ルポの時代

■タブーを打破するルポを 佐高 信 ルポとは端的に言えば「べき」の登場しない文章である。「何々であるべき」と「べき」の多用されるそれは、押しつけの自己満足に過ぎず、著しく説得力に欠ける。 足を使って取材し、事実を発掘して事実に語らせるルポは、思想的に反対の者をも揺り動かさずにはいない。「べき」は、「私はそうは思わない。考え方が違う」と言われたら、それで終わりだが、事実に対しては、そうは言えないのである。 ルポによってタブーに挑戦する。これが本誌のめざす方向だろう。

  • 創価学会の失われた一〇年 古川 琢也「『公明党に投票してくれ』とはどうしても言えなかった」。「平和」と「福祉」を看板に掲げた宗教団体「創価学会」のある青年部員はこう漏らした。権力の中枢にたどり着いて一〇年。「連立」という枠組み維持を優先した教団は、大きな「喪失」をした。選挙のたびに最前線で支えてきた学会員たちに、この一〇年間はどう映っているのか。
  • 徴兵歴ナシ。「保証金」、六〇万円ほど。韓国からやってきた新聞奨学生 雨宮 処凛一九歳の“イケメン”韓国人青年。都下の語学学校に通いながら新聞販売店で働く。ライブハウスが二つしかない故郷の町から「やってらんねー」とソウルに出てきたが、「兵役免除」の身を雇ってくれる先もなく、ブローカーを通じて日本へ。仕事は過酷。でも、――。
  • 70年代の光と影 シリーズ11973『神田川』と過ぎ去った季節の追憶 成澤宗男何かが終わり、そしてその後に何かが始まった――。政治の熱い季節が過ぎ去った後に迎えた七○年代を語るとき、私たちは往々にしてこのように表現しがちだ。だが実際にそこで何が目撃された何が語られ、いかなる理念が生みだされたきたのだろうか。現在までも明確な総括をなし終えぬまま、人々はこの時代が残した多すぎてかつ大きすぎるさまざまな残影を引きずり続けて、二一世紀の二度目の一○年代をやがて迎えようとしている。いま、「回答」という名の終着駅がない思索の果てしない海路へ、読者を誘う。懐古に留まらない、現在と未来をも洞察する手がかりを求めながら。
  • 無料低額宿泊所SSS体験記これが宿泊所ビジネスだ 山野雅紀仕事がない人やホームレスを住まわせる無料低額宿泊所。生活保護費から住居費や食事代の名目で天引きして利益を上げる「貧困ビジネス」が少なくないとされる施設だ。大手のS.S.S(特定非営利活動法人)に体験入所した筆者が実態を伝える。◆無料低額宿泊所は減らすべきなくすべき事業 藤田孝典
  • “ありのまま”でいられる「学校らしくない学校」宮澤保夫 星槎グループ会長 山岡 淳一郎「人を排除しない」「人を認める」「仲間をつくる」。この信念を体現し、学校教育から退けられた子どもたちに「居場所」を提供している私学「星槎グループ」。「学習障害」という言葉がまだ知られていなかった二五年前、子どもたちの個性やその驚異的可能性に気づいていた宮澤保夫は、それぞれの能力を活かし、学ぶための「場」を築いた。偏差値を重視する勢力からは異端視されてきた宮澤の人間観が、星槎の教育現場にあらわれている
  • 本多勝一ルポ再録戦場の村 第八部 解放戦線アイヌ民族の現在 時代を揺るがす長編ルポを数々執筆してきた本多勝一編集委員。かけだし記者時代から取材メモ代わりに使っている大学ノートは現在二七九冊目という。これまで発表された膨大なルポのなかから一部をここに再録する。「戦場の村」はベトナム戦争を取材し、民衆の生活を迫真力ある筆致で描いたもの。もう一つは「アイヌ民族の現在」。昨年六月、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が衆参両院本会議において全会一致で可決されたが、本多編集委員は半世紀近く前からアイヌ民族に関心を寄せ続けている。
  • ベルリンの壁 ◆甦る記憶 東川光二

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