
「脱原発」展示物のブース。(撮影/編集部)
原子力エネルギーからの脱却を目指した「脱原発世界会議2012 YOKOHAMA」(ピースボートなどが主催)が1月14、15日の両日、横浜市で開かれた。計約1万2000人の市民が参加したほか、世界30カ国から専門家や市民活動家らが出席するなど、会場となった国際会議場のパシフィコ横浜には巨大な「脱原発」のエネルギーが溢れた。
初日の開会イベントでは、福島県郡山市から横浜市に母親と避難している富塚悠吏君(小学4年生)が「大切なのは僕たちの命ですか。お金ですか。子どもに原発はいらない」と、福島の子どもたちを今も被曝させ続けている政府・行政に問いかけ、多くの参加者の共感を呼んだ。
両日にわたり、研究発表や各地の反原発運動の報告など市民団体の55の自主企画を含む計112の多様な分科会が開催された。特に多くの参加者を集めた福島の現状を報告する「被害の実態と被ばく最小化への提言」と題した分科会では、パネリストとして「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の中手聖一代表が発言した。
同代表は、年間20ミリシーベルトという異常に高い数値が「安全基準」とされ、子どもの健康に不安を感じた親が「自主避難」しても補償らしい補償をしない政府のやり方は「棄民政策だ」と厳しく批判し、一刻も早い子どもたちの救済策実施を訴えた。
(編集部・成澤宗男、1月20日号)
韓国版「ツイッター」で北朝鮮当局のアカウントをリツイートした男性パク・ジョングン氏(二四歳、パク氏のアカウントは@seouldecadence)が一月一一日、国家保安法違反の容疑で逮捕された。
国家保安法は「北韓(朝鮮民主主義人民共和国)の工作員活動を規制する」ことを主な目的として、大韓民国が成立した一九四八年に制定された。しかし、長年の軍事独裁政権下では学術活動や言論、民主化運動への弾圧に用いられた歴史もある。
盧武鉉政権時代には廃棄すべきとの議論もあったが、結局見送られた。現在の李明博政権では再び摘発数が増加している。今回パク氏が嫌疑をかけられた理由はツイッターで「金正日萌え」「赤いシャツが好き」とつぶやき、また北朝鮮当局のアカウント@uriminzokのつぶやきをリツイートしていたことだ。
二〇一一年九月、ソウル江東区で写真館を経営していたパク氏の職場に、押収令状を持った警察官数人が現れ、パソコン、携帯電話などを押収した。数カ月にわたる出頭調査の中でパク氏は「すべて冗談だった」と主張したが、警察は「あなたは従北主義者か」「北の体制に賛同する意味ではないか」などと追及したという。
しかしパク氏が所属している韓国社会党は〇一年、「韓国の革新政党が北朝鮮に甘い」という批判から生まれ「反資本主義、反朝鮮労働党」のスローガンを掲げている、最も北朝鮮に批判的な政党だ。
一二月にはソウル市内で北朝鮮の宣伝ポスターを真似たビラをまき、仲間たちと企画した路上イベントでは「金正日万歳!」も叫んだ。主催側によると「金正日」は中学時代の友人の名前のようで、こうした“遊び”が検察の癪に障り、逮捕に繋がったと見られる。
今年、総選挙と大統領選挙を控えている韓国では、「事実上のネット検閲だ」と批判の声が上がっている。
(金成河・立教大学生、1月20日号)
ドイツの現大統領クリスティアン・ヴルフ氏(キリスト教民主同盟)の五〇万ユーロ(取引が行なわれた二〇〇八年のレートで約八二〇〇万円)不正融資関連で、氏の偽証が明るみになったのが昨年一二月。ところが話は「政治とカネ」のスキャンダルで収まらなかった。この偽証を第一報した大衆タブロイド紙『ビルト』の編集長らに対し、ヴルフ氏は発売前日に「記事を公にすれば法的措置をとる」といった脅迫まがいの電話をかけていたことが発覚したのだ。
ドイツ・ジャーナリスト連盟のヘンドリック・ツェルナー氏は「大統領の行為は彼がジャーナリストたちを甘く見ているということの証だ」と国内メディアのインタビューで説いている。
これを機にドイツメディアの関心が不正融資と偽証よりも脅迫事件の追及に傾きつつある中、『ビルト』の報道真意に対し疑問視する声もあがっている。ライン・ジャーナリスト事務所のカール・レェッセル氏もその一人で、ヴルフ氏が報道の自由を侵害したことを批判しつつも「『ビルト』のゴシップ中心主義を考えると、社会的な使命感から発表に踏み切ったと見るより、金儲けのための商行為と見るのが妥当」と、報道する側の姿勢を指摘する。
オンラインメディアやラジオで執筆・発言するジャーナリストのゾーニャ・エルンスト氏も『ビルト』の発行元シュプリンガー社と大統領とは本来良好な間柄だとしたうえで、「汚いやり方を常套とする『ビルト』を今回の件で報道の自由を守る旗手のように受け止めるのは果たしてどうか」と疑問を呈する。両者の“間柄”に鑑みると、『ビルト』側にヴルフ氏につけ込まれる隙がまったくなかったとは言いきれない。しかし問題の本質は国家権力が報道機関に対し不当な圧力をかけていたという点にあるはずだ。他の国内メディアも言論の自由を脅かす今回の事件を重く見ており、進退問題も含めて大統領批判を連日報じているが、任期途中での辞任者を立て続けに出したくないという政治的思惑から不問に付される可能性も高い。
(矢嶋宰・フォトジャーナリスト、1月20日号)
東京・江東区役所の「水辺と緑の課」は昨年末以降、竪川河川敷公園改修工事に際して野宿者の住むテント・仮小屋を除去するべく、行政代執行に向けて手続きを開始した。江東区は、「(強制的な)追い出しは行なわない」と明言したにもかかわらず、ここへきて話し合いも無視した強硬姿勢に転じた。
江東区は昨年一二月二二日に「弁明機会付与通知書」を、対象となる一六軒の小屋に配った。そのため、越年闘争明けの一月五日、当事者たちが法律家とともに弁明書を江東区長に提出。一人一人の居住と人権に関わる重大問題にもかかわらず、区長室は区長の不在を理由に話し合いに応じなかった(総務が代わりに受理)。
江東区では一二月一一日に、少年グループによる野宿者襲撃(暴行で肋骨を骨折し、所持品も強奪される)という事件が起きている。この件に関して江東区「水辺と緑の課」はもちろん教育委員会も人権推進課も、危機感も誠実さのかけらもない応対。こうした行政の姿勢と襲撃は無関係とはいえない。
一月一二日には「除却命令」が出された。除却期限は一月一八日の午後五時。このまま進むと、戒告書を経て行政代執行に向けての手続きになる。名古屋・白川公演(二〇〇五年)や大阪・長居/靫公園(〇六年、〇七年)、東京・渋谷宮下公園(一〇年)のような代執行を繰り返してはならない。
一方、国土交通省の「自然再生工事」による追い出しで緊迫する荒川河川敷堀切橋周辺では、昨年一二月以降も居住者のいる小屋の周囲にフェンスが張られ、重機を投入しての工事が続けられている。
一月一二日には、機動隊も出動して抗議の看板や猫小屋、畑などを強制撤去した。抗議する当事者や支援者に対しては、警察が罵声を浴びせて突き飛ばすなどの振る舞いが常態化している。
江東区竪川、荒川河川敷で起きている事態は、明らかに国際人権規約にもホームレス特別措置法にも違反している。一月二二日(日)には、江東区内で抗議集会・デモ(午前一一時 江東区文泉公園 亀戸駅北口)を予定。
(藤田五郎・山谷労働者福祉会館活動委、1月20日号)
橋下徹大阪市長が大阪府知事在任中、府庁舎移転用に購入したWTC(ワールドトレードセンター)ビル等への公金支出は違法だとして、松井一郎現知事に、橋下氏に損害賠償約九六億三〇〇〇万円を請求するよう求める住民訴訟が一月一二日、府民八二人によって大阪地裁に起こされた。
訴状によると、橋下氏は大阪城近くの府庁舎を、埋め立ての人工島である咲洲で、事実上の破産状態に陥っていたWTCビルへ全面移転させようと二〇一〇年六月、同ビルを約八五億円で購入。改装・一部移転経費など約一一億三〇〇〇万円も支出したが、昨年の東日本大震災で同ビルは(震度3にもかかわらず)三五〇カ所以上の補修を要するなど、耐震性への不安を露呈した。府民や専門家からも安全性・利便性・防災拠点としての問題点などが相次いで指摘され、同年八月に全面移転は断念された。
この間、府議会は二度にわたって移転案を否決しており、原告でジャーナリストの西谷文和氏は「耐震性など科学的調査もせず、議会を軽視した橋下氏の強引な手法は、首長の資質として大いに問題。被告席に座るべきは橋下氏だ」と批判。同じく原告で「おおさか市民ネットワーク」の藤永延代代表も「府市二重行政を省くための大阪都構想と言いながら、当人がこんな無駄遣いでよいのか。(WTCが立地する地は)軟弱地盤で災害対策本部も置けず、一部移転で府庁舎が交通不便の地との二カ所に分断され、非効率で、今後も巨額の赤字を生む」と強調する。
昨年一二月に住民監査請求を棄却した府の監査委員でさえ「大阪府は非常に厳しい財政状況にあり、今後も長期にわたり財政再建の取組みが必要であることに鑑み、府民目線に立った経費執行を徹底されたい」という意見を付け、苦言を呈している。
住民訴訟の第一回口頭弁論は三月頃と想定されるが、原告らは他の都道府県の在住者にもサポーター参加を呼びかけ、運動を全国的に広げる。
三月二日には「WTCビルの購入と庁舎移転に費やされた巨額の税金を橋下前知事から取り戻す会」(略称=WTC訴訟の会)の正式発足総会を兼ねた記念講演・決起集会を開催する方針だ。
(たどころあきはる・ジャーナリスト、1月20日号)
卒業式等の「君が代」斉唱時の不起立等を理由に、東京都教育委員会に懲戒処分された都の公立学校の教職員らが処分取消しなどを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は一月一六日、「減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」とし、一部の処分を取り消す判決を出した。
都教委は一〇・二三通達発出(二〇〇三年)後の卒業式等で、校長に起立等の職務命令を出させ、不起立やピアノ不伴奏の教職員を「地方公務員法違反」で、「一回目は戒告、二・三回目は減給、四回目以降は停職」と、累積加重処分。
判決はまず、〇四年春までの都立学校の被処分者中、一六七人が処分取消しを求めた訴訟で、特別支援学校教諭だった渡辺厚子さんについて、通達前の入学式での服装問題等による戒告に、通達後の不起立を加重した減給処分を、「重きに失し社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じた。しかし、戒告については「学校の規律や秩序保持等の見地からその相当性が基礎付けられる」との理由で、取消しを認めなかった。
だが、弁護士出身の宮川光治裁判官は「職務命令は憲法第一九条違反の可能性がある。不起立行為等は教育上の信念に起因するもので、その動機は真摯であり、いわゆる非違行為とは次元を異にする」などの理由で「戒告も是認できない」という反対意見を付した。 また、行政官出身の櫻井龍子裁判官は「給与本体の減額に留まらず退職金・年金等にも影響する減給」や「教壇に立てず生徒への影響大の停職」を「機械的に加重するのは、法の許容する懲戒権を逸脱する」との補足意見を付した。
次に、〇六年に停職三カ月の処分を受けた根津公子さんと同一カ月とされた河原井純子さんは、「分断判決」。河原井さんについては「過去二年度の三回の不起立のみを理由に停職にした都教委の判断は違法」と判じ、損害賠償請求は高裁に差し戻した。一方、根津さんは「通達前、校長の国旗掲揚強行に対し、引き降ろしたこと」などが「妨害行為だ」との理由で、停職を是認し、上告を棄却した。
判決後の記者会見で、河原井さんは「『不起立三回で分限免職』という大阪の条例化を踏みとどめる力になれれば……」と語った。
(永野厚男・教育ライター、1月20日号)

年初、本社前で宣伝再開する北港バス分会。(写真/田所明治)
大阪地裁による街頭宣伝禁止の不当仮処分決定を運動で打ち破り、会社側に仮処分申請自体を取り下げさせた建交労(全日本建設交運一般労働組合)北港バス分会(喜多幸男分会長)は、1月5日から大阪市旭区の本社前で、宣伝行動を開始した。
解雇・賃金差別など計5件を提訴した労組の宣伝活動に対し、大阪地裁民事一部が宣伝禁止の仮処分決定を出したのが昨年5月。これに対して組合側が保全異議を申し立て、審尋の進行中に会社自らが12月15日付けで仮処分申請そのものを取り下げた。
「労組の正当な宣伝活動を認めよ」という世論が広がり、不当決定を見直さざるを得なくなった大阪地裁は、逆転決定を回避する策として、会社側に「取り下げ」を働きかけたものと見られている。
これによって先の不当決定は取り消され訴訟自体がなかったことになるわけだが、解雇事件などを扱う地裁民事五部からも、労使紛争の一括解決をめざす和解提案が出されている。第1回和解交渉は1月17日の予定。
一方、東京地裁の街宣禁止不当決定と闘ってきた埼玉女子短大事件は昨年11月、東京都労委で双方取り下げの和解が成立し、これを受けた東京地裁も和解を提案。一連の宣伝紛争は労働基本権を守る形で終結した。東西とも、解雇撤回などの闘いは続いている。
(田所明治・ジャーナリスト、1月13日号)
コンビニエンスストア大手の「セブン-イレブン・ジャパン」(東京都千代田区)の加盟店店主らが同社に対し、公共料金・税金の収納代行業務や二四時間営業などのサービスを強要するのは独占禁止法の「優越的地位の乱用」に当たると訴えていた裁判で、東京地裁は二〇一一年一二月二二日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
福井章代裁判長は、セブン-イレブンの加盟店は「公共料金等の収納代行サービスを提供」「二四時間営業」といった認識は一般的に広まっており、業務内容についても「事前説明が為されている」等の判決理由を示した。
訴えていたのは宮崎や群馬など五県のフランチャイズ加盟店の経営者九人。原告の一人である永尾潤さん(四六歳)は判決について「労働現場の実態を抜きに、(コンビニの)イメージだけが先行してしまっている」と異議を唱えた。
本件の原告ではないが、群馬県でコンビニオーナーを務める男性はかつて、夜の勤務中にコンビニに入ってきた男から「殺すぞ」などと脅され、暴行をうけるなどの被害を受けている。永尾さんは「こうした例も現実にある。業務の改善を求めたい」と話した。
本件の結審後ではあったが、牛丼チェーン「すき家」を経営するゼンショーに対しては、警察庁が昨年、深夜の一人勤務態勢を改めるよう行政指導をしている。
原告らは控訴し、「すき家」などに見られる状況の変化について訴えていく方針だ。
(本誌取材班、1月13日号)
米国に普天間基地の辺野古移設計画が進捗している様を見せるため、野田佳彦政権が「年内提出」に固執した環境影響評価書(アセス評価書)。その山場となった昨年一二月二六~二八日、「基地の県内移設に反対する県民会議」は、沖縄県庁における評価書提出阻止行動を呼びかけた。
市民団体や県議団、沖縄選出国会議員を含む三〇〇人以上が庁舎内外で監視行動を行なう中、沖縄防衛局は郵送で送付したと発表した。しかし二七日、民間運送会社にアセス評価書を運ばせたものの、庁舎入口で県職員らに説得され、引き返さざるを得なかった。
「あと一日で年内提出を止められる。頑張ろう!」と解散した人々がまだ眠っている翌二八日午前四時過ぎ、沖縄防衛局は県庁通用口から守衛室に評価書を搬入した。
万が一に備えて通用口の近くに停めた車の中で仮眠していた県民会議事務局長の山城博治さんが物音に気付き、飛び出していって見たのは、段ボール箱を一つずつ抱えた二〇人ほどの防衛局職員と、それを指揮する真部朗局長の姿だった。「犯す前に犯すと言うか」発言で更迭された田中聡前局長に代わり、異例の再任となったばかりの真部氏は、東村高江で夜間や早朝の「奇襲」を繰り返し行なった常習犯だ。
山城さんらは「なんてことをするんだ、やめろ!」と叫んで止めようとしたが多勢に無勢。一六箱は守衛室に運び込まれてしまった(アセス評価書は七〇〇〇ページ。法令により二四部の提出が必要)。
号外を出した沖縄地元紙、NHKをはじめ全国メディアもこぞってこのニュースを報道。国家機関のコソ泥顔負けの醜態は瞬く間に知れ渡り、「奇襲攻撃」「闇討ち」「恥知らず」……ありとあらゆる悪罵と嘲笑の言葉が飛び交った。
なおも残りの評価書を運び込もうとする防衛局と県民との攻防が暮れも正月もなく続き、インターネットで情報を得た人々が自主的に集まり、守衛室前の冷たい廊下で“年越し座り込み”となった。
一月五日、防衛局は残りの八部を県庁に運び込んだが、二四部すべてに書類の欠落が見つかり受理要件を満たさなかった。六日、欠落分が追加提出され県は評価書を受理したが、仲井眞知事は評価書への知事意見に「県外移設」の公約を反映させる考えを示した。
(浦島悦子・フリーライター、1月13日号)
韓国で、辛口の政権批判が人気を集めているポッドキャスト(インターネットを使った音声の配信システム)の番組をめぐり、出演していた野党の元国会議員が公職選挙法違反で収監され、番組ファンなどから「言論弾圧だ」との批判が沸き起こっている。
公職選挙法に問われたのは、番組の出演者で元民主党国会議員の鄭鳳株氏(五一歳)。昨年一二月二二日に大法院(最高裁)で上告棄却となり、判決は確定。鄭氏は同月二六日、支持者たちに見送られながらソウル地検に出頭し、収監された。
これに対し、番組ファンのほか野党からも一斉に反発の声が上がった。韓国では今年四月に総選挙が実施され、鄭氏も有力な候補者として立候補が取り沙汰されていた。だが、収監によって立候補は不可能になる。一二月には大統領選も行なわれるが、李明博大統領の支持が低迷し「死に体」の様相を呈していることから、民主化運動を経験した四〇歳代以上から高い人気を得ている鄭氏が政権批判の活動を強めることに、ストップをかける狙いがあったのではないかとも言われている。
番組は「ナヌン・コムスダ(私はけちくさい奴)」とのタイトルで、昨年四月二七日に放送を開始。「私」とは李大統領を指す。元国会議員やジャーナリストら四人が出演し、李政権を批判する議論を展開。番組では軍事独裁政権時代に大統領に対して使われた呼称の「閣下」をあえて用い、李大統領を「カッカ」と言い換えて、徹底的にこき下ろす。韓国政治の問題点を指摘しながら「カッカはそんなことをする方ではありません」と皮肉るシニカルな内容で、放送開始直後から話題を集め、二〇歳代から四〇歳代にかけてファンが急増。「ナコムス」との略称で、広く知られるようになった。
毎週一回更新される番組のダウンロード数は、約二〇〇万にのぼる。昨年八月からはitunesのポッドキャストで、ダウンロード数の一位を記録し続けている。
鄭氏は二〇〇七年の大統領選で、当時ハンナラ党の候補者だった李大統領が、株価操作と横領に関わっていたと発言。虚偽の事実を流して選挙活動を妨害したといして公選法違反などの罪で起訴され、〇八年に一、二審で懲役一年の実刑判決を受けた(株価操作などの問題は、検察は李大統領の関与なしと結論)。
番組に出演する雑誌『時事イン』の記者、朱真吁さん(三八歳)は、鄭氏の収監について「政権批判の言論封じが目的なのは明らかだ」と語気を強めた。
実際に、番組が実際の政治に大きな影響を与えている。昨年一〇月に行なわれたソウル市長選挙で、野党統一候補の朴元淳氏が当選を果たした背景には、番組が積極的な支援に回ったことも要素として挙げられている。
朴市長は当選後、番組が開いた公開イベントに姿を見せ、支持に感謝を表し、会場から熱狂的な声援を浴びていた。また、世論調査機関「リアルメーター」が、市長選挙当日に番組の認知度を調査したところ、約六割が知っていると回答。市長選では、二〇歳代から四〇歳代の「反保守」の動きが朴氏当選のカギとなったとされ、民主党関係者は「反保守のムード作りに、ナコムスは絶大な威力を発揮した」と評価する。
一方、こうした動きに政権側は敏感な反応を示している。政府関係者は「(番組によって)若者層を中心に反政権の雰囲気が醸成されたのは確か。これが(大統領選の)一二月まで続く可能性もある」と、危機感を露わにする。
番組では、朱記者による李大統領の不正土地取得疑惑のスクープを紹介し、李大統領が批判を浴びて取引を撤回する事態に発展。政権側にとって「無視できない存在」(与党ハンナラ党関係者)となり、ソウル市長選前には同党の洪準杓代表が番組に出演し、政権や与党への批判に直接答えた。
鄭氏の収監後も番組は続けられ、野党の重鎮らが次々と番組に出演。人気も勢いが衰えていない。朱記者は「これからも国民の知りたいことを伝えていく」と話している。
(北方農夫人・ジャーナリスト、1月13日号)