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さらなる改悪も考えられる盗聴法大改悪――大幅裁量認め警察濫用の恐れ

安倍晋三内閣は、1999年に多くの国民の反対を押し切って成立した盗聴法(通信傍受法)の大改悪を狙っている。すでに改悪法案が、刑事訴訟法改正案等と一本化されて参議院法務委員会で審議されているが、現在の盗聴法は、対象犯罪が(1)薬物(2)組織的殺人(3)密航(4)銃器の四つに限定されている。ところが政府が提出している改正案では、対象を一般刑法犯罪、窃盗や詐欺・傷害にも広げている。しかも、組織犯罪集団に限定するという縛りもない。

本来、国民のプライバシーや人権を公権力が侵す可能性のある盗聴は、対象犯罪を厳格に限定すべきだ。今回、もし改正が必要であったとしても、「オレオレ・振り込め詐欺」など組織的特殊詐欺を新たに五つめの対象犯罪に加えるだけで十分だったはずだ。ところがこの改正案では警察の大幅な裁量を認め、一挙に盗聴制度の濫用をもたらす恐れがきわめて強い。さらに法案では、盗聴に当たっての通信事業者の立ち合い義務が事実上廃止される。本来、盗聴については厳格な第三者機関の監視が不可欠だが、業者の立ち合いすら不要にされ、警察施設内で警察だけの盗聴が可能となる。

そもそも警察は、80年代に起きた日本共産党の緒方靖夫国際部長(当時)宅の電話盗聴事件すら、いまだに認めてもいなければ謝罪もしていない。そうした警察に盗聴のフリーハンドを与えたら、どうなるだろうか。警察は、続いて今秋にも、二人以上の者が具体的な「行為」に及ばないのに、犯罪を行なうことを話し合って「合意」したと見なされるだけで処罰対象とする、共謀罪の新設を狙っている。その際、警察が建物内に侵入し、盗聴器を仕掛ける「室内盗聴」も同時に合法化しようとする動きに出るのは間違いない。「共謀」が、電話・メールでのやり取りで行なわれるケースが多いからで、今回の大改悪が、さらなる改悪を招きかねない。

【日弁連「可視化」と取引か】

こうした事態に追い込まれた理由としては、以前は盗聴法成立時に反対していた日本弁護士連合会(日弁連)が、政府案に賛成の立場に転じた点が大きい。民進党も、こうした動きに引きずられた形だ。かつて日弁連は、盗聴法に反対していた。だが今や、冤罪防止のために警察・検察による取り調べの全過程の可視化実現が最優先されるべきとし、刑事訴訟法改正案には対象は限られるが、それが盛り込まれているとして、同法案を可決させるためには一本化されている盗聴法改正案も賛成する、という立場に転じた。だが、全過程が可視化されていなければいかなる供述調書も証拠採用しないという規定は、今回の法案に何ら盛り込まれていない。また法案は、栃木県の今市事件で示されたように部分可視化を利用し、違法捜査を隠蔽するやり方を認め、固定しかねない。この事件では、被疑者はまず商標法違反容疑で逮捕され、起訴されている。警察は起訴後に別件での勾留を利用して、殺人事件の取り調べを3カ月半もの間、事件を立件することなく継続した。これ自体、明らかに違法捜査だが、法案では商標法違反のような裁判員裁判対象ではない事件は、そもそも可視化義務がない。

しかも法務省の林眞琴刑事局長は4月14日、参議院法務委員会で、起訴後に勾留された被告人の別件起訴後の取り調べは任意捜査なので、録音・録画義務はないと答弁した。つまり今市事件のような違法捜査を是認し、この法案が成立した後も、警察は同じやり方をすると宣言したに等しい。

答弁について「起訴後も身体拘束下にあるから録音・録画義務はある」と解釈を改めさせることもなく、附帯決議でこうしたやり方に縛りをかけることもせず、全面可視化にはほど遠い法案を可決させるために盗聴法の大改悪を認めるという日弁連の姿勢は、どう考えても納得できるものではないだろう。このままでは警察による盗聴が野放しになり、可視化が逆に冤罪製造の手段に使われかねない。(談)

(海渡雄一・弁護士、5月20日号)

沖縄二紙は「本当に潰れたほうがいい」──自民党国会議員も出席した東京都内の「靖国集会」(内原英聡)

「『琉球新報』とそして『沖縄タイムズ』(注)という非常にこう、明らかにおかしな新聞が二社ございます」「本当に潰れた方がいい」――。

かながわ自民党の小島健一県議は5月8日、「沖縄県祖国復帰44周年記念」の「日本民族団結靖國集会」(同実行委主催・以下、靖国集会)に登壇し、冒頭の発言をした。

小島県議は「神奈川にも『神奈川新聞』という三流左翼新聞がございまして」と続け、「基地の周りには基地反対だとかオスプレイ反対だとか、もう毎日のように騒いでいる人たちがいます。これを基地の外にいる方ということで“きちがい”の方というふうに私なんかは呼んでおります」と述べると、会場は盛大な拍手と笑い声に包まれた。

「市民運動を隠れ蓑に堂々と反社会行動をしている方々が、沖縄二紙に守られている」。こう挨拶したのは自民党の長尾敬衆院議員(比例近畿)だ。昨年6月25日、党の文化芸術懇話会で沖縄メディアを「左翼勢力に完全に乗っ取られている」「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落だった」などと語ったことが問題視され、党からも厳重注意処分を受けている。

長尾議員は靖国集会で、「戦後わが国は沖縄に対してどのような措置を講じてきたのか」と問いかけた。そしてこう言及した。「米軍基地があるんだから、我慢してもらってるんだから、とりあえずお金だけ配っとけばいいんじゃないの、というような風潮がまったくなかったとは言わせません」「観光の名所、米軍基地があるところ、なんかとっても南国でのんびりとして楽しいところというようなイメージ」「沖縄もおそらくそれに甘んじていたんじゃないか」。

さらに憲法については、「基本的人権、権利、自由、こういったものを標榜する憲法のなかで現在の国柄をつくらざるを得ない環境になった」との見解を示した。「基本的人権」や「自由」を否定するかのような発言だが、長尾敬事務所(東京都)は、「義務なき権利、秩序なき自由等、行き過ぎた個人主義が蔓延した我が国の現状を憂える意であり、否定というご指摘はあたりません」と言う。

     目的は国連の勧告撤回

沖縄の日本「復帰」を記念するとともに、靖国集会は〈「国連先住民族勧告の撤回を実現させる国民の会」設立決起大会〉と位置づけられた。国連の人種差別撤廃委員会は2008年と10年に各1回、14年は2回にわたり、沖縄の人びとは「先住民族」だとして諸権利を保護するよう勧告している。

5月8日の靖國集会で登壇した自民党の宮﨑政久衆院議員(比例九州)。(撮影/内原英聡)

5月8日の靖國集会で登壇した自民党の宮崎政久衆院議員(比例九州)。(撮影/内原英聡)

靖国集会には政財界などから11人が登壇。長野県出身で九州比例選出の宮崎政久衆院議員(自民)は「遺伝学的な部分」を強調した出典不明の自説を論じ、「沖縄の人は紛れもなく日本人であります」と主張した。4月27日の衆院内閣委員会で質問に立った宮崎議員は、国連の勧告について「民族分断工作だ」としていたが、この「民族分断」がいったい何を指すのか実態は曖昧だ。

5月13日、小島・長尾・宮崎の三議員に次の質問への見解を訊ねた。

〈5月8日の靖国集会では、日本政府は先住民族としてアイヌしか認めていない、との見解が示されました。一方で集会の表題は“日本民族団結”とあります。
質問(イ)、「日本民族」の定義はどの資料又は文献で示されていますか。
質問(ロ)、「日本民族」が存在する場合、この集団は日本国における先住民族なのでしょうか。
質問(ハ)、先住民族であると議員が考える場合、政府見解との整合性について伺いたい〉

回答期限の16日、長尾敬事務所から「集会の趣旨に関しては、主催者にお問い合わせください」と消極的な文書がファクスで届いた。国会の宮崎政久事務所は「多忙」を理由に回答が間に合わないと返答。17日、小島健一事務所に質問書の確認をするとスタッフは、「小島のほうにはその旨伝えております」としつつ、回答の有無について小島氏は「何も言っておりません」とのことだった。

(うちはら ひでとし・編集部、2016年5月20日号)

〈注〉正しくは『沖縄タイムス』ですが、小島健一県議の発言通りに記述しました(下記動画の2分45秒すぎからが該当部分です)
https://www.youtube.com/watch?v=cnwWteGBl0w

熊本地震の被災者へ、福島の学生が募金呼び掛け

福島県のいわき駅前で募金活動をする学生たち。4月29日。(写真/白飛瑛子)

福島県のいわき駅前で募金活動をする学生たち。4月29日。(写真/白飛瑛子)

「私たちが東日本大震災で受けた恩を、今こそ返しましょう」――福島県いわき駅前や近隣スーパーマーケット前、いわき市在住の学生たちによる、熊本地震被災者への募金を呼び掛ける声が響いた。

「あの時支援してもらったものね」

募金箱にはお金が、学生たちには温かな声掛けや笑顔が向けられた。4月19日から10日間で30万円以上が集まった。募金活動をしたのは、同市の学生団体「いわき青少年ボランティアONE  STEP」のメンバーなど計21人の学生。その姿に勇気づけられたと、飛び入りで活動に加わる学生の姿も目立った。

同団体は、広島土砂災害(2014年)やネパール地震(15年)など、これまで国内外の被災地への募金活動をしてきた。中心メンバーの櫻井友香さん(17歳)は、「震災の辛さがわかるから何か行動をしようと思ったんです。それで、募金をしてくれた人の気持ちや人と人とのつながりも得られる募金活動を始めました」と話す。同メンバーの鈴木淑乃さん(17歳)は、「同年代の人が積極的に協力してくれたことが嬉しかった」と振り返った。

今回の募金は、活動をする中でつながりのできたNPO法人「れんげ国際ボランティア会」(熊本県玉名市)に送るという。同会は震源地の益城町や熊本市東区などで連日炊き出しをしている。被災地から被災地へ。支援の輪は広がっていく。

(白飛瑛子・在いわきライター、5月13日号)

 

ろくでなし子さん判決 デコまんは無罪も――性器に見えなければOK?

東京地裁の判決後、記者会見で「一部無罪」を掲げるろくでなし子さん(右から2人目)。(撮影/本誌取材班)

東京地裁の判決後、記者会見で「一部無罪」を掲げるろくでなし子さん(右から2人目)。(撮影/本誌取材班)

約1年、一審での裁判を闘ってきた漫画家・アーティストのろくでなし子さん。彼女の判決が5月9日、東京地裁(裁判長=田辺三保子)で言い渡され「一部無罪」となった。

無罪となったのは、ろくでなし子さんが作ったデコまん(まんこの型をデコレーションした)と、ろくでなし子さんが開催したワークショップに参加した女性が同じく自らの性器をかたどったものを東京都内にあるアダルトショールームに陳列したわいせつ物陳列罪。裁判所はデコまんについて「ポップアートの一種」だとした。

一方、有罪となったのは、自らの女性器の3DデータがダウンロードできるURLを支援者にメール送信したり、同データの入ったCD-Rを頒布したというわいせつ電磁的記録等送信頒布及びわいせつ電磁的記録記録媒体頒布の罪。3Dデータは「女性器を精巧に再現していてわいせつ物に当たる」とされた。罰金は40万円。このため、弁護団は即日控訴した。

「一部無罪」となったことは「画期的な判決」ではあるものの、あくまでも従来の枠組みを超えることのない判決であった。裁判官は無罪としたデコまんなどについては「一見して女性器には見えない」という判断を下した。この点について、ろくでなし子さんは「男性目線で扱われてきた女性器の常識を覆すために作品を作りつづけてきたけれど、その趣旨を裁判官に理解してもらえなかった。『一部無罪』が出たものの悔しい気持ちの方が大きい」と述べた。

また、デコまんが無罪となったことで、ろくでなし子さんの2回目(2014年12月3日)の逮捕・勾留の意味が問われる。

ろくでなし子さんは7月8日~20日、東京・新宿眼科画廊にて個展を開催する予定。「自分の無罪を信じているので、最後まで闘いたい」と語ったろくでなし子さん。闘いは今後もさまざまな場面で展開されていく。

(本誌取材班、5月13日号)

「日本会議」を解剖する

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「右翼の堕落は左翼の堕落によってもたらされた」と、たびたび右派論壇の人から聞かされた。なるほど、左翼と右翼はある意味で切磋琢磨する関係にあり、一方が没落すればライバルの他方もそれに合わせて衰えることは十分ありうる。

しかし、別の視点からも見なくてはならない。左翼の衰退を横目に、左翼の強みであった組織づくりのコツをしっかりとわが物にした右翼団体があった。その事実を忘れてはならないのだ。典型が、いまをときめく「日本会議」である。1997年の創設から約20年。いかに存在感を増したかは、閣僚の大半が「日本会議」と深い関係をもっている事実が明瞭に物語る。安倍晋三首相の強力な応援団であることは多くの人が知るところだ。

この日本最大の右翼団体と称してもおかしくない組織の特徴の一つは、活発に動く地方組織の存在である。自民党を中心に地方議員を取り込み、彼ら、彼女らを窓口にして地方議会に請願や陳情を繰り返す。この“実績”をもとに「日本会議」の要望を国政に反映させる。また、主催する集会に関係者を大量動員し、組織力を実体以上に過大にみせるノウハウももっている。60年代以降、左翼運動が得意にしてきた戦法を下敷きにしているのは間違いない。

「日本会議」のホームページ冒頭には以下のような文章が書かれている。

〈私達「日本会議」は、前身団体である「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」とが統合し、平成9年5月30日に設立された全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体です。

私達の国民運動は、これまでに、明治・大正・昭和の元号法制化の実現、昭和天皇御在位60年や今上陛下の御即位などの皇室のご慶事をお祝いする奉祝運動、教育の正常化や歴史教科書の編纂事業、終戦50年に際しての戦没者追悼行事やアジア共生の祭典の開催、自衛隊PKO活動への支援、伝統に基づく国家理念を提唱した新憲法の提唱など、30有余年にわたり正しい日本の進路を求めて力強い国民運動を全国において展開してきました〉

時代錯誤としかいいようのない「日本会議」には神社本庁やいくつかの宗教団体が関わっている。草の根保守を掲げつつ、安倍政権と二人三脚で改憲を目指すこの組織を過大評価も過小評価もすべきではなく、まずは、その実体を解剖することから始めなくてはならい。『週刊金曜日』はこれまでも同組織を取り上げてきたが、参院選を前に27日号で「日本会議」を特集。さらには単行本化も検討している。(北村肇・『週刊金曜日』発行人)

国家保安法違反に問われた韓国人元留学生を救えと――日本人が韓国の高裁で証言

大田高裁を出る渡辺氏(右から2人目)と孫被告の家族や弁護士。(撮影/徃住嘉文)

大田高裁を出る渡辺氏(右から2人目)と孫被告の家族や弁護士。(撮影/徃住嘉文)

韓国版治安維持法といわれる国家保安法違反で懲役3年の判決を受けた韓国の会社員孫正被告(42歳)を救うため、友人の札幌市、自営業渡辺一徳氏(56歳)が、拘束覚悟で韓国大田高裁に出廷し、無罪を訴えた。

孫被告は2002年から3年間、札幌大学に留学し、在日韓国人の飲食店主A氏(64歳)や渡辺氏と知り合った。帰国後も親交は続いたが昨年、突然逮捕された。国家保安法は、北朝鮮や朝鮮総聯などの反国家勢力を利する言動を広範に罰する。最高刑は死刑。

大田地裁判決によると、孫被告は、A氏が総聯幹部なのに、韓国の友人を札幌旅行に誘って会わせ、A氏の「北」シンパ作り工作に協力するなどした。

孫被告は控訴。弁護人が4月、札幌を訪れ(1)A氏は工作を担うような大物幹部ではなく零細業者(2)捜査当局はA氏に事情も聴かず立件するなど無理がある、などの証拠を集めた。

A氏は証人として出廷を希望したが、判決に沿うと主犯格で逮捕の恐れがある。渡辺氏も、総聯と無関係とはいえ、検察側証拠には、孫被告との隠し撮り写真があった。共犯とされる可能性は捨てきれない。それでも「日本人なら……」の一点に賭け渡韓を決めた。

4月25日の結審。高裁は、渡辺氏に傍聴席からの発言を認めた。7分の訴えだった。「いわれない罪を着せられている友人のため、私は沈黙することを拒否しここに来ました。孫君は北の独裁を賛美するような人ではありません。解放してください」

うつむいて聞いていた孫被告は、最後に、こう陳述した。

「こんなことになったけれど、私は札幌で友を得たことを後悔していません。友情は、法律を超えるのです」

判決は5月27日。渡辺氏らは救援会(TEL 011・642・8346)を作り署名を集めている。

(徃住嘉文・ジャーナリスト、5月13日号)

LGBT祭典に7万人超参加――ケネディ米国大使も登場

祭典に参加したキャロライン=ケネディ駐日米国大使(左から2人目)。(撮影/及川健二)

祭典に参加したキャロライン=ケネディ駐日米国大使(左から2人目)。(撮影/及川健二)

LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の日本最大の祭典・東京レインボープライドが5月7日、都内・代々木公園で催され、参加者は渋谷・原宿界隈を行進し、沿道にいる人たちに権利向上と理解を訴えた。開催は今回で5回目。

サプライズでステージに登壇し、会場を沸かせたのが、キャロライン=ケネディ駐日米国大使の参加だ。

イベントのロゴ入りTシャツに虹色のストールをはおって登場したケネディ大使は「ここでお話しする最初の駐日米国大使となって、ゴールデンウィークをレインボーウィークにするためにみなさんと参加できたことを誇りに思います」と述べた上で、10代のLGBTがイジメに遭い、成人のLGBTが職場で差別に遭っている現状を告発し、

「私たちは偏狭さや冷酷さと闘い、苦しんでいる人々に手をさしのべる」

「若者たちにはありのままに愛している人々がいることを知ってほしい。また、入院しているお年寄りに面会するパートナーが差別を受けることがあってはなりません。そして、誰もが愛する人と結婚できるべきです」

と述べ、同性婚の実現を訴えた。

例年、レインボープライドに参加しているキャンディ=ミルキィさんはケネディ大使の話を聞き、「年々、LGBTを取り巻く環境が改善していっているように思う。NHKラジオがニュースで、このイベントを紹介し、LGBTとは何かを解説するようにまでなった」と感慨深げに語った。

同イベントの来場者数は主催者発表で7万500人となり、過去最高になった。

(及川健二・日仏共同テレビ局France10記者、5月13日号)

衆参3分の2めぐり護憲と改憲の綱引き続く――憲法集会は参院選への危機感

左から岡田克也(民進)、志位和夫(共産)、吉田忠智(社民)、小沢一郎(生活)の各氏。(撮影/林克明)

左から岡田克也(民進)、志位和夫(共産)、吉田忠智(社民)、小沢一郎(生活)の各氏。(撮影/林克明)

5月1日発表の『朝日新聞』世論調査によると、「憲法を変える必要はない」が昨年に比べ48%から55%へ、「9条を変えない方がよい」は63%から68%に増えた。他の調査でも同じ傾向で、安倍晋三首相が声高に改憲を主張するほど反対世論が高まっている。

5月3日の憲法記念日は、千葉県松戸市で山田洋次監督の講演、北海道北見市や静岡県藤枝市では自民党改憲草案に絞った催しなど、活発な護憲集会が行なわれた。翌日以降も兵庫県伊丹市で「戦争法は廃止! 憲法改悪を許さない1000人集会」(主催:同実行委員会)が開かれるなど、日本列島各地でイベントが相次いだ。

規模が最大だったのは、東京・江東区の東京臨海広域防災公園で行なわれた集会「明日を決めるのは私たち 平和といのちと人権を!」(主催:5・3憲法集会実行委員会)だ。開始1時間前には、最寄駅のホーム、エスカレーター、改札口付近から駅前広場、集会場まで人が連なっていた。主催者によると5万人が集まったという。

集会の冒頭、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」の高田健氏は、「昨年の安保法制反対運動は、『政治文化を変えた』『新しい市民革命』と評する識者もいる。今日の集会を契機に2016年安保闘争を起こし、戦争法発動を止めよう」と開会を宣言した。なお、集会主催者らによる「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」は、現在、1200万筆を超えている。

101歳のジャーナリスト・むのたけじ氏は車椅子で登壇し、従軍記者として戦争を海外と国内で見た体験から、こう訴えた。

「従軍記者も兵隊と同じ神経になる。相手を殺さなければこちらが死んでしまう。道徳を維持できるのは、せいぜい3日間。食糧を奪い、女性を襲い、証拠隠滅のために火をつける。これが戦争の実態。

その結果、憲法9条という希望を得たのだ。それ以来、一人の戦死者も出さず他国の人を殺してもいない。これまで歩んできた道は間違ってない。この集会を見ても多くの女性が立ち上がっている。この場から新しい歴史が湧き上がっている」

集会にはさまざまな立場の人々が集まり、朝鮮高校の生徒たちも参加した。高校無償化から朝鮮高校だけが排除されたままで、政府が地方自治体に朝鮮学校への補助金を停止するように圧力をかけている。女子生徒は「北朝鮮が核実験をしたりするたびに私たちがヘイト・スピーチを受ける。でも、それに負けない強い人間になりたい」と決意を語った。

自民党改憲草案の特徴は、基本的人権の制限だ。最も被害を受けるのは在日をはじめマイノリティーの人々。彼らにとって憲法問題は目が離せないだろう。

【選挙の焦点は憲法問題】

今年の憲法集会が盛り上がったのは、7月の参院選の焦点が憲法問題だからだ。神奈川県座間市からやってきた元高校教諭の男性は、「安倍政治の正体がだんだんわかってきたから、多くの人が参加するのだと思う。夏の参院選挙で自公が勝てば、なんでもやってくるのでは?」と危機感を募らせる。

同集会には、岡田克也・民進党代表、志位和夫・日本共産党委員長、吉田忠智・社民党党首、小沢一郎・生活の党と山本太郎となかまたち共同代表が駆けつけ、憲法擁護と野党共闘で安倍政権打倒のために努力することを明言した。

4月24日投開票の衆院北海道5区補選は自民党公認候補が当選したが、従来なら与党が圧勝するはずのところ、「接戦にもちこみ、無党派層の7~8割が池田真紀さん(4野党統一候補)を支持したように野党共闘の成果が確実に出ている」(山口二郎・法政大学教授)という指摘は重要だ。

参院選32の1人区のうち21選挙区で野党共闘の合意ができており、共闘がどこまで進むかで命運が決まるだろう。

(林克明・ジャーナリスト)

【若手弁護士が寸劇で訴え】

5月5日、兵庫県姫路市の「憲法を守るはりま集会」では、「災害を口実にした緊急事態条項の憲法への創設は、独裁への道。きわめて危険」と、危機感に燃える若手弁護士たちが、寸劇「憲法が昏睡るまで」を、本邦初公演し、市民にアピールした。

演じたのは、明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)兵庫支部の面々。3年ほど前から、まずは楽しく憲法を知ってもらおうと、「知憲」活動の一環として、有志で「劇団あすわか・ひょうご」を結成、市民の集いなどへの〝出前公演”を重ねてきた。専門知識を活かし、「憲法ができるまで」を皮切りに、これまでに3本の作品を発表。脚本・演出から記録まで、すべてを自前で賄うのが特徴で、熱意と集中力で軌道に乗せてきた。

第4作目発表のこの日、登場した若手弁護士は、語り手や映像スタッフなども含めて、20人。“災害対策のプロ”と言われるベテラン弁護士も駆けつけて、舞台を見守るなど、厚い応援体制に支えられている。

今回の「憲法が昏睡るまで」は、自民党改憲草案とQ&Aがベース。災害やテロを口実にして国民の不安を煽りたて、憲法に創設した「緊急事態」条項を使って権力を内閣に集中させ、憲法を停止して国民の人権を制限する策動とそれに抗する人々の闘いを描く。30年後の近未来から2016年、さらには1955年まで戻って、改憲狙いの流れを描き出す「タイムワープ」の手法も駆使している。

今後、参院選までには、6月ごろ関西の法曹関係者の集まりで上演するほか、秋には日弁連のシンポジウムや各地弁護士会の催しでも、公演が決まっている。

(たどころあきはる・ジャーナリスト)

【公明、民進党に秋波】

一方、改憲をめざす「新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)」が、5月2日、東京・永田町の憲政記念館で開催した「新しい憲法を制定する推進大会」には、主催者発表で約1300人が参加した(サテライト会場含む)。

最初に97歳の中曽根氏が、「グローバル化の中で日本民族が民族たる意味を示し得るかどうかが、従前に増し大きく問われている」、「安倍内閣は憲法改正実現に取り組もうと挑戦。我々は大いに評価・支持し期待する。ただ世論は、改正の必要性は受け入れつつ躊躇もあり、依然、壁の厚さがある」と演説。

次に、自民党の小坂憲次元文部科学相は「憲法改正の国民投票で過半数の賛成を得られるよう、項目・条文を提示し発議させて頂く」と述べた。これは中山恭子参院議員(日本のこころを大切にする党)の「一括改正すべきだが、難しいなら緊急事態条項だけでもまず改正するのも一つの手だ」という発言と符合。賛同を得やすい“お試し”改憲から、という主張だ。

民進党の松原仁衆院議員は、(1)拉致をした北朝鮮に対し憲法前文の「われらの安全」を委ねられない、(2)愛国心をいかに書き込むかは極めて重要、などの理由を挙げ、「この憲法は改正されなければいけないと確信している。党内で同憂の士を募り頑張る」と語った。

公明党の斉藤鉄夫衆院議員は「衆参3分の2を得るため与党だけではなく、野党第1党も一緒に合意するという幅広い国民合意を作ることが大切ではないか。国民分断の国民投票にしてはならない」と、民進党の取り込みを主張。「先日、私の部屋を訪れた米国籍の高齢者に『日本国籍を取り、国民投票してから死にたい。生きてるうちに頼む』と言われ涙が出た」というエピソードも紹介した。「加憲」と言いつつ、改憲にノリノリだ。

この他、おおさか維新の会の江口克彦参院議員や経団連の小畑良晴・経済基盤本部長も登壇した。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、5月13日号)

「安田さんを守れ!」の世論を盛り上げるべき

4月19日のシンポジウム。登壇者は右から、雨宮処凛、志葉玲、新崎盛吾、野中章弘、川上泰徳、藤原亮司、篠田博之の各氏。都内。(写真/兼子草平)

4月19日のシンポジウム。登壇者は右から、雨宮処凛、志葉玲、新崎盛吾、野中章弘、川上泰徳、藤原亮司、篠田博之の各氏。都内。(写真/兼子草平)

4月19日、月刊『創』主催のシンポジウム「安田純平さんの生還を願い、戦場取材について考える」が都内で開かれた。

シリア現地取材を試みていたジャーナリストの安田純平氏が消息を絶ったのは昨年6月末。アルカイダ系のヌスラ戦線に拘束されていると見られていたが、今年3月16日に安田氏自身が語るビデオが公開され、注目を浴びている。こうしたなかで、安田氏を知るジャーナリストらが、戦場取材の意義といま何ができるかを語りあった。

アジアプレスの野中章弘氏は、「戦争の危険を察知して戦争を防ぐのがジャーナリストの役目であり、そのために権力を監視することが重要。それを遂行する過程で起きたのが、安田さんの事故だ」と明白に位置づけた。

では、何ができるかという問題だが、従来からの安田氏の意向を踏まえ、また、いたずらに動いて拘束者を利することのないよう「何もしてほしくない」というのはジャパンプレスの藤原亮司氏だ。

一方、安田氏をバッシングする意見もネットで流れていることから新聞労連の新崎盛吾委員長は、「国民の知る権利のために現地に行った安田さんへの攻撃はおかしい。反対に安田さんを守れ!という世論を盛り上げ、国が動かざるを得ないようにすべき」と訴えた。

(林克明・ジャーナリスト)

「君が代」不起立で再雇用拒否――棄却判決は人権感覚の差

東京地裁前で不当判決に抗議する原告ら。4月18日。(撮影/永尾俊彦)

東京地裁前で不当判決に抗議する原告ら。4月18日。(撮影/永尾俊彦)

卒業式の「君が代」斉唱で起立せず、職務命令違反で処分を受けたのに、同じ理由で定年後の再雇用を拒否するのは違法だとして3人の都立学校元教員が都に約1760万円の賠償を求めた裁判で、4月18日、東京地裁の清水響裁判長は、「職務命令より自己の見解を優先させたことが、再雇用選考で不利に評価されるのはやむをえない」として、請求を棄却した。

しかし、別の原告が訴えた同様の裁判で東京地裁(吉田徹裁判長)は昨年5月に都教委の裁量権逸脱を認め、都に賠償を命じ、東京高裁も支持した(都側は上告中)。

原告の渡辺厚子さんは、「昨年の判決は裁量権を切り縮めたが、今回の判決はフリーハンドを与え、裁量権濫用に歯止めをかけた2012年の最高裁判決以前に逆戻りした」と批判した。

また、原告の元教員は「昨年の判決は、『やむにやまれぬ』気持ちで不起立に至ったことを認めてくれたが、今回の判決は『職務命令に故意に公然と違反』とわざと悪いことをしたかのようで納得できない」と話した。

さらに、原告の永井みどりさんは、「私はカトリック信者。君が代は侵略戦争と神道の象徴なので起立できなかった。体罰などで減給処分を受けた教員も再雇用されているのに君が代不起立だけで不採用にするのはおかしい」と述べた。

澤藤統一郎弁護士は、「判決は『人事政策的見地からの当否の問題は残る』と都教委のやったことは相当ひどいと認めているのに違法とまでは言えないとした。行政を批判する勇気に欠けた判決。吉田判決と清水判決の差は裁判官として最も重要な人権感覚の差だ」と述べた。原告は控訴する方針。

(永尾俊彦・ルポライター、4月29日)