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改正風営法の施行で変わる日本のクラブシーン

6月22日、C4主催の記者発表会。東京都内。(写真/内原英聡)

6月22日、C4主催の記者発表会。東京都内。(写真/内原英聡)

「犯罪者は実際は違う場所で取引している場合であっても、危険ドラッグなどの取引場所としてナイトクラブで取引したと証言することも多かった。経営者の弱みにつけ込んでのことです」

こう実態を明かすのはクラブとクラブカルチャーを守る会(Club and Club Culture Conference、以下C4)の広報担当、DJ WASEI CHIKADA(WASEI)氏だ。「クラブは従来の風営法で原則午前0時まで。深夜帯営業はグレーゾーンで警察の摘発も恣意性が高かったのです」。

6月23日に施行された改正風営法(昨年6月成立、風俗営業等の規制及び業務の適正化などに関する法律の一部を改正する法律)はダンスを基準とする営業(客にダンスをさせる営業)の規制を撤廃。また「特定遊興飲食店」を新設し、営業許可取得を条件に深夜に酒類の提供をしつつ客に遊興をさせることを可能にした。

WASEI氏は、「店内で違法行為を発見したとき経営側も通報しやすくなる。大きなメリットです」とも指摘。ただし課題はあり、「遊興」が何を指すのか、警察の恣意的な法運用をどう避けるかといった点は業界と政治、行政の調整が続く。

施行前日の22日、C4は東京・渋谷のSOUND MUSEUM VISIONで記者発表会を実施。長谷部健渋谷区長らも同席した舞台で、C4のZeebra会長はクラブ業界の質向上を訴え、“PLAYCOOL”(粋に遊ぼう)キャンペーンを呼びかけた。

(内原英聡・編集部、7月8日号)

住友化学株主総会で――「脱ネオニコ」訴える

ミツバチの大量死が世界中で進み、原因にネオニコチノイド系農薬が指摘されている。同農薬はすでにヨーロッパをはじめとして使用規制が広がっており、住友化学が開発・販売するクロチアニジン(商品「ダントツ」)は、現在9カ国で規制されている。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、同社の定時株主総会の6月21日、会場前(東京・中央区)で株主に対し、ネオニコ系農薬ビジネスは会社にとってブランドリスクであり、製造販売をやめるよう訴えた。選挙シーズンにちなんだ架空の「脱ネオニコ党」を結成し、声を上げられないミツバチの代わりにアピールを行なった。

グリーンピースは、株主総会参加・議決権行使等を通して企業の社会的責任を追及するため、住友化学の株式を最小単位で購入している。総会にはグリーンピースのボランティアで、日本ミツバチ保護活動家の御園孝氏が出席し、「ミツバチの被害が広がっている。積極的に調査、対策を行なえないか」と質問。住友化学の健康農業関連事業部担当西本麗専務は「カメムシ防除剤を直接浴びたことが被害の原因の可能性がある」と述べつつも、「ラベルに基づき適正に使用すれば被害は防げる」と回答した。

だが、農薬の「適正使用」には限界がある。グリーンピースは今年5月、夏野菜の苗に残留する農薬を調べたところ、9製品中4製品から表示のない農薬が見つかり、ほとんどがネオニコ系農薬であった。ミツバチなど環境への影響を気にかける消費者に正しい情報が伝わっていない恐れがあり、だれも知らないところで「農薬汚染」が広がっている。

現在、安全で生態系をまもる農業を望む消費者とともに、小売業に有機農産物の調達・販売方針の強化を求める「Goオーガニック」署名を展開中。URL act-greenpeace.jp/food/organic-ranking2016/

(石原謙治 グリーンピース・ジャパン食と農業担当、7月8日号)

マイナンバー違憲訴訟続々――神奈川でも始まる

仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、福岡……マイナンバー(共通番号)違憲訴訟が全国展開していく中、神奈川でも今年3月24日、201人の原告が▼個人番号の収集、保存、利用及び提供の禁止▼国が保存している個人番号の削除▼損害賠償(一人あたり11万円)を国に求め、提訴した。争点は大きく分けて二つ。(1)情報漏洩の現実的危険、国家による個人情報の一元管理となることの具体的弊害の立証 (2)憲法13条が保障する「自己情報コントロール権」という概念で捉えられるかという憲法論だ。

6月23日、第一回期日が開廷され、意見陳述が行なわれた。長年共通番号制度を問題視し、本訴訟の原告代表を務める宮崎俊郎さんは、「共通番号制度の根幹は、データマッチングを目的とした情報連携。住民情報の保管は実質的には一極集中システムであり、サイバー攻撃等を受けたら全市民のデータが流出する危険性がある。大規模ネットワークに参加しない権利が憲法13条におけるプライバシーの一種と捉えることが現代的な解釈。ぜひとも現代における最先端の状況を踏まえた議論をして頂きたい」と強く訴えた。また、開業医の藤田倫成さんは、「医療情報は極めて機微性の高い個人情報だからこそ、医療従事者には厳しい守秘義務が課せられているのに、共通番号と結びつけば漏洩の危険性が増してしまう」と指摘。

これに対し、国は、▼直ちに漏洩に繋がるものではない▼原告のいう危険性というものは抽象的なもので、具体的な危険性はない▼自己情報コントロール権はない――などとし反論している。

弁護団は第二次訴訟を起こす構えで、8月末日締切。問い合わせは事務局TEL 090・6138・9593(中森) ●次回期日は、10月13日(木)午前11時~横浜地方裁判所101号法廷(※20分前より抽選開始)。

(稲垣美穂子・フリーランスライター、7月8日号)

IMFがアベノミクスを真っ向から批判――石破茂氏も「経済停滞」指摘

アベノミクスを批判する石破茂地方創生大臣。6月29日、岩手県。(撮影/横田一)

アベノミクスを批判する石破茂地方創生大臣。6月29日、岩手県。(撮影/横田一)

国際通貨基金(IMF)は参院選公示二日前の6月20日、日本経済について「景気回復の失速」「人口減による国内市場縮小」とする報告書を公表した。安倍政権の経済成長や財政健全化を「達成困難」とみなし、賃上げと共に15%までの消費増税などを提案。アベノミクスを真っ向から批判した。

旧大蔵省出身の平岡秀夫・元法務大臣(元民主党衆議院議員)は、「IMFの報告書の背景には、財務官僚と経産官僚の確執があるとみている。“経産内閣”ともいわれる安倍政権誕生で、財務官僚の発言権は低下している」と指摘した。

安倍首相の側近中の側近は、経産省出身の今井尚哉首相秘書官。サミットで消費増税延期を正当化する「リーマン資料」作成の中心人物とされた(本誌6月10日号)。

しかし、安倍首相が「アイツだけは許さない」(14年10月2日号『週刊文春』)と嫌うエコノミストの藻谷浩介氏は「消費不振の真因は増税には無関係の人口構造の変化」「人数の多い昭和20年代生まれが退職し給与の低い若者と入れ替わったために雇用者報酬総額が伸び悩み、消費の総額が下がった」(『毎日新聞』6月19日付)と指摘。個人消費の前回対前年同期比を元に「14年4月の前回増税が個人消費を損なって、アベノミクスの成果を台無しにした」とする増税忌避論者の今井氏を論破。

同調したのが石破茂地方創生大臣。29日の岩手での街宣で、アベノミクスの地方への恩恵は皆無に近いと断言。「出生率が全国最低の東京に人がどんどん集まっていく。日本の人口が減少、経済が停滞をするのは当たり前」とも指摘。大企業や富裕層が潤う都会優先のアベノミクスが「経済停滞」を招く元凶と批判したといえるのだ。

IMFも藻谷氏も石破氏も「経済停滞の主因が人口減で、全国的な所得増加(賃上げ)が必須」という認識で一致。アベノミクスの是非を問う参院選の参考になる。

(横田一・ジャーナリスト、7月8日号)

関電高浜1・2号機の運転延長――規制委40年超え認可なぜ

6月20日、原子力規制委員会は、関西電力高浜原発1・2号機について、40年超えの運転期間延長を認可した。最大20年の運転延長が可能となる。福島原発事故後、運転期間を原則40年に制限するルールが原子炉等規制法に位置付けられてからの初の延長認可だ。導入当時は40年を超える運転延長は「例外中の例外」とされていた。

「高浜1・2号機は、運転延長認可の期限が迫る中、規制庁が関電に便宜を図り、無理やり通したのでしょう」と「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武さんは批判する。「福井などの市民団体とともに、熊本地震の繰り返しの揺れの評価などを確認するため、原子力規制庁に会合を申し込んだのですが、断られました。パブリック・コメントも行なわず、資料も白抜きだらけです」。

審査の内容にも疑問が残る。関電は、従来の手法で耐震性を評価すると基準をクリアできないため、“新手法”を用いた。たとえば、蒸気発生器では、通常より甘い定数を使い、これを確認するために行なう実機を揺らしての試験は、規制委員会は工事後に先送りする方針を示した。前原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は、基準地震動を策定するもとになる地震規模について、現在採用されている「入倉・三宅式」では過小評価になる恐れがあると警告を発している。高浜1・2号機においても同じ式が用いられている。さらに、電気ケーブルが劣化により絶縁性が急低下し、制御ができなくなる問題や、原子炉圧力容器の中性子による脆性破壊などが指摘されている。

グリーンピース・ジャパンによれば、世界で閉鎖された原発の平均運転年数は24・7年。現存する最も古い原発は47年。40年超の原発は原子炉圧力容器のひび割れなど、さまざまな問題を抱える。

認可の当日、福井など18の市民団体が「住民のいのちを危険にさらす」と声明を出し、抗議した。

(満田夏花・FoE Japan、7月1日号)

根津さん河原井さん勝訴を祝福――「先生の姿勢に学んだ」

裁判勝利報告集会での根津公子さん(右)と河原井純子さん。(撮影/松原明)

裁判勝利報告集会での根津公子さん(右)と河原井純子さん。(撮影/松原明)

「まさか生きている間に、こんな勝利判決が確定するとは思っていなかった」と根津公子さんは声をはずませた。「君が代」不起立に対する根津さん6カ月、河原井純子さん3カ月の停職処分取り消し、それぞれ10万円の損害賠償を都に命じた高裁判決(須藤典明裁判長)が、5月末日最高裁の上告棄却で確定した。6月19日、裁判勝利報告集会が都内で開かれ、約60名が参加した。

岩井信弁護士は、「『君が代』の強制は、最高裁判決では思想・良心の自由について『間接的制約となる面がある』とされているだけだが、この判決では『実質的な侵害につながる』として憲法判断に一歩踏み込んだ」と、その意義を強調した。根津さんは「この判決で一番うれしいのは、仲間のこれからの重処分に歯止めがかけられるかもしれないこと。免職処分が迫っていたとき、周りからやり過ぎと非難されたが、生徒たちの励ましで救われた。弾圧の時代、闘いきるしかない」と発言した。

河原井さんは「最高裁の分断判決(※)をのりこえようと仲間作りをしてきた。勝利判決は出たが、(『日の丸・君が代』を強制する都教委の)10・23通達の違憲・違法、戒告を含むすべての処分の白紙撤回を勝ち取るまで本当の勝訴はない」と語った。集会に参加した根津さんの教え子、Eさん(25歳)は「今回の勝訴は自分のことのようにうれしい。当時、校長から先生が停職になったのは、『君が代』を歌わなかったからと聞いて、そんなことでなぜと思った。自分の思いをプラカードにして先生に渡した。先生の不起立を貫く姿勢から、自分の考えを貫くことを学んだ」と話した。

今回の画期的な勝利判決は2007年事件のもの。根津・河原井裁判は、現在08年事件が地裁で進行中、まだまだ闘いは続く。

※12年、最高裁は、河原井さんの停職1カ月を取り消したが、根津さんの停職3カ月は維持した。

(佐々木有美・レイバーネット日本、7月1日号)

三菱重工株主総会に向けNAJATがアクション――「死の商人」にならないで!

三菱重工の株主総会会場前でアピールするNAJATメンバー。東京・港区。(提供/杉原浩司)

三菱重工の株主総会会場前でアピールするNAJATメンバー。東京・港区。(提供/杉原浩司)

6月23日、三菱重工業(株)の株主総会が東京・港区のグランドプリンスホテル新高輪で開かれ、「武器輸出反対ネットワーク」(NAJAT)が会場前で株主にチラシを配り、「武器輸出に反対してください」と呼びかけた。

日本最大の軍需企業である三菱重工は、「国是」とされた武器輸出三原則を安倍政権が閣議決定のみで撤廃する以前から、日米「ミサイル防衛」共同開発などに積極的に参加し、武器の輸出や国際共同開発に向けた態勢を強化してきた。オーストラリアの潜水艦商戦で手痛い敗北を喫したものの、6月10日に開催した「防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会」の説明資料では、「防衛装備移転三原則の閣議決定に基づく海外案件が拡大」と述べ、F35戦闘機の最終組立の基盤確立(現在は国内向けのみ)やミサイル防衛用迎撃ミサイルSM3の共同開発・生産への進展、さらには、新たな国際共同開発事業への参画や将来戦闘機の開発、新型護衛艦の研究などを明記している。まさに、武器開発と武器輸出の「確信犯」である。

NAJATではこれまで、市民が消費者として軍需企業に直接「死の商人にならないで」との声を届けるよう呼びかけてきた。また、6月3日には三菱重工など4社の軍需企業めぐりを、7日にはパリでの国際武器見本市「ユーロサトリ」出展企業への申し入れも行なった。潜水艦の落選やユーロサトリへの大手企業の出展見合わせなど、武器輸出が必ずしも順調にいっていないことは事実だが、三菱重工に代表される「確信犯」企業が「死の商人」への道を決して諦めていないことも確かだ。

NAJATは三菱重工の株主に向けたチラシで「政治から経営を独立させ、軍需に依存せず、また海外に武器を売らないこと」を呼びかけた。三菱重工の経営陣が繰り返す「国策に従っているだけ」との安易な責任転嫁はもはや通用しない。

(杉原浩司・NAJAT代表、7月1日号)

明暗が分かれた6月、沖縄の宮古島市と石垣市――陸自配備の計画で市議会混乱

「市長は防衛省の職員なんですか」

6月20日、沖縄県宮古島市議会の傍聴席で怒号が飛んだ。今年3月は陸上自衛隊沿岸監視隊が与那国島に配備されたが、奄美大島や宮古島、石垣島でも配備計画が進む。防衛省や地方公共団体は有無を言わせぬゴリ押しの態度であり、住民は反発を強めている。

宮古島定例市議会(棚原芳樹議長)では20日、下地敏彦市長が陸自配備の受け入れを正式に表明した。来年度予算の概算要求(8月末期限)を視野に入れる防衛省サイドには好都合だろう。下地市長は以前から“配備ありき”の姿勢が目立っており、今年3月には市長と長濱政治副市長が、計画に都合わるい公文書の“修正”を作成側へ求めていたことも発覚した。

市に付託され、陸自配備が候補地・旧大福牧場周辺の地下水に与える影響を審議した市地下水審議会学術部会は3月3日、施設の建設・運用は「認められない」とする報告書案をまとめた。ところが下地市長と長濱副市長はこれを削除し、自分たちの文案をもとに修正を検討するよう中西康博学術部会長に打診。実際の報告書では、〈本件施設の建設・運用は以下の理由から、認めることができないとの学術部会委員6名中5名の意見の一致をみた〉とあったものが、市長側の文案では「理由から(中略)できないとの」までが〈懸念があることについて〉と書き換えられた。

また学術部会は〈本件施設で使用される、または排出される油脂、薬物等の地下水へのヒューマンエラー等による漏出が全くないとは判断しがたく、その漏出のある場合、水道水源地下水の水質を恒久的に汚染するおそれがあるため〉と根拠を示していたが、市長側は〈……場合を含め、水道水源地下水の水質を守るための方策を厳格に立てるべきである〉との文案を提示。その他の部分でも文言のさしかえや削除を要求した。

中谷元防衛相は6月21日、下地市長の“受け入れ”表明を「防衛省としては高く評価したいと考えております」などと述べた。だが宮古島市で陸自配備反対を求める市民グループ(てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会)共同代表の石嶺香織さんは、「沖縄防衛局には住民説明会のあり方についての要望を出して文書での回答を求めましたが、承りました、と答えただけ。要請の内容は説明会に反映されず、市民の質問にちゃんと答えなかった。丁寧に説明している、とは言いがたい」と言う。昨年5月11日、左藤章防衛副大臣(当時)が同市を訪れ下地市長に配備計画を説明したが、石嶺さんはこの後も「市長の発言は二転三転。こちらが記録していても平気で内容を覆します」と憤る。

2009年に初当選した下地市長率いる宮古島市政ではさまざまな不祥事が発覚しており、6月には「管理監督責任」として下地市長の給与減額(3カ月・20%削減)が市議会で提案されたばかり。今回の“受け入れ”表明も計画がほぼ白紙の状態でなされたものだ。

【石垣市は誘致請願不採択】

一方で渦中の石垣市議会(知念辰憲議長)では20日、陸自誘致を求める市民団体の請願が退けられた。ただしこれを、反対する市民の意見が聞き入れられた、などと楽観視することはできない。

20日の6月定例市議会最終本会議は「石垣島自衛隊配備推進協議会」(三木巌会長)の請願を与党の賛成少数で不採択とした。21人の市議のうち知念議長を除く与党13人から3人が退席、2人が反対にまわっている。この前に開かれた17日の総務財政委員会では与党賛成多数で請願が採択されただけに、本会議での不採択を「異例」「意外」とする声もある。注目したいのは与党の立場で反対した伊良皆高信市議の議会発言だ。伊良皆市議は陸自配備の「請願を白紙に戻し」「海上自衛隊の常駐・配備」「最優先配備」と強調した。事情通はこう読み解く。「そもそもなぜ陸自配備なのか。伊良皆市議は海自関係者に近いという話もある。与党分裂は市議会で繰り広げられた陸自と海自の代理争い、という見方もできそうです」。これが事実なら、なんと浅ましい話だろう。

(内原英聡・編集部、7月1日号)

安倍首相、公示日の演説は“争点隠し選挙”のために――被災地熊本と福島を政治利用

熊本城をバックに第一声をあげる安倍首相。6月22日。(提供/横田一)

熊本城をバックに第一声をあげる安倍首相。6月22日。(提供/横田一)

安倍晋三首相は参院選公示日の6月22日午前、4月の地震で被災した熊本市の熊本城前で第一声をあげた。集まった支援者150人を前に、自らの憲法改正への姿勢や緊急事態条項創設にもまったく触れないまま、安全保障政策における民進党と共産党との野党共闘をやり玉に挙げる“争点隠し演説”をしたのだ。

「共産党は地震の際にあれほど頑張った自衛隊を『憲法違反だ』と昨日も明確に言った。『(綱領で)将来、解散しろ』と言っている。こんな無責任な人たちに私たちは子供たちの未来を託すことはできない」

今回の野党共闘(統一候補擁立)は安保関連法制廃止などの政策協定に基づくもので、共産党の綱領とは無関係。ネガティブキャンペーンが“得意”の安倍首相は、現職の松村祥史候補の実績や熊本への支援にも触れつつアべノミクスの自画自賛をここでも繰り返した。

「野党はアベノミクスは失敗と批判ばかり」と反論した上で、安倍政権以降の有効求人倍率や最低賃金引き上げなど、自らに都合のいい数字を列挙。「暗く低迷した民主党政権時代に逆戻りするのか、アベノミクスを前に進めるのかを問う選挙」と位置づけたのだ。

しかし安倍首相は第一声で、熊本地震直後に菅義偉官房長官が議論の必要性を口にした緊急事態条項について語らなかった。復興に尽力する熊本市の男性職員(40歳台)は、こう話す。「大規模災害対応のために緊急事態条項が必要というのは、議論のすり替え。最初、菅さんの発言を聞いた時には驚くより、『こんなに大変なことになっているのに被災を隠れ蓑にするやり方があるのか』と腹が立った。しかも選挙になると、緊急事態条項や改憲を争点にせず、アベノミクスを詳しく訴える。経済政策で選挙に勝利、民意を問うてない改憲を進めるのは国民をばかにしている。恐ろしくも感じる」。

【森雅子議員復興予算人質に】

熊本での演説を終えた安倍首相は午後、福島に駆けつけ、郡山市と須賀川市で演説。しかし首相到着までの前座を務めた地元の森雅子参院議員から暴言が飛び出した。自民党現職の岩城光英大臣が当選しないと、復興予算減額になると被災者を“脅した”のだ。

「復興を前に進めるため、私たちの選択肢は岩城光英法務大臣以外は考えられない。復興最盛期に入り、まだまだ財源が必要な時期に、福島県から与党の国会議員を一人でも減らすことは考えられない。復興に水を差す、金を捨てる、ブレーキをかけることになる」

「与党議員落選=復興予算を捨てる(放棄)」と強調、復興予算を人質にした投票要請といえるが、岩城氏も「復興の加速化を止めません」と呼応した。

会場の雰囲気が高まったところで安倍首相が到着。「3年半前に政権奪還をして以降、復興が加速化。高台移転の8割の工事が完了し、常磐自動車道は全線開通した」と成果を訴えたが、福島県民の思いを無視して原発再稼働に邁進していることや緊急事態条項やTPPへの説明は一言もなかった。エネルギー政策については「2020年東京五輪は、福島で作った水素エネルギーを使いたい」と話しただけ。須賀川市での演説を聴いた地元住民(50歳台)は、呆れた。

「安倍首相は演説で『お母さんから人の悪口を言ってはいけないと言われた』と言いながら針小棒大な野党の悪口ばかり。熊本から福島に来たと自慢したが、被災地をネタにしただけ。外国人観光客が増えたと自画自賛したが、風評被害に悩む福島は蚊帳の外だ。福島原発近くを通り、いまだに放射能線量が高い常磐自動車全線開通を自慢するのも困ったものだ」

過去3回の国政選挙で繰り返した得意の“争点隠し選挙”を、今回の参院選でも始めた安倍首相。第一声を熊本と福島で上げることで被災者に寄り添う印象を与える一方、被災地が関係する緊急事態条項や原発問題など肝心の争点(重要政策課題)は語らない。被災地を自らの野望実現、改憲による緊急事態条項創設に政治利用している姿勢は一貫しているのだ。

(横田一と参院選ジャーナリスト集団、7月1日号)

学び合う「介護カフェ」開催――「介護保険は国家的詐欺」

「介護カフェ」。中央奥が藤原るかさん。6月18日、埼玉県所沢市。(撮影/西村仁美)

「介護カフェ」。中央奥が藤原るかさん。6月18日、埼玉県所沢市。(撮影/西村仁美)

参院選も近づくこの18日、埼玉県・所沢市で「出版フリーランス」のための「介護カフェ」(主催・ハイカイ倶楽部)が開催された。出版産業に携わるフリーランスのための労働組合「ユニオン出版ネットワーク」の自主活動サークルによるもの。親の介護を担う組合員もいて、介護そのものについて学んだり介護の悩みなどを語り合ったりしようというのが目的。

参加者はフリーランスの編集者やライター、校正者に加え、訪問介護員や介護福祉士と多彩。三部制の「介護カフェ」もまた盛りだくさんな中身となった。

講師を、訪問介護員歴約25年で、『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)の著者でもある藤原るかさんが務めた。

一部の講演では、「介護保険とこれからの超高齢化社会」がテーマ。介護保険がいかに国家的詐欺なものであるかを、自身の仕事での体験を交え紹介。合間には介護を体感する演習も行なわれた。二、三部では参加者らによる語り合いや、介護の悩みや疑問解決にあてられた。「親との二人暮らしで居宅介護をしている。入院中の母が自宅に戻ってきたときの、今後の生活が不安」「(施設で働いて感じるのは)利用者不在で働く側がその人の顔が見えていない。今の介護は年寄りの体を使って金儲けしているだけなのではないか」などの声が上がった。

前出の藤原氏は、「国は、介護の費用が膨大で高齢者への負担も一杯になっているとか言い、マスコミもそれを煽るようにして報道しています。ですが、介護保険給付費の総額約10兆円(2015年度)の国の保険料負担割合である25%、2・5兆円しか国は負担していません。今年度の政府予算96・7兆円の僅か3%しか使っていない! それなのに(介護保険対象の)生活援助サービスを削るなんてセコいことを言っている」と憤りつつ最後を締めくくった。

(西村仁美・ルポライター、6月24日号)