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「重慶大爆撃裁判」高裁判決 「加害」認めるも地裁の請求棄却を支持

「弾劾不当判決」の旗を掲げ、霞ヶ関を歩く、重慶大爆撃裁判原告・支援者ら。(撮影/鈴木賢士)

12月14日、寒風にもめげず、裁判所を出て官庁街を回る霞ヶ関デモは、「弾劾不当判決」の旗を掲げ、こぶしを突き上げる怒りの叫びと涙にあふれていた。この日の重慶大爆撃裁判で、東京高裁の永野厚郎裁判長は、旧日本軍の空爆による加害と被害の事実を認めたものの、被害者と遺族243人の謝罪と賠償を求める訴えを退けた。

日中戦争のさなか首都南京が攻略され、戦時首都となった重慶と四川省各地に対して、1938年から5年半に及んだ重慶大爆撃。およそ200回の無差別爆撃で死傷者は10万人、家屋と店舗を消失したのは100万人にのぼる。今回海を越えて裁判に駆け付けたのは原告9人、支援者を含めて31人。前回のデモまで元気に歩いていた陳桂芳さん(85歳)、簡全碧さん(79歳)の2人の原告女性が、終始支援者の手を借り、車いすに変わっていた姿が痛々しい。

判決後の記者会見で、粟遠奎原告団長(84歳)は「加害の事実は認めたが、謝罪と賠償は認めなかった。不当で傲慢な判決です。失望した」と糾弾。判決前、裁判所の門前で「正当で公平な判決を心から望む。歴史問題に正しく対処することにより、中国と日本の人々の間は、長く友好関係が発展していく」と期待を語っていたが、期待は裏切られた。直ちに上告の意思を表明し、「この問題は次世代に残し引き継がせていく」と言い切った。

裁判を支援する軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、「東京をはじめ日本が受けた空襲被害の前に、重慶に対して日本が行なった無差別爆撃は、中東だけでなく今に続く、今日の出来事。闘いはこれで終わりではない。明日の平和を構築するためのスタート」と発言。問われているのは裁判官・政府だけでなく、日本人一人ひとりではないか。

(鈴木賢士・フォトジャーナリスト、2017年12月22日号)

詩織さん「準強姦」事件で検察審査会が黒塗り文書開示 検審はブラックボックスか

「判事名、検事名」が黒塗りにされた文書。(提供/健全な法治国家のために声をあげる市民の会)

ジャーナリストの伊藤詩織さん「準強姦」事件のもみ消し疑惑で、性行為自体は認めている元TBS記者を「不起訴処分相当」とした東京第六検察審査会は12月13日、文書開示を求めていた「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(八木啓代代表)に対し、肝心の議事録などは「不開示」としたものの一部の文書を開示した。

逮捕直前に当時の中村格警視庁刑事部長(現・統括審議官)が執行停止を命じた異例の事件であったにもかかわらず、東京第六検察審査会は9月21日、「不起訴処分は相当」とする議決をしたが、そのA4判1枚の「議決の要旨」には議決の理由などが一切書かれていないことから、「市民の会」が9月29日付で複数の行政文書開示を求めていた。

八木代表は「審査会でどのような証拠が出され、それについてどのような説明があり、どんな議論がなされた上で『不起訴相当』になったのかがまったく不明です。しかも、審査の中で法律的なアドバイスをし、議決書作成を手伝うはずの補助弁護士の名前も記載されていません。少なくとも13年4月19日に出された、陸山会事件に関わる検察官の虚偽有印公文書作成・同行使事件のときの『議決の要旨』はA4判で14枚あり、判断の理由などが書かれていました」と話す。今回は判断理由が一切不明で、補助弁護士の立会もなしに議決が行なわれた疑いもある。

一方、12月13日に部分的に「開示」された「検察審査員及び補充員選定録」などの手続き文書だが、八木代表はその選定録を見て驚いた。「これまで公開されていた立ち会いの判事と検事の氏名が黒塗りでした。理由を聞くと『自筆署名なので個人情報とみなし、今回から不開示とした』と。公務員なのに非公開はおかしい。不透明さがさらに深まったと言えます」と八木代表は語る。公務での署名は本当に個人情報なのか。

(片岡伸行・編集部、2017年12月22日号)

出生率目標値を含む安倍政権の人口政策は異例(佐々木実)

かつては人口減少ではなく、人口過剰が懸念されたという違いはあるものの、公権力が個人の選択権を侵す余地をはらむ人口問題は、古今東西で議論が戦わされてきた大テーマである。

ロバート・マルサスが匿名で『人口論』を発表したのは1798年だった。牧師でもあった経済学者マルサスは、「人口は等比級数的に増すが、食糧は等差級数的にしか増えない」という冷厳な人口法則を唱えた。貧民救済を否定して産児制限に論拠を与える経済学は「陰鬱な科学」と呼ばれた。

20世紀初頭にも人口論は経済学者たちの関心を集めた。この時期の特徴は、当時流行していた優生学との結びつきである。

優生学といえば、ハンセン病患者に断種を強いた優生保護法が想起されるが、意外なところでは、福祉国家を代表するスウェーデンが1934年に断種法を制定している。民族主義との関連が取り沙汰されることが多い優生学は、じつは、福祉国家とも縁が深い。

『ベヴァリッジの経済思想』(昭和堂)を著した小峯敦氏は、英国で福祉国家の土台づくりをしたふたりの著名な経済学者、ケインズとベヴァリッジがともに優生学に強い関心を持っていた事実を指摘している。

ジョン・メイナード・ケインズは『雇用、利子および貨幣の一般理論』(1936年)で福祉国家の理論的基礎を与えた。一方、ウィリアム・ベヴァリッジがまとめた『ベヴァリッジ報告』(1942年)は第二次世界大戦後、社会保障制度の雛形となった。協働作業で福祉経済制度を構想したふたりが、時代思潮ともいえる優生学の洗礼を受けていたのだった。

遺伝学という科学的装いをこらした優生学は、「優良な遺伝子を見つけ、交配して子作りを奨励する」(積極的優生学)、「不適応者の生殖を制限し、種の中の欠陥発生率を減らそうとする」(消極的優生学)という二つの軸があったという。強制断種に象徴されるように、優生学は極端なセレクティビズム(選別主義)に陥る傾向をもつ。

ケインズとベヴァリッジは「白人および中流階級の優位性を心に秘めていた」ものの、結果的にセレクティビズムには走らなかった。小峯氏は次のように解説している。

〈ケインズが有効需要論という経済学の内部から古い人口論を克服したのに対し、ベヴァリッジは家族手当に触発された社会保障論という経済学の外部から人口論を克服した〉

必ずしも優生学を否定したわけではないケインズとベヴァリッジは、ユニバーサリズム(普遍主義)にもとづく理論や政策の構築を通じて、人種差別や人権無視という優生学の陥穽から逃れ得た。裏返せば、福祉経済制度の基礎には本来、ユニバーサリズムがある。

人口問題は奥が深い。本誌先週号の記事「結婚・出産を“奨励”する危険な公的指標『企業子宝率』」(筆者は斉藤正美氏)で、出生率の目標値を含む安倍政権の人口政策が先進国では異例であり、日本でも戦中の出産奨励策以来だという専門家の警告が紹介されていた。ここでのべた文脈に照らせば、ユニバーサリズムからの離脱と捉えることができる。

(ささき みのる・ジャーナリスト。2017年12月15日号)

軍事基地も環境アセスの対象となる可能性浮上 沖縄の条例改正に“焦る”政府

宮古島の陸自配備予定地。看板は11月22日まで「仮設」も誤表記だった。(写真提供/宮古島市民)

米軍基地や自衛隊配備問題に揺れる沖縄県で、施設の建設や改修などに関する県環境影響評価(アセスメント)条例が改正される兆しだ。これまで基地は適用対象外だったが、改正後は対象になる可能性がある。しかし、政府がこれに“異議”を唱えるなど、不穏な空気がたちこめている。

現行条例は対象事業を21項目に分類。1~20項には道路や飛行場、農地などの事業が並び、21項には、このほかに「環境に影響を及ぼすおそれがある土地の形状の変更」で「規則」に定められているものが対象とある。だが、2017年11月24日に県の環境政策課と意見交換した宮古島の「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」によると、肝心の「規則」が定められておらず、21項自体が“無効”となっていることがわかった。

県は11月中旬、改正案についての意見公募(パブリックコメント募集)に際して、18年2月開会予定の県議会に条例の改正案を上程し、可決された場合は3月に告示、半年以内に施行する見通しであると示した。改正案は事業目的にかかわらず、施工区域20ヘクタール以上の土地造成にアセス手続きを求めるというものだ。

県はあくまでも、〈動植物や景観など環境に著しい影響が予想されるにもかかわらず、アセス手続きの対象とならない事業があること〉(『沖縄タイムス』17年11月17日付)を改正理由にしている。ただ、同紙は〈改正されれば米軍や自衛隊の基地建設でも3年以上のアセスが必要となり、政府が進める石垣島への陸上自衛隊駐屯地の整備に影響が出る可能性もある〉と指摘。宮古島で計画される弾薬庫などの施設や、辺野古新基地建設において未着手の陸上工事なども、この適用対象となる可能性がある。

この中、「産経ニュース」は11月29日付配信記事で、「政府、環境アセスで沖縄県に対抗措置」との見出しをつけ、政府は〈翁長雄志知事が条例改正で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に加え、宮古島(宮古島市)での陸上自衛隊のミサイル弾薬庫の整備を妨害する意図があるとみて、恣意的な条例改正を阻止する構えだ〉と報じた。県は11月上旬、防衛省などに条例改正案を通知する文書を送付し、29日を期限に意見照会を求めたという。

だがその後、〈首相官邸を中心に対応策を協議し、防衛省を含め政府を挙げて詳細な質問状を県に提出することを決めた。28日に提出した質問に回答があるまで意見提出を留保し、条例改正案のとりまとめを遅らせる〉としている。特定の地方公共団体を“敵視”するかのような国の姿勢が露呈した形だが、国や『産経』はこの点に無自覚なのだろう。

国は「人権わからない」?

宮古島では、17年1月に陸自配備に前向きな下地敏彦氏が再選したことで、反対の声が抑圧され、駐屯地をおくための工事が元ゴルフ場の「千代田カントリークラブ」で始まっている。この半面、弾薬庫などは17年12月18日時点で候補地未定であり、有力視される地域から反対の声が上がっている。

最近では市内城辺の保良部落会(砂川春美会長)が12月10日、「陸上自衛隊の保良鉱山への弾薬庫配備に反対する決議案」を賛成多数で可決した(注)。このほか前出の元ゴルフ場周辺の2集落(千代田、野原)も、当初から「配備反対」を訴えている。だが国側は10月30日から工事を強行。ある住民は、「着工前に住民説明会を開くとしていたが、防衛省が開催したのは11月19日だった」と憤る。

野原集落の説明会では、「(ないがしろにされる)私たちの人権はどう考えるのか」という参加者の質問に対し、沖縄防衛局の久米由夫・企画部地方調整課地方協力確保室長が、「基本的人権とかそういうところはちょっと意味がわれわれには……」とはぐらかす場面もあった。防衛省は本誌の取材に、「人権侵害の意味がつかみかねます」と説明。配備計画を強引に進めてコミュニティや生態系を破壊し、住民に戦争のリスクを背負わせるという“人権侵害”について、考慮する気はないようだ。

(本誌取材班、2017年12月22日号)

(注)その後、防衛省は住民意思を無視する形で市内城辺の保良鉱山に弾薬庫などの施設をおく決定をした。18年1月12日までに複数メディアが明らかにした。

ポルノ、性暴力被害の根絶へ NPO法人「PAPS」が始動

参加者に紹介されるPAPSの法人理事ら。(撮影/小宮純一)

ポルノの制作・流通・消費によって生じているさまざまな人権侵害や性暴力に関する啓発、被害者支援、調査などを2009年5月から任意団体「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS=ぱっぷす)」として行なってきた婦人保護施設や児童施設の職員、研究者、ソーシャルワーカー、弁護士らが12月、調査研究や社会啓発をより充実させるためNPO法人を設立。これを記念して12月10日、東京・千代田区で行なったシンポジウムには市民ら約80人が参加。アダルトビデオ(AV)出演強要被害事件の実相についてソーシャルワーカーの金尻カズナ氏、弁護士の笹本潤氏が報告した。2氏は相談に関わった数事例を挙げ、AV産業の舞台裏を紹介した。

最初は手や足など体の一部分だけを使った「パーツ・モデル」募集のサイトを検索して連絡したところ、撮影会のモデルだと説明され、面接に応じると1回3000円の収入になるというバイトも紹介された。数日後、会場に行ったらAV面接だったという。

ネット広告、スカウト、プロダクション、制作会社、AVメーカー、販売店、動画配信会社が分業する重層構造の仕組みが裏側に出来上がっており、出演を断ったり、指示に従わなかった場合には、それぞれが法外な違約金などを請求できる巧妙な「専属芸術家契約書」、「営業委託契約書」「出演同意書」が被害者との間に交わされているという。こうした実態は「危険性についての説明を回避された契約奴隷状態だ」と述べた。

さらに、陰部にモザイクがかからない無修正動画ビジネスはより深刻で、日本の業者が撮影画像をオランダ・アムステルダムや米国・ネバダ州、カリフォルニア州などの業者に転売して配信されている点について「タックス・ヘイブンならぬポルノ・ヘイブンだ」と批判した。
PAPSのHPは URL www.paps-jp.org。

(小宮純一・ジャーナリスト、2017年12月22日号)

森友・加計・準強かん・スパコン・リニア “アベ友五大疑惑”の追及続く

通常国会で「徹底追及する」と意気込む川内博史議員。(撮影/横田一)

特別国会が12月9日に終わっても、森友・加計学園などの“アベ友疑惑”追及が続いている。13日には民進党の「森友学園・加計学園疑惑調査チーム」(座長は桜井充参院議員)が開かれ、森友学園の国有地格安購入について国土交通省大阪航空局からヒアリング。値引きの根拠となった「ごみ撤去量(算定値)」が実際の100分の1(194トン)にすぎなかったことを認めた。疑惑追及が始まった頃から「値引き額ありきで撤去すべきごみの量を水増ししたのではないか」という疑問が出ていたが、それが裏付けられることになったのだ。

11月28日の予算委員会で疑惑追及の先陣を切った川内博史衆院議員(立憲民主党)も、「森友学園への国有地払下げで財務省が異常なほどの特別扱いをしている実態が明らかになった。真相解明にはほど遠く、疑惑は深まるばかりだった」と特別国会を振り返った。

川内氏が注目した財務省の過去5年間(平成24年度から28年度)の国有地払下げにおける森友学園の特別扱いは、「1売り払い前提の定期借地契約」と「2瑕疵担保責任免除の特約」と「3延納の特約」と「4契約金額の非公開事例」の四つで、それぞれの全体の払い下げ件数は次の通りだ。

(1)1194件中で森友のみ1件

(2)1194件中で森友のみ1件

(3)空港整備勘定を含む1214件中で森友のみ1件

(4)過去4年間の972件中で森友のみ1件

この件数を掛け合わせると、約1兆7000億になるため、森友学園の国有地払下げのような特殊事例が偶然に発生する確率は「1兆7000億分の1」。「天文学的に小さい数字ですから、忖度などの人為的な意向が働いたのは確実です。国有地払下げを検証した会計検査院の報告書についても質問しましたが、値引きの根拠の『ごみ深度』『ごみ混入率』『処分費の単価』について全て確認できないという回答でした」(川内氏)。

安倍首相の妻、昭恵氏が名誉校長だった瑞穂の國記念小學院の森友学園に対して特別扱いが罷り通り、国有財産が不当に安く払い下げられた可能性はきわめて高いといえるのだ。

【注目される野党連携】

他の“アベ友疑惑”でも野党は攻勢を強めている。安倍首相を紹介した『総理』(幻冬舎)の著者・山口敬之氏(元TBSワシントン支局長)をめぐる疑惑については、超党派の「『準強姦事件 逮捕状執行停止問題』を検証する会」(11月21日設立)が伊藤詩織さんからヒアリングをするなど会合を重ねて、1日の法務委員会では柚木道義衆院議員(希望の党)らが野党連携で波状攻撃的な追及をした。

特別国会会期末の5日には東京地検特捜部がスーパーコンピュータ開発ベンチャーのPEZY Computing(ペジー社)の齊藤元章社長ら2名を逮捕。経産省管轄の「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から補助金約4億3100万円を不正受給した容疑だが、準強かん(準強制性交等)事件の山口氏がペジー社の顧問を務め、官邸近くの高級事務所の賃料も負担してもらっていた。そのため、すぐに“アベ友疑惑”と位置づけられ、6日には希望の党、翌7日には立憲民主党が経産省などの担当者からヒアリングをした。

さらにJR東海が発注したリニア中央新幹線関連工事で、東京地検特捜部が大林組を家宅捜索。容疑は、不正な入札をした偽計業務妨害だった。「JR東海の葛西敬之名誉会長は安倍首相と懇意で、5年間で30兆円の財政投融資の経済対策を安倍政権が発表した時には『両者の蜜月関係の産物ではないか』との見方が流れました」(永田町ウォッチャー)。

森友・加計・準強かん・スパコン・リニアという“アベ友五大疑惑”に対して、先の川内氏は「来年1月からの通常国会で徹底的に追及していく」と強調、「準強かん事件のような超党派がベストだが、合同PTにまで至らなくても議員個人レベルで連携をしていきたい」と意気込む。通常国会冒頭の予算委員会での野党の追及が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、12月22日号)

強制わいせつ罪の判例 最高裁が半世紀ぶり変更

園田寿甲南大学教授。11月29日、最高裁前で。(撮影/粟野仁雄)

刑法176条の強制わいせつ罪(懲役6カ月以上10年以下の有期刑)は、性欲を満たす意図がない時には適用されないのが最高裁判例だったため、悪質な犯罪も刑の軽い暴行罪や迷惑防止条例違反などにとどまることもあった。

2015年、13歳未満の少女の体に触り裸を撮影した、として強制わいせつ罪と児童買春・ポルノ禁止法違反罪に問われていた40歳の男性被告の上告審で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は11月29日、「性的意図がなくても成立する」として上告を退け、懲役3年6月を確定させた。これまで、同罪での適用判例は1970年に最高裁が、報復目的で成人女子の裸体を撮影した被告について「犯人の性欲を興奮させたりする意図が必要」として破棄、差し戻した判決。実に47年ぶりの判例変更となる。

寺田裁判長は「被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべき」「70年判例の解釈は維持しがたい」としたが「性的意図を一律に要件とするのは相当でない」とも言及した。

弁護人の奥村徹弁護士は「これまでの判例なら(今回のケースは強制わいせつ罪としては)無罪なのに実刑になった。この件に関しては有罪、というのは承服しがたい」と会見した。

弁護団の一人、園田寿甲南大学法科大学院教授は「判決は、すべて性的意図が要らないとしているわけではない」とし、「行為そのものが持つ性的性質が明確な時と不明確な時に分けており、弁護側の主張も一部受け入れられた」と評価した。同教授は「男が女性に街中で精液を振りかけるような犯罪も器物損壊などにしかならなかったが今後は強制わいせつ罪も可能になる。いじめで男の子を裸にすることなどにも適用できる」と話す。「意図」の証明は困難とはいえ、強制わいせつ罪の定義が変更された意義は大きい。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、12月15日号)

岩国基地は「米軍のハブ空港化」

質疑に応答する田村順玄市議(右)と福田護弁護士。(写真/星徹)

神奈川県横須賀市で12月9日、「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」の総会記念講演「原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機が厚木から岩国へ移駐」が行なわれ、約50人が参加した。

米海軍横須賀基地を母港とする空母の艦載機は、これまで同厚木基地(大和市・綾瀬市)に駐留していた。米国との協議を経た日本政府は10年少し前、この艦載機を米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)に移駐させる方針を示し、着々と準備を進めてきた。そして今年の夏以降、約60機のうち半数強がすでに移駐している。

岩国市の田村順玄市議会議員(リベラル岩国)は講演で、「米軍が岩国基地を自由に使える体制ができつつある」とし、同基地が「米軍のハブ空港化」しつつあることに懸念を示した。

岩国基地では米軍機が急増し、周辺地域の騒音は激しくなりつつある。しかし、岩国市の財政は米軍再編交付金等にどっぷり浸かり、基地依存から抜け出せない状態だという。

続いて、第5次厚木基地爆音訴訟の福田護弁護団長は、「厚木基地周辺は住宅地が密集し、騒音への住民の怒りは広がっている」と語った。しかし、空母艦載機が岩国基地に移駐することについて、「在日米軍の機能が増大しつつある」とし、「騒音状態が改善するとはそう簡単に考えられない」と述べた。

(星徹・ルポライター、12月15日号)

加害者家族の支援考えるセミナーを開催 性犯罪の捉え方に地域差

人権擁護の対象に「犯罪加害者の家族」も、と訴える阿部恭子氏。(撮影/小宮純一)

犯罪加害者の家族を対象とした相談や同行支援を行なう組織を、全国で初めてNPO法人として設立したWorld Open Heart(阿部恭子理事長、仙台市)が毎年、人権週間に行なっているセミナーが12月7日、東京・新宿区であった。

2008年の組織立ち上げ以来、条例違反から強かんに至るまで約300件(再犯、冤罪含む)の性犯罪加害者の家族からの相談に応じてきたという阿部さんが講師を務めた。

「事件が報じられるたびに、親の育て方、教育がなっていないからだ――という議論が起きるが、WOH(前掲)は仮に加害者を過去に虐待していた保護者でも支援対象とする」と強調した。

また、性犯罪が厳罰化された今年の刑法改正については「全国からの相談に乗っていると、ジェンダーやセクシャリティなどの考え方には触れたこともない男尊女卑の文化が、依然として日常生活に根付いている地方がある。被害に遭った女性が短いスカートを穿いていたからだ、と話す加害者の親もいる。性犯罪に対する意識の地域間格差は大きく、その意味でも厳罰化は当然だろう」と述べた。

これまでの活動を通じた実感として「性犯罪の加害者を駆り立てているのは依存症というより劣等感だと思う」とも。「ごく普通に日常生活を送っていても、実は自分に自信がない。そういう自己否定の感情を弱者への性暴力で埋めようとする。自己を保つための暴力で、弁護士からの勾留中の働き掛けが重要だ」(阿部氏)

同会は加害者家族会を仙台、東京、大阪で開いているが、性犯罪グループの場合は、親と配偶者に分けて開催する。家族間の関係性が異なるからだという。阿部氏は「特に子どもは絶対にケアと支援が必要。『保護者やきょうだいが犯した犯罪に巻き込まれた子ども』という捉え方を各分野で共有すべきだ」と提言した。

(小宮純一・ジャーナリスト、12月15日号)

「12・7障がい者 辺野古のつどい」に全国から集結 市民運動に障がい者の視点を

沖縄・辺野古。障がい者が「すみません」と繰り返さないですむ社会を。(撮影/冨田きよむ)

「戦争が起こると一番先にやっかい者あつかいにされるのは障がい者」(後述する集会のチラシより)――それは数々の戦争や紛争で実証されつくしてきた。

12月3~9日の国際障害者週間に日程を合わせて、7日、沖縄県名護市辺野古・キャンプ・シュワブゲート前で「障がい者 辺野古のつどい」が開催された(主催・同実行委員会)。開会の午前11時のはるか前から県内はもとより、長野、滋賀、兵庫、愛媛各県などから車いすの障がい者ら約150人が続々と辺野古に集結した。

「障がい者がデモなどで声を上げるたびに、『車いすの乞食』、『めくらの乞食』と、街宣車に揶揄されてきた悔しさをどこにもっていけばいいのか悩み続けました」と、実行委共同代表の門屋和子さん。障がい者が市民運動に参加するとき、足手まといになるのではないかとの怖れが常に付きまとう。

同実行委共同代表の成田正雄さんは、「反戦運動の中に障がい者の声がない。命の重みを語る運動の中でともすると障がい者が顧みられてこなかった。今回の集いは、障がい者自らが主体となって命の重さを守る戦いの始まりだと言える」と、集会で叫んだ。

神戸で、脳性麻痺で車いす生活を送る大島秀夫さんは「三里塚のデモの時、途中で疲れ果てて止まってしまったら見捨てられたことが忘れられない。市民運動の中にこそしっかりと障がい者の視点がなければならない。だから辺野古に来て自分で声を上げたかった」と、障がい者としての口惜しさと平和に対する強い思いを話した。

家を一歩出た瞬間から「すみません」と繰り返して生きる障がい者が、大変な労力と体力を使って辺野古に集結した。障がい者が「すみません」と繰り返さなくても生きていける社会は外国の基地などない社会だと参加者は口々に主張した。

(冨田きよむ・フォトジャーナリスト、12月15日号)