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放射能の危険性過小評価に住民抗議――『広報よこはま』の“安全神話”

2011年10月17日6:13PM

 神奈川県横浜市がこのほど、約一〇〇〇万円の予算を投じて全戸配布した市の広報紙に対し、事実と異なって故意に放射能の危険性を過小評価しているという批判が市民の間で高まっている。

 問題となっているのは、『広報よこはま』の「放射線特集号」。「専門家の話を聞く」と題し、東京大学の唐木英明名誉教授が放射能について語っているが、提示された「放射線被ばく早見図」では、年間一〇〇ミリシーベルト(mSv)の線の下に「がんの過剰発生が確認されていない」などと書かれている。

 だが、文部科学省の委託調査では、原子力産業従事者の累積線量群が一〇〇mSv以下でも、がん死者数が増加する傾向が認められている。

 さらに唐木教授は、「政府は緊急時の避難基準を年間二〇(mSv)に決めました。食品の基準はさらに厳しく、放射性セシウムについては年間、五(mSv)です」と述べている。これだと「避難基準」も「食品の基準」も厳しいかのような言い方だが、法律では公衆被曝は年間一(mSv)しか認めておらず、それも〇・三(mSv)を定めているドイツの方がはるかに「厳しい」。

 このため、親たちで組織する「横浜の子どもたちを放射能から守る会」のメンバーが九月一六日、横浜市役所の市長秘書課を訪れ、誤った情報によって市民が放射性物質による土壌汚染・食品汚染を「安全」と誤解して健康を害する結果になりかねないと指摘。(1)広報の回収(2)掲載内容の訂正と謝罪文の掲載(3)放射線対策部責任者の解任――等を求める林文子市長宛の抗議文を提出した。

 市民の間では、市の小学校一五八校で八万四〇〇〇人の児童の給食にセシウム汚染牛が使われて八月に大きな問題になりながら、謝罪もしない市長の姿勢に批判が集中。さらに市長は、セシウムが検出された焼却灰を、事前説明をほとんどしないまま、市内の廃棄物最終処分場に埋め立てようとしたため、住民らの抗議で計画凍結に追い込まれている(詳細は本誌九月三〇日号「本欄」参照)。

 今回の『広報よこはま』配布後には、市への抗議電話が多数寄せられ、市長への不信感はさらに強まっている。だが一〇月四日現在まで同「守る会」の抗議書に対し、市長側からの回答はない。

(成澤宗男・編集部、10月7日号)

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