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小沢一郎裁判で問われる司法の独立――「推認」に込めた小沢流の皮肉

2011年10月24日10:12AM

検察の“狙い打ち”に、強気の姿勢を崩さない小沢一郎民主党元代表。(撮影/畠山理仁)

 一〇月六日、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表の初公判が、東京地裁一〇四号法廷(大善文男裁判長)で開かれた。

 傍聴席はわずか四九席。傍聴券抽選会場となった日比谷公園には、早朝から報道各社が動員したアルバイトを含む二一四六人が集結し、地裁裏手には生中継用の特設テントが設置されるなど、世間の高い注目が集まった。

 この日の法廷で、小沢氏の弁護団は「全面無罪」を主張。小沢氏自身も法廷に立ち、自ら意見陳述を行なった。

「(検察官役の)指定弁護士の主張は、検察の不当、違法な捜査で得られた供述調書を唯一の根拠にした検察審査会の誤った判断に基づくものにすぎず、この裁判は直ちに打ち切るべきであると考えます。百歩譲って裁判を続けるにしても、私が罪に問われる理由はまったくありません」

 小沢氏は閉廷後に衆議院第二議員会館で開かれた記者会見でもこの陳述書を読み上げ、改めて自身の潔白を主張した。

 小沢氏は用意した陳述書の原稿をめくる際、何度か読むスピードを緩めた。しかし、それとは別に、明らかに自らの意志で大きく息を吸った部分がある。

「この捜査は、まさに検察という国家権力機関が、政治家・小沢一郎個人を標的に行なったものとしか考えようがありません。

 私を政治的、社会的に抹殺するのが目的だったと、……『推認』できますが、明確な犯罪事実、その根拠が何もないにもかかわらず、特定の政治家を対象に強制捜査を行なったことは、明白な国家権力の濫用であり、民主主義国家、法治国家ではとうてい許されない暴力行為であります」

 小沢氏が大きく息を吸ったのは、「推認」という言葉を発する直前のことだ。これは明らかに裁判所に対する皮肉だろう。

 小沢氏の初公判に先立つ九月二六日、同じ東京地裁(登石郁朗裁判長)で小沢氏の元秘書三人はいずれも執行猶予付きの有罪判決を受けている(元秘書三人は翌日控訴)。その判決で多用された「推認」という言葉を、小沢氏はあえて盛り込んだのだ。

 小沢氏の「怒り」と「皮肉」は記者との質疑応答でも見られた。

 会見で『共同通信』の記者から「国会での説明責任」を問われると「君はどう考えているの? 司法の公判が進んでいる時、他の立法権やその他のことをいろいろと議論すべきだと思っているの、あんたは? あんたの見解は?」と顔色を変えて逆質問。記者が「司法手続きも国会での説明も重要だと思います」と答えると、「三権分立を君はどう考えているの? 司法は法と証拠に基づいて判断する場でしょ? それがいろいろな力や感情によって結果が左右されることになってはいけないから司法は司法で独立しているわけでしょ? もうちょっと勉強してからまた質問して下さい」と記者をたしなめている。

 四億円の原資についても、「原資は私のお金です。詳しく聞きたければ検察に聞いて下さい」と、一年以上にわたる強制捜査の末に小沢氏を不起訴とした検察、そして検察からのリーク報道に頼ったマスコミを批判した。

 この裁判の争点には、「検察審査会の議決による強制起訴の有効性」も含まれる。実際、検察審査会メンバーの平均年齢が二度にわたって訂正されるなど、不可解な「謎」は残されたままだ。

 また、元秘書・石川知裕衆議院議員の公判では、石川氏が保釈後に受けた東京地検の取り調べの様子を録音した内容が書面で提出され、東京地裁が「取り調べに威圧、誘導があった」と判断し、検察官が作成した調書を証拠採用しなかった経緯もある。

 一四日の公判では、ICレコーダーに録音された音声が法廷で再生される。これまで秘密のベールに包まれてきた検察の捜査が生々しく「可視化」される瞬間だ。

 判決予定は来年の四月下旬。裁判所は「法と証拠」に基づき、どんな判断を下すのだろうか。要注目だ。

(畠山理仁・フリーランスライター、10月14日号)

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