍専用の滑走路拡張工事が進行中――。

 これ以外にも中・小規模の基地の拡充などが予算化されているが、主力はバグラムやカンダハルのような超巨大基地の機能強化だ。そこでは、今後米軍が作戦の主体にしようとしている無人機と特殊部隊に関連する工事が目立つ。タリバン勢力の完全制圧は主要軍事目標から外して無人機と特殊部隊を中軸に国内戦闘に対処させる一方、超巨大基地を恒久的に確保し、アフガンをロシアやイランを射程に入れた戦略的前進基地にしようとする意図が窺える。

 このようにオバマ大統領の「アフガニスタン撤退」発言は、有名無実化している。事実、アフガニスタンのジョン・アレン現地司令官は、パキスタン国境の戦略的要所をめぐるタリバンとの戦闘が今後も続く見込みであることから、「撤兵は困難」との見方を示している(「アルジャジーラ」電子版二月二日付)。また同司令官は昨年七月の上院軍事委員会の証言で、「(一四年の)撤退は選択肢にはない」と明言していた。

 パネッタ国防長官も二月一日、「一三年度に米軍は主要な戦闘任務から離れる」と述べたが、それに伴って撤退する兵員数など具体的な内容は不明で、「戦争終結」にも一切触れていない。少なくとも今後のアフガニスタン戦争をめぐる情勢は、楽観論は禁物だろう。

(成澤宗男・編集部、3月2日号)

東電、政府らが「刑事被告人」に――「原発を問う民衆法廷」始まる

設楽俊司さん(写真左)は言語障がいがあり、この後降壇しスクリーンを使いながら話した。(撮影/西村仁美)

 東京タワー正面の機械振興会館(東京都港区)で、二月二五日、「原発を問う民衆法廷」(同実行委員会主催)が開かれた。「模擬裁判」だが、福島での原発事故被害の当事者が申し立て人となっており、被害者の視点から原発政策を問い直すことを目的としている。

 同実行委顧問・伊藤成彦氏(中央大学名誉教授)は冒頭、「戦争ではなく原発(政策)を裁くのは今回が世界初。この法廷活動を通じ、原発を停止させたい」と挨拶した。会場には約三〇〇人が入り、ステージ上の「法廷」は、検事団、判事団、アミカス・キュリエ(法廷の友達という意。今回は被告人の主張の代弁者)の三者で構成。メンバーは大学教授や弁護士たち。

 今回の民衆法廷では、福島第一原発事故は刑事事件となり、事故当時の東京電力、政府、関係機関幹部らが被告として起訴された。容疑は「公害犯罪」の二、三条違反と、刑法の業務上過失致死傷罪。申し立て人は総勢七人で、それぞれ意見陳述を行なった。車イスで出廷した「被災地障がい者支援センターふくしま」の設楽俊司さんは、途中、会場から声が聞き取りづらいなどの理由で言葉を遮られる場面もあったが、障がい者が福島で避難できず、ヘルパー不足にあえぐ現状を力強く訴えた。

 後半の証人尋問では、福島県生まれで『犠牲のシステム 福島・沖縄』(集英社刊)の著者・高橋哲哉氏が証人として出廷した。

「犠牲のシステム」とは、「ある者たちの利益が他の者たちの生活の犠牲の上にのみ満たされ維持されるもの」と言い、「原発というのは『犠牲のシステム』。ある人々の人権が深刻に侵害されているのを忘れるべきではないと思う」などと主張した。

 この民衆法廷は今後全国を巡回し、次回は福島で五月下旬に行なわれ、判決も下される予定だ。

(西村仁美・ルポライター、3月2日号)

【宇都宮健児の風速計】 危険な秘密保全法制定の動き

 二〇一一年八月八日、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」は、秘密保全法制を早急に整備すべきである旨の報告書を発表した。この報告書を受けて政府の情報保全に関する検討委員会は、今年の通常国会に秘密保全法案を提出する準備を進めてきている。

 政府が検討している秘密保全法は、国民の知る権利や報道の自由・取材の自由を侵害するなど、憲法上の諸原理と真正面から衝突するものである。

 秘密保全法を検討するきっかけとなったのは、尖閣諸島沖中国漁船衝突映像の流出問題であるが、この映像流出は国家秘密の流出と言うべき事案とはとても言えないものである。

 秘密保全法では、規制の鍵となる「特別秘密」の概念が曖昧かつ広範であり、本来国民が知るべき情報が国から隠されてしまう懸念がきわめて大きい。また罰則規定に、このような曖昧な概念が用いられることは、処罰範囲を不明確かつ広範にするものであり、罪刑法定主義等の刑事法上の基本原理と矛盾抵触するおそれが大である。

 禁止行為として、漏洩行為の独立教唆、扇動行為、共謀行為や、「特定取得行為」と称する秘密探知行為の独立教唆、扇動行為、共謀行為を処罰しようとしており、このままでは単純な取材行為すら処罰対象となりかねないものである。

 このような法律が制定されると、取材および報道に対する萎縮効果がきわめて大きく、国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体などを取材しようとするジャーナリストの取材の自由・報道の自由を不当に制限することになりかねない。

 今から二七年前の一九八五年、当時の中曽根政権下でスパイ防止に名を借りた「国家秘密法案」が国会に提出されたことがあったが、このときはこの法案が国民の知る権利と民主主義をないがしろにする法案であると世論から大きな批判を受け、反対運動の高まりによって結局廃案となった。今回の秘密保全法案は国家秘密法案の再来と言えるものである。

 沖縄密約事件、原発事故情報隠し、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件などに見る政府の対応からすると、政府が今すぐ着手すべきなのは秘密保全法制の整備ではなく、情報公開の徹底である。

(2月17日号)

【石坂啓の風速計】 ある選考委員の退任

 賞をもらうどころか仕事をほめられることもほとんどない生活をしているが、以前に一度だけ、ある漫画賞の候補に上がっているが受賞する意思はあるかと打診をされたことがある。

 横着にも返事をするより先に、その賞の審査員は誰か、これまでの受賞者に誰がいるかを尋ねた覚えがある。不遜なのは承知の上です。おゆるしください。でも自分が尊敬するどころか「サイテーだなァ」と思うような人たちに、審査されたり同列だと思われたりするの、イヤじゃありませんか。

 とまあもともとひねくれてはいるから、こんど自分が審査する側の仕事をさせてもらうときには、できるだけ謙虚な気もちで努めようとしてはきた。漫画だったり作文だったりシナリオだったりテレビ番組だったり、作品に接する機会が増えたのはうれしかったが、採点をするときにはだからいつもビクビクものだ。私なんかが審査員でスミマセン、どうか「石坂に俺の才能がわかってたまるか」くらいに思っていてくださいね、――と。

 あらゆる賞には背景がある。純粋に人を応援するものではあるのだろうけど、主催する側にはさまざまな意図があって当然だ。審査員を選んだ時点で意味あいはかわるし、数字におきかえて判定できる性質のものと違って、絵だの文字だのといった作品はそもそもジャッジがむつかしい。

 石原慎太郎さんが芥川賞の選考委員をされていたことを私は知らなかった。「バカみたいな作品ばっかり」と放言していたこと、まあこの方がある日突然謙虚な発言をされたら驚いたはずだから、らしいと言えばらしいんだけど、周囲の人々がさぞ頭を抱えていらっしゃるんじゃないかと審査光景が想像できた。

 権威のある賞で権威のある先生がドッカリと居座っている光景。若手の感性からすっかりズレているのに自覚もなく、過去の自慢をする光景。主催側から彼らに審査員「辞任」のお願いをすることが、もはやできないという光景。そういう現状を少なからず私も見てきたからである。

 口に出して言うかどうかはさておき、賞を「もらっといてやる」という気持ちでいるのは作家として大いに正しい。そして今回は選挙に専念いただくべく委員の一人に退場願えて、出版部数も大増刷できた主催側に対してこそが、「おめでとう」だ。

(2月3日号)