週刊金曜日 編集後記

1482号

▼特集でとりあげた明治大学専門部女子部の歴史は興味深かった。1期生の一覧表を見せていただくと年齢・経歴・出身地が多様で、活気とやる気に満ちた教室が想像できる。女子部の出身者が幾つもの「女性初」の地位に就き、道を切り開いたことにも感じ入った。

 ただ、現役明治大学生によれば手放しで誇れないという。100年経っても残る「はて?」については特集に掲載したが、それ以外にも、大学で生理用品の配布をすることになったものの事務室などで学生証を見せて1日1個もらう形で、足りないし緊急時に間に合わないなどの指摘もあった。

 司法修習生時代に検察官任官の「女性枠」に「はて?」を申し立てた土井香苗さんも「改革が遅すぎる」と一喝する。本当に遅いし課題は山積み。「虎に翼」なら最強だが私たちに翼はないので、地道にできることをやるしかない。本誌もしぶとく社会課題への「はて?」を言い続ける。(宮本有紀)

▼毎日新聞社は、富山県内での配送を9月末で休止すると発表しました。特定の都道府県で配送を止めるのは初めてです。また『東京新聞』では、東京23区を除く地域での夕刊配達が8月末で終わります。紙媒体の衰退が止まりません。

 ネットやSNSで「ニュース」を読む人が増えているのが背景ですが、ネットでの元情報は、新聞やテレビ、雑誌などの発信がほとんどです。一次情報を出すメディアが衰退すると、民主社会の基盤自体が揺らぐことになります。

『朝日ジャーナル』最終特別号(1992年5月29日号)で、久野収氏は〈クオリティー週刊誌の生き延び、発展する領域は、生き生きとした先見性と批判性〉と喝破。鴻上尚史氏は〈「本当のところ、あれは何だったのか」という地道な、しかし野太い検証こそが、雑誌の役割〉と指摘しています。

『週刊金曜日』も部数減に苦しんでいますが、その潜在能力はまだ豊かだと思います。読者に満足いただける誌面作りに尽力します。お見守りください。(伊田浩之)

▼NODA・MAPの公演「正三角関係」を観に行った。ずいぶん前から作・演出の野田秀樹氏が今の社会のあり方に危機感を持っていることは感じているが、今回も相当なものだった。それでも、という言い方はおかしいが、チケットがなかなかとれないくらい人気なのは、野田氏の「語り口」が今の若者の感性にも届いているからだろうか。観劇後、本誌のあり方や蓮舫氏のことが頭をよぎった。

 都知事選での敗因の一つは、既成政党の「言葉」が無党派層、とくに若者へ届かなくなっていることなのだろう。象徴的なのは選挙後、蓮舫氏支援の市民連合が「変えたいのは政治だけでなく、こんな選挙結果が出てしまう社会」と投稿、すぐに削除したようだとネットに出ていたことだ。一方で中身はともかく、石丸伸二氏はネットを駆使し「政治」のイメージを変えた。投票した若者を批判する前に、自分自身を振り返ることから始めたい。(吉田亮子)

▼「石丸伸二どう思う?」。都知事選よりずっと前から、何度もこの問いを受けてきた。最初は耳を疑った。テレビ・新聞を見ない、情報は専らネットから得ることが共通する私と同じ30代の仲間たちは、政治に無関心で首相の名前も知らないが「安芸高田市長の石丸さん」はよく知っている。彼らの日常に、SNSや動画で発信する「石丸さん」が浸透し、親近感を持たれていることに焦りを覚えた。

 だから、選挙結果に驚きはない。候補者との接点の有無が最も結果に寄与したのではないか。

 選挙の主戦場が変わりつつある中、ネット社会では過激な発言や他者を攻撃する発言が閲覧数を増やしている。知名度を上げるためなら何をしてもいいという風潮が増すばかりだ。社会の分断と格差が拡大し、民主主義の根幹であるはずの他者や異なる意見の尊重を揺るがす不寛容な風が吹き荒れている。まだ間に合う。この風に抗う行動を模索したい。(上野和樹)