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戦争は始まっている!?(黒島美奈子)

戦争は始まっているのかもしれない。この1年を振り返るとそう思わずにはいられない。

幕開けは2016年12月13日。名護市安部の海岸に米軍普天間飛行場所属のオスプレイが墜落した。

集落から歩いて行ける現場の浅瀬は、家々からわずか数百メートル。何百、何千と散った機体の残骸は、今も見つかっている。墜落機と共に飛んでいた僚機は同日、機体の不具合から前輪が出ず、普天間飛行場に胴体着陸した。

年が明け2017年1月19日、嘉手納基地所属のF15戦闘機が油漏れのため同基地に緊急着陸した。翌日にはうるま市の農道に、新型攻撃ヘリAH1Zが不時着。機体から出る熱風で畑の作物が焼けた。

3月8日、キャンプ・ハンセンで米軍ヘリUH1からつり下げられた複数の車のタイヤが宜野座村に落下。同21日には、C130輸送機が、燃料を放出させながら嘉手納基地に着陸するのが目撃された。6月6日、伊江島の米軍補助飛行場にオスプレイが緊急着陸。

同10日には奄美空港にも緊急着陸した。オスプレイは8月28日にも、山口県岩国基地で白煙を上げ着陸。同29日には岩国基地を出た1機が大分空港に緊急着陸後、煙と炎が上がった。同機は6月に伊江島で不具合を起こしていた機だったことが後に判明。9月29日には、オスプレイ2機が石垣空港に緊急着陸した。

10月11日、米軍ヘリCH53が、東村の民間の牧草地で炎上。11月22日には、嘉手納基地を飛び立ち空母ロナルド・レーガン艦載機として訓練中だったC2輸送機が洋上で墜落した。米兵3人が行方不明となっている。同30日、米軍戦闘機F35が機体右側のパネルを付けず嘉手納基地に着陸したことが発覚。翌日、在沖米軍は「おそらく海上で落下した」と発表した。

12月7日、宜野湾市の保育園の屋根で、米軍ヘリCH53の部品が見つかった。保育園関係者によると、屋根でドスンと大きな音がしたので点検すると部品があった。米軍は、米軍機から「落ちた」ことは否定したが、米軍機の部品であることは認めた。

そして、1昨年のオスプレイ墜落からちょうど1年目の12月13日、同市普天間第二小学校の校庭に、上空を飛行中の米軍ヘリCH53が窓枠を落下させた。校庭にいた男児1人が、落下時の衝撃で飛んだ石でけがをした。

ヘリから戦闘機まで米軍基地の多種多様な機種が事故を頻発する様子は、朝鮮戦争時(1950~53年)、ベトナム戦争時(1955~75年)の沖縄と重なる。石川市(当時)の宮森小学校に米軍戦闘機F100が墜落し死傷者227人を出したのも同時期だった。同じ期間には嘉手納村や読谷村でも米軍機による事故で住民が数人死亡している。

翁長雄志知事が「負担軽減どころか、復帰前に戻ったよう」と憤る姿に、もはや想像力は必要ない。しかし米軍機からの窓落下事故を受け、山本朋広防衛副大臣は、沖縄県が要求する「米軍機全機の飛行停止」に対し「他の飛行機も(事故機と)同じように扱うというのは、どういうロジックなのか分からない」と首をひねった。

この国の閣僚には想像力どころか、目の前で起こっていることを認識する力さえないことに愕然とする。次の戦争が始まるか否かは、そんな政治家たちに委ねられている。

(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者。2017年12月22日号)

【憲法を求める人々】萩谷麻衣子(佐高信)

 むのたけじは『詞集たいまつ』(三省堂新書)でこう喝破した。

「戦場で死んだ兵士は最後に『かあさん!』とよんだ。しかし母親のだれも、むすこのそのこえを聞いていない」

萩谷はむののこの言葉に全身で共感するだろう。『俳句界』12月号の「佐高信の甘口でコンニチハ!」で、私に次のように語ったからである。

「テレビで『憲法改正反対』とか言うと、すぐに反日左翼だとネットでは言われるんですけど、あまり左右というのは意識したことがなくて、ただ子どもの母親として戦争反対なんです。特に、ちょうど十八歳の息子もいますから」

安倍晋三を筆頭として勇ましげな議論をしている人たちは決して自分は戦争に行かない。安全な立場で声高に主張しているが、
「では、誰が行くの?」
と問いたい、と萩谷は言う。

改憲して軍隊を持つことにしたら、自衛隊だけでは絶対に足りなくなって徴兵制にせざるをえなくなるだろう。

「そのときにうちの子どもやその友達を戦争に行かせられるのかといったら、私は絶対反対。それを言うと感情的だとか、お国のことを思っていないのかと言われるけど、それなら、あなたが行きなさいよと思うんです。あの世代の子たちを戦争に行かせて人を殺させて、殺されるかもしれないんだったら、攻撃されて死んだ方がいいじゃないかと、母親としての思いが強いです」

穏やかな口調ながらキッパリと、萩谷はこう言い切る。

そして、国民の多くが徴兵制を望むなら、「中高年男女問わず」そうしたらいい、と続ける。

むしろ、若い人は最後にして、中高年から前線に行くべきではないか。

「そこまでの覚悟をして憲法改正に一票入れるのかと、テレビでも言う機会があったら言いたいと思っているんですけどね」

やわらかな感じで語る彼女がテレビからはずされないことを祈るばかりである。

『朝まで生テレビ』で同席して、あの喧騒の中できちんと話す彼女に感心した。絶叫調でなく、しかし、言うべきことを言うのは、かなり難しい。それを可能にしているのは彼女の芯の強さだろう。

詳しいことは聞かなかったが、同業の彼と結婚する時に母親に反対され、板挟みになって、電車に飛び込もうかと思うくらい辛かった時期が数年あったという。

「でも、そのときの双方から責められて苦しかった状態が、今の仕事に生かされていると思います。そういう方が離婚の相談に来られると、何が苦しいのかわかるんです。苦しかった経験が生かされているので、いい仕事だなと思いますね」

もう一度、むのの『詞集たいまつ』を引けば「語り上手が良い聞き手であるとは限らない。しかし聞き上手は、必ず良い語り手である」とある。

萩谷も、よく聞くことから信頼関係は生まれることを学んだ。

弁護士は依頼者の話を聞きながら、どこが問題でどう戦うかという「法律構成」を組み立てるが、依頼者はそれとは関係ないことも話す。しかし、彼あるいは彼女がこだわっているところが重要だったりするのである。

「だから、時間をかけて聞く事は大事だなって思います」

国家なんて言葉は一番信用できないと思うとも萩谷は語る。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、12月15日号。画/いわほり けん)

70年前の衆院「排除」決議の重みを無視したデマゴギー 「教育勅語」の教材使用は問題

教育学の研究者らでつくる日本教育学会(会長・広田照幸日本大学教授)教育勅語問題ワーキンググループは、昨年12月12日、文部科学省に「教育勅語を肯定的に使用したりその理念を指導原理にしたりすることはできない」とする『教育勅語の教材使用問題に関する研究報告書』(同学会ホームページで公開)を出した。

安倍内閣は、昨年3月31日、教育勅語について、「教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切」だが、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との見解を閣議決定した。

文科省の藤江陽子大臣官房審議官も、閣議決定と同趣旨を述べつつ、教育勅語には「夫婦相和し、朋友相信じなど今日でも通用するような普遍的な内容も含まれている」として、「適切な配慮のもとに活用していくことは差し支えない」(2017年2月23日衆議院予算委員会第一分科会)と述べた。

文科省は、「教育勅語の具体的使用状況は学校設置者が指導監督する」と筆者の質問に答えた。試しに東京都と大阪府に教育勅語の指導に関する調査をしたり、通達などを出したことがあるか聞いたが、都も府も「ない」と回答した。

また、都は「(昨年の)閣議決定をもって、教育勅語を教育における唯一の根本として位置付けられた戦前のような形で教育に用いることは不適切であることや、教育の場における教育勅語の活用を促す考えはないとの政府見解を踏まえつつ、憲法の基本理念や教育基本法の定める教育の目標等に基づいて、学校教育を推進していく」と回答。大阪府教育委員会も、「教育勅語を唯一の価値観として教えるのはダメだが近現代史の資料として使うのは問題ない」と答えた。

【客観的根拠を欠く】

同報告書の執筆者の一人である小野雅章日本大学教授は、藤江審議官の「普遍的な内容も含まれている」について、「間違い」と指摘する。教育勅語には12の徳目が挙げられているが、それらはすべて戦争になったら「一身を捧げて皇室国家に尽せ」という最後の徳目にかかる。「このことは、1940年に教育勅語の解釈を確定した文部省(現文科省)の協議会でも確認されています。だから、『夫婦相和し』などの徳目を最後の、『皇室国家に尽せ』から分離することはできません」と指摘した。

小野教授によれば、教育勅語は1890年に明治天皇の名で出されたが、作成にかかわった井上毅は明治憲法でも「臣民」の良心の自由に干渉しないとの原則が認められていたので、その原則との整合性に気を配り、苦肉の策として大臣の副署のない勅語(天皇が直接国民に呼びかける言葉)の形にしたという。だが、その後保守的な官僚らによって御真影(天皇皇后の写真)とともに学校の奉安殿に格納するなどの教育勅語の権威付けが行なわれ、ついには原爆が落とされても、広島工業専門学校(広島大学工学部)は生徒の安全より御真影の無事を文部大臣に報告したというような倒錯した事態になった(同報告書39頁)。「教育勅語は天皇制教化の『装置』でした。今の入学式卒業式の国旗国歌の強制も同じ」と小野教授は言う。

また、同報告書の執筆者の一人である中嶋哲彦名古屋大学大学院教授は、これまでも教育勅語問題は国会で取り上げられてきたが、昨年の第193国会では延べ43もの会議で取り上げられ最多となっただけでなく、政府答弁も、「一般論として教育勅語を教材として使用することが認められる」とまで述べ、「従来と異なる」と指摘する。

その上で、「唯一の指導原理でなければ教材として使ってもよい」との政府見解について中嶋教授は、1948年に衆議院で教育勅語について「指導原理的性格を認めない」と宣言、「排除」が決議されており、同年参議院でも「失効」が確認されているなどの歴史的事実を無視しているとし、「客観的根拠を欠いたデマゴギー」と批判している。

(永尾俊彦・ルポライター、2018年1月12日号)

名護市長選に向け、菅・二階両氏が沖縄入り 繰り返される自民の“土建選挙”

新年早々、沖縄入した二階堂俊博自民党幹事長。(撮影/横田一)

名護市長選(2月4日投開票)で自民党が“詐欺師紛い”の争点隠し選挙と露骨な土建選挙に再び乗り出した。昨年12月29日に菅義偉官房長官、今月4日には二階俊博幹事長が沖縄入りして自公推薦候補の渡具知武豊元市議や支援者らと面談。公共事業推進(予算増加)を強調しながら、最大の争点である辺野古新基地建設については「米海兵隊の県外・国外移転を求める」と基地反対派と同じ政策を掲げる一方、移設工事は粛々と進める二枚舌的な対応をしているためだ。

沖縄北部の名護市にまで足を運んだ菅氏が訴えた市長選向けの目玉事業が、総事業費が約1000億円の「名護東道路」(8・4キロメートル)。工事現場を視察し、未完成区間(2・6キロメートル)の1年半の完成前倒しとさらなる延伸調査を関係省庁に指示したことを明らかにした。

露骨で卑劣な土建選挙とはこのことだ。慢性的渋滞に悩まされる市民の弱みに付け込み、「道路整備を早くしてほしければ、自公推薦候補に投票をしろ!」と迫っているようにみえる。

【土地改良とバーター?】

公共事業推進と投票依頼が交換条件の土建選挙(利益誘導選挙)が得意なのは、4日に沖縄入りした二階氏も同じだ。

「全国土地改良事業団体連合会」会長の二階氏は、民主党政権時代に半分以下になった「土地改良事業(農地の規模拡大や灌漑整備などを行なう農業土木事業)」の予算増額に尽力。このことを土地改良事業関係者に対してアピールして票集めにつなげるのが二階氏の“得意技”だが(一昨年の新潟県知事選で実践した様子は本誌でも紹介)、これを沖縄でも繰り返したのだ。

那覇市内で選対会議と地元経済人との懇談をした後、4年前の自主投票から推薦に転じた公明党県本部に挨拶をした二階氏は、続いて名護市内のホテルで渡具知候補や末松文信県議らとの意見交換。その後、二階氏はこんな提案をした。

「私は土地改良事業連合会に行ってきますから、土地改良の方に声をかけて下さい。選挙で仲間が沢山いれば、何倍も力が出てきますから皆さん、よろしく」

これに対して参加者は「はい、頑張りましょう」と応え、二階氏の提案は快諾された。税金を土地改良事業を介して選挙対策に流用するかのような手法が新潟県知事選だけでなく、名護市長選でも実行に移されることになったのだ。

そこで会合を終えた二階氏を直撃、「土地改良費は選挙対策費ですか。土地改良事業と選挙がバーターではないか。利益誘導選挙ではないか」と聞いたが、「そんなことはない」と否定した。名護市内の土地改良事業の関係者は、約1200人にも及ぶという。約2500票とされる公明党の基礎票の約半分に当たるが、こうした利害関係者に投票依頼をするのが二階氏の“得意技”なのだ。

また菅官房長官が表明した「名護東道路」の完成前倒しも、利害関係者に自公推薦候補への投票を促す効果が期待できる。市内大手の建設会社「東開発」や「屋部土建」がすでに名護東道路の工事を受注しており、前倒しや延伸実現となれば、今後の受注増が確実に見込めるのは言うまでもない。

告示日には人気抜群の小泉進次郎筆頭副幹事長が名護市に入るとの情報も流れるが、迎え撃つ立場の稲嶺進市長は、自公推薦の渡具知候補について「辺野古新基地問題には触れずに海兵隊の県外・国外移設を求める一方、再編交付金(基地受入と引き換えに国が交付)を受け取るのは、矛盾に満ちた無責任発言だ」と指摘。争点隠し選挙に対抗しようとしている。

そんな中で沖縄では、6日にはうるま市の伊計島、8日にも読谷村に米軍ヘリの不時着が相次いだ。国会での日米地位協定見直し論議や名護市長選にも影響を与えるのは確実だ。“国民の税金を選挙対策に流用するに等しいアベ土建政治”が通用するか否か、の試金石でもある名護市長選が、注目される。

(横田一・ジャーナリスト、2018年1月12日号)

「重慶大爆撃裁判」高裁判決 「加害」認めるも地裁の請求棄却を支持

「弾劾不当判決」の旗を掲げ、霞ヶ関を歩く、重慶大爆撃裁判原告・支援者ら。(撮影/鈴木賢士)

12月14日、寒風にもめげず、裁判所を出て官庁街を回る霞ヶ関デモは、「弾劾不当判決」の旗を掲げ、こぶしを突き上げる怒りの叫びと涙にあふれていた。この日の重慶大爆撃裁判で、東京高裁の永野厚郎裁判長は、旧日本軍の空爆による加害と被害の事実を認めたものの、被害者と遺族243人の謝罪と賠償を求める訴えを退けた。

日中戦争のさなか首都南京が攻略され、戦時首都となった重慶と四川省各地に対して、1938年から5年半に及んだ重慶大爆撃。およそ200回の無差別爆撃で死傷者は10万人、家屋と店舗を消失したのは100万人にのぼる。今回海を越えて裁判に駆け付けたのは原告9人、支援者を含めて31人。前回のデモまで元気に歩いていた陳桂芳さん(85歳)、簡全碧さん(79歳)の2人の原告女性が、終始支援者の手を借り、車いすに変わっていた姿が痛々しい。

判決後の記者会見で、粟遠奎原告団長(84歳)は「加害の事実は認めたが、謝罪と賠償は認めなかった。不当で傲慢な判決です。失望した」と糾弾。判決前、裁判所の門前で「正当で公平な判決を心から望む。歴史問題に正しく対処することにより、中国と日本の人々の間は、長く友好関係が発展していく」と期待を語っていたが、期待は裏切られた。直ちに上告の意思を表明し、「この問題は次世代に残し引き継がせていく」と言い切った。

裁判を支援する軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、「東京をはじめ日本が受けた空襲被害の前に、重慶に対して日本が行なった無差別爆撃は、中東だけでなく今に続く、今日の出来事。闘いはこれで終わりではない。明日の平和を構築するためのスタート」と発言。問われているのは裁判官・政府だけでなく、日本人一人ひとりではないか。

(鈴木賢士・フォトジャーナリスト、2017年12月22日号)

詩織さん「準強姦」事件で検察審査会が黒塗り文書開示 検審はブラックボックスか

「判事名、検事名」が黒塗りにされた文書。(提供/健全な法治国家のために声をあげる市民の会)

ジャーナリストの伊藤詩織さん「準強姦」事件のもみ消し疑惑で、性行為自体は認めている元TBS記者を「不起訴処分相当」とした東京第六検察審査会は12月13日、文書開示を求めていた「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(八木啓代代表)に対し、肝心の議事録などは「不開示」としたものの一部の文書を開示した。

逮捕直前に当時の中村格警視庁刑事部長(現・統括審議官)が執行停止を命じた異例の事件であったにもかかわらず、東京第六検察審査会は9月21日、「不起訴処分は相当」とする議決をしたが、そのA4判1枚の「議決の要旨」には議決の理由などが一切書かれていないことから、「市民の会」が9月29日付で複数の行政文書開示を求めていた。

八木代表は「審査会でどのような証拠が出され、それについてどのような説明があり、どんな議論がなされた上で『不起訴相当』になったのかがまったく不明です。しかも、審査の中で法律的なアドバイスをし、議決書作成を手伝うはずの補助弁護士の名前も記載されていません。少なくとも13年4月19日に出された、陸山会事件に関わる検察官の虚偽有印公文書作成・同行使事件のときの『議決の要旨』はA4判で14枚あり、判断の理由などが書かれていました」と話す。今回は判断理由が一切不明で、補助弁護士の立会もなしに議決が行なわれた疑いもある。

一方、12月13日に部分的に「開示」された「検察審査員及び補充員選定録」などの手続き文書だが、八木代表はその選定録を見て驚いた。「これまで公開されていた立ち会いの判事と検事の氏名が黒塗りでした。理由を聞くと『自筆署名なので個人情報とみなし、今回から不開示とした』と。公務員なのに非公開はおかしい。不透明さがさらに深まったと言えます」と八木代表は語る。公務での署名は本当に個人情報なのか。

(片岡伸行・編集部、2017年12月22日号)

出生率目標値を含む安倍政権の人口政策は異例(佐々木実)

かつては人口減少ではなく、人口過剰が懸念されたという違いはあるものの、公権力が個人の選択権を侵す余地をはらむ人口問題は、古今東西で議論が戦わされてきた大テーマである。

ロバート・マルサスが匿名で『人口論』を発表したのは1798年だった。牧師でもあった経済学者マルサスは、「人口は等比級数的に増すが、食糧は等差級数的にしか増えない」という冷厳な人口法則を唱えた。貧民救済を否定して産児制限に論拠を与える経済学は「陰鬱な科学」と呼ばれた。

20世紀初頭にも人口論は経済学者たちの関心を集めた。この時期の特徴は、当時流行していた優生学との結びつきである。

優生学といえば、ハンセン病患者に断種を強いた優生保護法が想起されるが、意外なところでは、福祉国家を代表するスウェーデンが1934年に断種法を制定している。民族主義との関連が取り沙汰されることが多い優生学は、じつは、福祉国家とも縁が深い。

『ベヴァリッジの経済思想』(昭和堂)を著した小峯敦氏は、英国で福祉国家の土台づくりをしたふたりの著名な経済学者、ケインズとベヴァリッジがともに優生学に強い関心を持っていた事実を指摘している。

ジョン・メイナード・ケインズは『雇用、利子および貨幣の一般理論』(1936年)で福祉国家の理論的基礎を与えた。一方、ウィリアム・ベヴァリッジがまとめた『ベヴァリッジ報告』(1942年)は第二次世界大戦後、社会保障制度の雛形となった。協働作業で福祉経済制度を構想したふたりが、時代思潮ともいえる優生学の洗礼を受けていたのだった。

遺伝学という科学的装いをこらした優生学は、「優良な遺伝子を見つけ、交配して子作りを奨励する」(積極的優生学)、「不適応者の生殖を制限し、種の中の欠陥発生率を減らそうとする」(消極的優生学)という二つの軸があったという。強制断種に象徴されるように、優生学は極端なセレクティビズム(選別主義)に陥る傾向をもつ。

ケインズとベヴァリッジは「白人および中流階級の優位性を心に秘めていた」ものの、結果的にセレクティビズムには走らなかった。小峯氏は次のように解説している。

〈ケインズが有効需要論という経済学の内部から古い人口論を克服したのに対し、ベヴァリッジは家族手当に触発された社会保障論という経済学の外部から人口論を克服した〉

必ずしも優生学を否定したわけではないケインズとベヴァリッジは、ユニバーサリズム(普遍主義)にもとづく理論や政策の構築を通じて、人種差別や人権無視という優生学の陥穽から逃れ得た。裏返せば、福祉経済制度の基礎には本来、ユニバーサリズムがある。

人口問題は奥が深い。本誌先週号の記事「結婚・出産を“奨励”する危険な公的指標『企業子宝率』」(筆者は斉藤正美氏)で、出生率の目標値を含む安倍政権の人口政策が先進国では異例であり、日本でも戦中の出産奨励策以来だという専門家の警告が紹介されていた。ここでのべた文脈に照らせば、ユニバーサリズムからの離脱と捉えることができる。

(ささき みのる・ジャーナリスト。2017年12月15日号)

軍事基地も環境アセスの対象となる可能性浮上 沖縄の条例改正に“焦る”政府

宮古島の陸自配備予定地。看板は11月22日まで「仮設」も誤表記だった。(写真提供/宮古島市民)

米軍基地や自衛隊配備問題に揺れる沖縄県で、施設の建設や改修などに関する県環境影響評価(アセスメント)条例が改正される兆しだ。これまで基地は適用対象外だったが、改正後は対象になる可能性がある。しかし、政府がこれに“異議”を唱えるなど、不穏な空気がたちこめている。

現行条例は対象事業を21項目に分類。1~20項には道路や飛行場、農地などの事業が並び、21項には、このほかに「環境に影響を及ぼすおそれがある土地の形状の変更」で「規則」に定められているものが対象とある。だが、2017年11月24日に県の環境政策課と意見交換した宮古島の「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」によると、肝心の「規則」が定められておらず、21項自体が“無効”となっていることがわかった。

県は11月中旬、改正案についての意見公募(パブリックコメント募集)に際して、18年2月開会予定の県議会に条例の改正案を上程し、可決された場合は3月に告示、半年以内に施行する見通しであると示した。改正案は事業目的にかかわらず、施工区域20ヘクタール以上の土地造成にアセス手続きを求めるというものだ。

県はあくまでも、〈動植物や景観など環境に著しい影響が予想されるにもかかわらず、アセス手続きの対象とならない事業があること〉(『沖縄タイムス』17年11月17日付)を改正理由にしている。ただ、同紙は〈改正されれば米軍や自衛隊の基地建設でも3年以上のアセスが必要となり、政府が進める石垣島への陸上自衛隊駐屯地の整備に影響が出る可能性もある〉と指摘。宮古島で計画される弾薬庫などの施設や、辺野古新基地建設において未着手の陸上工事なども、この適用対象となる可能性がある。

この中、「産経ニュース」は11月29日付配信記事で、「政府、環境アセスで沖縄県に対抗措置」との見出しをつけ、政府は〈翁長雄志知事が条例改正で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に加え、宮古島(宮古島市)での陸上自衛隊のミサイル弾薬庫の整備を妨害する意図があるとみて、恣意的な条例改正を阻止する構えだ〉と報じた。県は11月上旬、防衛省などに条例改正案を通知する文書を送付し、29日を期限に意見照会を求めたという。

だがその後、〈首相官邸を中心に対応策を協議し、防衛省を含め政府を挙げて詳細な質問状を県に提出することを決めた。28日に提出した質問に回答があるまで意見提出を留保し、条例改正案のとりまとめを遅らせる〉としている。特定の地方公共団体を“敵視”するかのような国の姿勢が露呈した形だが、国や『産経』はこの点に無自覚なのだろう。

国は「人権わからない」?

宮古島では、17年1月に陸自配備に前向きな下地敏彦氏が再選したことで、反対の声が抑圧され、駐屯地をおくための工事が元ゴルフ場の「千代田カントリークラブ」で始まっている。この半面、弾薬庫などは17年12月18日時点で候補地未定であり、有力視される地域から反対の声が上がっている。

最近では市内城辺の保良部落会(砂川春美会長)が12月10日、「陸上自衛隊の保良鉱山への弾薬庫配備に反対する決議案」を賛成多数で可決した(注)。このほか前出の元ゴルフ場周辺の2集落(千代田、野原)も、当初から「配備反対」を訴えている。だが国側は10月30日から工事を強行。ある住民は、「着工前に住民説明会を開くとしていたが、防衛省が開催したのは11月19日だった」と憤る。

野原集落の説明会では、「(ないがしろにされる)私たちの人権はどう考えるのか」という参加者の質問に対し、沖縄防衛局の久米由夫・企画部地方調整課地方協力確保室長が、「基本的人権とかそういうところはちょっと意味がわれわれには……」とはぐらかす場面もあった。防衛省は本誌の取材に、「人権侵害の意味がつかみかねます」と説明。配備計画を強引に進めてコミュニティや生態系を破壊し、住民に戦争のリスクを背負わせるという“人権侵害”について、考慮する気はないようだ。

(本誌取材班、2017年12月22日号)

(注)その後、防衛省は住民意思を無視する形で市内城辺の保良鉱山に弾薬庫などの施設をおく決定をした。18年1月12日までに複数メディアが明らかにした。

ポルノ、性暴力被害の根絶へ NPO法人「PAPS」が始動

参加者に紹介されるPAPSの法人理事ら。(撮影/小宮純一)

ポルノの制作・流通・消費によって生じているさまざまな人権侵害や性暴力に関する啓発、被害者支援、調査などを2009年5月から任意団体「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS=ぱっぷす)」として行なってきた婦人保護施設や児童施設の職員、研究者、ソーシャルワーカー、弁護士らが12月、調査研究や社会啓発をより充実させるためNPO法人を設立。これを記念して12月10日、東京・千代田区で行なったシンポジウムには市民ら約80人が参加。アダルトビデオ(AV)出演強要被害事件の実相についてソーシャルワーカーの金尻カズナ氏、弁護士の笹本潤氏が報告した。2氏は相談に関わった数事例を挙げ、AV産業の舞台裏を紹介した。

最初は手や足など体の一部分だけを使った「パーツ・モデル」募集のサイトを検索して連絡したところ、撮影会のモデルだと説明され、面接に応じると1回3000円の収入になるというバイトも紹介された。数日後、会場に行ったらAV面接だったという。

ネット広告、スカウト、プロダクション、制作会社、AVメーカー、販売店、動画配信会社が分業する重層構造の仕組みが裏側に出来上がっており、出演を断ったり、指示に従わなかった場合には、それぞれが法外な違約金などを請求できる巧妙な「専属芸術家契約書」、「営業委託契約書」「出演同意書」が被害者との間に交わされているという。こうした実態は「危険性についての説明を回避された契約奴隷状態だ」と述べた。

さらに、陰部にモザイクがかからない無修正動画ビジネスはより深刻で、日本の業者が撮影画像をオランダ・アムステルダムや米国・ネバダ州、カリフォルニア州などの業者に転売して配信されている点について「タックス・ヘイブンならぬポルノ・ヘイブンだ」と批判した。
PAPSのHPは URL www.paps-jp.org。

(小宮純一・ジャーナリスト、2017年12月22日号)

森友・加計・準強かん・スパコン・リニア “アベ友五大疑惑”の追及続く

通常国会で「徹底追及する」と意気込む川内博史議員。(撮影/横田一)

特別国会が12月9日に終わっても、森友・加計学園などの“アベ友疑惑”追及が続いている。13日には民進党の「森友学園・加計学園疑惑調査チーム」(座長は桜井充参院議員)が開かれ、森友学園の国有地格安購入について国土交通省大阪航空局からヒアリング。値引きの根拠となった「ごみ撤去量(算定値)」が実際の100分の1(194トン)にすぎなかったことを認めた。疑惑追及が始まった頃から「値引き額ありきで撤去すべきごみの量を水増ししたのではないか」という疑問が出ていたが、それが裏付けられることになったのだ。

11月28日の予算委員会で疑惑追及の先陣を切った川内博史衆院議員(立憲民主党)も、「森友学園への国有地払下げで財務省が異常なほどの特別扱いをしている実態が明らかになった。真相解明にはほど遠く、疑惑は深まるばかりだった」と特別国会を振り返った。

川内氏が注目した財務省の過去5年間(平成24年度から28年度)の国有地払下げにおける森友学園の特別扱いは、「1売り払い前提の定期借地契約」と「2瑕疵担保責任免除の特約」と「3延納の特約」と「4契約金額の非公開事例」の四つで、それぞれの全体の払い下げ件数は次の通りだ。

(1)1194件中で森友のみ1件

(2)1194件中で森友のみ1件

(3)空港整備勘定を含む1214件中で森友のみ1件

(4)過去4年間の972件中で森友のみ1件

この件数を掛け合わせると、約1兆7000億になるため、森友学園の国有地払下げのような特殊事例が偶然に発生する確率は「1兆7000億分の1」。「天文学的に小さい数字ですから、忖度などの人為的な意向が働いたのは確実です。国有地払下げを検証した会計検査院の報告書についても質問しましたが、値引きの根拠の『ごみ深度』『ごみ混入率』『処分費の単価』について全て確認できないという回答でした」(川内氏)。

安倍首相の妻、昭恵氏が名誉校長だった瑞穂の國記念小學院の森友学園に対して特別扱いが罷り通り、国有財産が不当に安く払い下げられた可能性はきわめて高いといえるのだ。

【注目される野党連携】

他の“アベ友疑惑”でも野党は攻勢を強めている。安倍首相を紹介した『総理』(幻冬舎)の著者・山口敬之氏(元TBSワシントン支局長)をめぐる疑惑については、超党派の「『準強姦事件 逮捕状執行停止問題』を検証する会」(11月21日設立)が伊藤詩織さんからヒアリングをするなど会合を重ねて、1日の法務委員会では柚木道義衆院議員(希望の党)らが野党連携で波状攻撃的な追及をした。

特別国会会期末の5日には東京地検特捜部がスーパーコンピュータ開発ベンチャーのPEZY Computing(ペジー社)の齊藤元章社長ら2名を逮捕。経産省管轄の「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から補助金約4億3100万円を不正受給した容疑だが、準強かん(準強制性交等)事件の山口氏がペジー社の顧問を務め、官邸近くの高級事務所の賃料も負担してもらっていた。そのため、すぐに“アベ友疑惑”と位置づけられ、6日には希望の党、翌7日には立憲民主党が経産省などの担当者からヒアリングをした。

さらにJR東海が発注したリニア中央新幹線関連工事で、東京地検特捜部が大林組を家宅捜索。容疑は、不正な入札をした偽計業務妨害だった。「JR東海の葛西敬之名誉会長は安倍首相と懇意で、5年間で30兆円の財政投融資の経済対策を安倍政権が発表した時には『両者の蜜月関係の産物ではないか』との見方が流れました」(永田町ウォッチャー)。

森友・加計・準強かん・スパコン・リニアという“アベ友五大疑惑”に対して、先の川内氏は「来年1月からの通常国会で徹底的に追及していく」と強調、「準強かん事件のような超党派がベストだが、合同PTにまで至らなくても議員個人レベルで連携をしていきたい」と意気込む。通常国会冒頭の予算委員会での野党の追及が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、12月22日号)