国連科学委に抗議文を提出――福島被曝の実態を過小評価
2013年11月15日2:50PM
国際環境団体のFoE Japanや「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」など六四団体は一〇月二四日、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(ウォルフガング・ワイス委員長)が国連総会に提出を予定していた「福島報告」について、「現地調査もせず、実態を反映していない」とする抗議声明を発表した。
同委員会は一〇月二五日、開催中の六八期国連総会に、福島第一原発による放射線被曝の程度と影響に関する調査報告書を提出。日本の各団体はこの内容を事前に入手した。
問題とされたのは、「一般市民への被曝量は、最初の一年目の被曝量でも生涯被曝量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い」、「福島県の成人の平均生涯実効被曝線量は一〇mSv(ミリシーベルト)以下であり、最初の一年の被曝量はその半分か三分の一であると推定する」など根拠が曖昧な楽観論を振りまく記述。
これについて抗議声明は、同委員会が「福島原発事故後、原発事故周辺地域に公式の事実調査に訪れたことは」ないことから、報告書は「(情報開示の姿勢に重大な問題がある)日本政府、福島県等から提供されたデータのみに基づいて」一方的な予測をしていると批判した。
問題の背景には、国連科学委員会が原発事故の影響調査を実施するにあたり、日本政府内で協力するチームが組織され、放射線医学総合研究所の米倉義晴理事長など、大半が低線量被曝の危険性を無視する「原子力ムラ」の御用学者で構成されている事実がある。
ワイス委員長はドイツ連邦放射線防護庁(BfS)長官だが、同報告書に関してドイツ放送局3satは「チェルノブイリ事故の時と同じような『無害化』が見て取れる」との専門家の意見を紹介し、原発事故の影響を過小評価しているのではとの疑問を投げかけた。
(成澤宗男・編集部、11月1日号)