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林眞須美さん「“死”が消えない」――和歌山カレー事件死刑確定から一年

林眞須美さんが収容されている大阪拘置所。この7月に立て替え工事が始まる予定。(撮影/片岡健)

「四月の初めに眞須美に面会してきましたが、今は朝起きてから夜寝るまで、頭から “死” という言葉が消えることがない、と言っていました。面会中は明るく振る舞っていましたが、本当は相当しんどい状態なんやろうと思います」

 大阪拘置所に収容されている林眞須美さん(四八歳)の近況について、夫・健治さん(六五歳)はこう話す。

 一九九八年七月二五日、夏祭りのカレーにヒ素が混入され、六〇人以上が死傷した和歌山カレー事件。殺人などの罪に問われながら、一貫して無実を訴えた林眞須美さんが最高裁で上告棄却され、昨年五月一八日に死刑確定して一年になる。この間、眞須美さんや弁護団は同七月二二日に再審請求。その後も弁護団は現地調査などを重ね、支援者も地元和歌山でビラ配り、会報の発行など、再審無罪獲得に向け、精力的に活動している。

 だが一方、眞須美さん本人の境遇は死刑確定以降、ますます過酷なものになっているようだ。

 というのも、眞須美さんは死刑確定後、親族や弁護人以外との面会や手紙のやりとりが一切許されない状態に。死刑確定者の外部交通は法律上、親族のほか、「重大な利害に係る用務の処理のために面会が必要な者(例・弁護人)」や「心情の安定に資する者」などと許されるが、眞須美さんが拘置所側に繰り返し求めてきた支援者や友人との外部交通の許可はすべて退けられているという。

 しかも、健治さんによれば、眞須美さんは現在、「親族ともほとんど面会できていない状態」という。というのも、健治さんは昨秋に体調を崩し、実は今も療養中。和歌山市の自宅から大阪まで面会に訪ねるのは体力的に厳しく、四月の面会も約七カ月ぶりだった。さらに四人の子どもも、面会可能な平日は仕事や学校でなかなか時間がとれない現状なのだという。

「生きている時間の大半を狭い独房で過ごしている眞須美にとって、未決囚のころから面会や手紙など、外の人との交流は心の支えでした。今の状態では心が折れてしまわんか心配です」(健治さん)

 ただでさえ極限的な精神状態の死刑確定者がかくも絶望的に孤独な状態に置かれていれば、健治さんの心配も無理はないだろう。

 そんな状況のため、弁護団や支援者が現在、再審請求活動の中で重要視しているのが、大阪拘置所での眞須美さんの処遇の改善だ。

「東京拘置所では、死刑確定者にも二人、三人と許可されていた友人・知人との外部交通の枠が、昨年からさらに四人、五人へと拡大されています。それに比べると、死刑確定者に対する大阪拘置所の処遇改善は非常に遅れている。

 また、大阪拘置所は他と比べ、弁護人の接見も不自由。たとえば、他の拘置所は、死刑確定者でも弁護人は所員の立ち会いなしの接見が可能だし、接見時にパソコンも使えます。他では普通にできることが、大阪拘置所では認められないのです」(弁護団関係者)

 そう指摘される大阪拘置所は、死刑確定者の処遇等をどう定めているのか? 同拘置所に問うた。

 担当者はまず、死刑確定者の外部交通について、「一律ではなく、個別に判断しています」と説明。死刑確定者の弁護人接見に常に立ち会いがつく理由は「死刑確定者の心情の把握や身柄の保全の必要性が高いこと」などで、弁護人が接見時にパソコンを使えないのは「録音や撮影の機能があること」が理由という。回答を聞く限り、大阪拘置所側にも事情や考えがあるようだが、刑が執行されたら取り返しがつかないのが死刑確定者だ。その再審請求活動へのマイナスも指摘されるような処遇については、改善の余地がないか、せめて検討くらいされるべきだろう。

「眞須美は『再審で無罪をとるまで絶対死なへん』と言っていたが、その前に精神的にまいってもうたら話にならん。そうならんように私らが支えていかんと……私もおちおち寝込んでおれません」

 自分も療養中の身ながら、健治さんは気丈にこう言った。困難な状況の中、再審無罪を求める眞須美さんや関係者の闘いは続く。

(片岡健・ルポライター)