多くは絶滅危惧種に指定――西友、種類不明のうなぎ販売
2013年11月6日4:40PM
大手スーパーマーケットの西友が、「うなぎ」が絶滅危惧種になっているにもかかわらず、種類を把握しないまま一部商品を販売していたことが明らかになった。日本国内で消費される「うなぎ」は、九九%が「ニホンウナギ」または「ヨーロッパウナギ」で、ともに絶滅危惧種に指定されていることから、種類表示を義務付けする声なども上がっていた。
国際環境保護を促進するNGO(非政府組織)グリーンピースが、国内大手スーパー五社(イオン、イトーヨーカドー、西友、ダイエー、ユニー)一一店舗の計三〇サンプルを対象に行なった調査で明らかになった。うなぎの仕入・販売の実態を把握するため、各店頭で販売されているうなぎのDNA検査などを実施した。
種類が把握されないまま販売されていたのは、西友・下高井戸店(東京都世田谷区)で販売されていた「即席きもすい」。サンシャイン・西友店(東京都豊島区)で販売していた「うなぎ長焼」については、グリーンピースが西友に種の確認をしたところ「ニホンウナギ」と回答があったものが、DNA検査の結果「アメリカウナギ」であったことも判明。ずさんな商品管理が露呈した。
これに対して西友本社の企業コミュニケーション部担当者は、「即席きもすい」については「種の特定ができていないため、店舗在庫終了を以って終売」と回答。「ウナギ長焼」については「ニホンウナギ以外の販売を検討する中で、アメリカウナギに切り替えを行なっていた商品であり、質問に回答する際に商品情報を十分に確認せぬまま誤答してしまった」とした。
今後は、種の特定ができて流通経路を追跡できる魚介類を原料とした商品のみを取り扱うとする、調達方針及びトレーサビリティ体制の強化を約束した。ただ、西友が代替商品として販売する「アメリカウナギ」も現在、深刻な状態にある。調達対象を単純に代替他種へ移行することは、絶滅の連鎖を続けるだけで根本的な解決策にはならない。
【調達方針が改善】
一方、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危険性が最も高い種に指定され、ワシントン条約の対象種にもなっている「ヨーロッパウナギ」の調達において、大手スーパー各社の方針に改善がみられた。
今年七月の時点では西友は同種を取り扱わない方針を明らかにしており、イオンは同種の取り扱いが実質ない状態だった。これに加え、今回新たにダイエーとユニーが、同種を今後調達しない方針を表明。「次年度の取扱いについては未定」としているのはイトーヨーカドーのみとなった。
今回の調査を通じては、各社とのやり取りの中で、考え方や姿勢に大きな違いを感じた。魚介類の持続可能性の追求から五社中最も遠いところにあるイトーヨーカドーが、私たちとの交渉に準備した窓口は、お客様相談室のマネージャーだ。作り笑いの物腰柔らかなその対応は、いかにこの場を丸く収められるかという観点からの話し合いで、残念ながらこれでは、どのように次世代の海と食卓に魚を残せるかを真剣に検討する交渉にはならない。
一方で問題を重要視し解決へと動き出そうとしている他四社は、品質管理や水産調達を統括するマネージャーや広報担当者など、水産知識と直接影響力のある立場の担当者がずらりと交渉の席に着いた。西友においては執行役員が交渉の場の中心だ。このような企業の調達方針やトレーサビリティ体制が強化されていくことが重要だ。
スーパーは多くの消費者の声に敏感であるためグリーンピースでは、「安心して魚を買いたい・食べたい」という消費者の声を届けるオンライン署名を展開している。署名は調査対象の大手スーパー五社および業界団体に提出する予定だ。現在八〇〇〇筆を超える署名が寄せられている。署名はホームページ(URL http://www.greenpeace.org/japan/susea2/)から参加できる。
(花岡和佳男・グリーンピース・ジャパン、10月25日号)