東日本大震災から一年

■巻頭言に変えて 本誌編集長 平井 康嗣■震災で吹き出した歪み 殺されゆく弱者 非常時に表れる差別意識辛淑玉災害などの非常時、最もしわ寄せを受けるのは最も弱いところである。障がいを持つ人、日本語の通じない外国籍住民、子ども、女性、高齢者……日常に潜む差別意識が被災時には噴出し、新たな悲劇を招くこともある。大震災後、被災地に通った筆者が見たものとは。■復興、いまだ遠くとも 息めために笑顔を 写真・文 冨田 きよむ震災からほぼ一年、かつて訪ねた被災地に再び立つ筆者の目に映った光景。復興がいっこうに進まない中で、女性たちが見出す自分たちの時間。すべてが流され壊された中から、それでも人びとは立ち上がろうとしている。■10年間で23兆円の予算 復興庁は、巨額利権の調整官庁か まさの あつこ大震災の復興には一〇年間で二三兆円の巨額予算が見込まれる。その窓口となるのが復興庁だ。だがその裏舞台は、事務次官会議が司り、各省庁が事業予算と期限を確保し、官僚の掌で利権を分配するかつての手法が横行しそうな気配もある。要注意だ。■境界線上を走れ 3 村崎太郎 上 文 藤井誠二 写真 佐藤類もちろん被災者の皆さんを元気づけたい気持ちはある。でもぼくにとっては、猿まわし芸の原点を見つめ直す旅でもあるんです。たくさんの人が死に、家を失い生活を奪われた極限状態のなかで人間ははたして笑うことができるのか。笑ってはいけないような状況のなかで猿まわしが笑いを生むことができるのだろうかと……。■座談会 ボランティアのこれから 野田沢/藤原志帆子/合田茂広「何か役に立つことがあるはず」。東日本大震災直後からたくさんの人が被災地へと向かった。ボランティアとともに活動し、被災者と向き合った3人が、この1年を振り返り、今後を語り合った。感動を紡ぎだすのがボランティアじゃない?フツーの私たちが、被災地を応援していく仕組みづくりを。とにかく被災地に行き続けること。それが復興の手助けに。

  • 格闘する思想  本橋哲也篠原雅武「帝国」による均質化が進み、伝統的な生活世界を圧倒する。だが篠原はそこに別の現実-荒廃をみる。打ち捨てられた空間を、再びわれわれの生に取り戻す術はあるのか-篠原の真摯な問いかけは、未曾有の震災を体験したこの社会の、ひとつの希望へとつながる。荒廃する空間に、いのちの痕跡を辿る荒涼、弛緩、停滞などの言葉のほうがふさわしい、そういった質感をもつ空間が、現代においては着実に増大しつつあるのではないか。(『空間のために』)ゲートによって囲い込まれた自足した生活世界は想像力の働く余地をいまだに除去したままであるのに対し、その外の、綻びつつある世界においては、空間的な想像力の奪還が始まりつつある。(『空間のために』)
  • 連載 数字が見抜く理不尽ニッポン  第十回(最終回) 金持ちに1%の富裕税を課せ! 武田 知弘税金は本来、あるところからとるものだろう。ビンボー人や弱者からもまんべんなくとる消費税は、社会から公平性や健全性を奪い、不幸を量産する。「富裕税」の創設こそ、ニッポン再生の切り札だ。
  • 福島だより 8 本気で子どもを守る気、ある?  境野米子福島県は必死になって農水産物の特定をしています。対してそれ以外の県は? 国は? メーカーは?今ごろ椎茸から高濃度検出なんて、怠慢としか思えないのです。一年前、動物たちの身に起きたこと
  • 一年前、動物たちの身に起きたこと  写真・太田康介福島第一原発周辺に住む動物たちに起きたこと、忘れないでほしいのです。二〇キロ圏内の記録『のこされた動物たち』から、一年前の光景をご紹介します。
  • 飲水思源 文化の仕掛け人 徳間康快  第9回 真善美社専務取締役読売新聞を追われて失意の日を送っていた徳間康快。そんな徳間を迎えたのは『民報』を創刊した国際ジャーナリストの松本重治だった。戦時中、最後まで日中和平の希望を捨てなかった松本もまた徳間に大きな影響を与えた。
  • メディア仕分け人  北原みのり読者が見たいものを創作してまで出す『文春』木嶋佳苗被告の裁判で唖然とする日々です
  • ほんの数行 82  ローカル・カラー/観察記録 和田 誠

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