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小池都知事が情報公開と公文書管理で安倍自民党を牽制

定例会見で「情報公開」を強調する小池百合子都知事。6月9日。(撮影/横田一)

野党の加計学園疑惑追及が安倍政権を直撃、東京都議選(6月23日告示、7月2日投開票)にも波及し始めた。自民党を離党した1日に「都民ファーストの会」代表となった小池百合子東京都知事は、安倍政権の情報公開が不十分と指摘、都議選を「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党対情報公開の小池新党」の対決構図と位置づけ、3日と4日の応援演説でも加計疑惑に触れたのだ。

有権者の反応も上々。離党前の世論調査では自民党「17%」に対して都民ファーストの会「11%」とリードを許していたが、離党後はほぼ拮抗・逆転するまでに追いついた。都議選の帰趨を決める七つの1人区で小池新党が圧勝、自民党惨敗の可能性が高まった。12日の『週刊現代』に「都民ファースト5→46議席、自民57→37議席」という予測が出たのはこのためだ。

加計疑惑をめぐる安倍政権の対応批判に手応えを感じたに違いない小池知事は、9日の定例会見でも情報公開の重要性をこう訴え、都政と国政を対比してみせた。

「今回の第2回定例議会において、一つは情報公開の条例の改正、二つ目が公文書の管理徹底の条例成立ということです。まさしくこういった点が今、国会の場においても『文書があるのないの』とか、『共有がどうなっているの』とか、そこに注目がいっているわけです。基本的に記録は残す。そして、重要な文書については、所管課限りでなく他部署が関与するダブルチェックにより廃棄するというのが、今回の公文書管理のポイントにもなっているわけです。行政である以上はしっかりと情報の管理、公文書の管理をするというのは当然の話だと思います」

【国政との挟み撃ちを図る】

「東京大改革の一丁目一番地は情報公開」とする小池都政と連動するように、民進・共産・自由・社民の4野党も9日、公文書管理法改正案を衆院に共同提出した。政府機関や独立行政法人の職員が書いた個人メモも行政文書として扱い、電子データは削除せず保存するという内容で、提出者の今井雅人衆院議員は「行政が管理しないといけない文書が破棄され、国民の権利が毀損されている」と必要性を訴えた。今井氏は民進党の加計学園疑惑調査PTの共同座長だ。

情報隠蔽のアベ自民党を国政と都政から挟み撃ちにする形となる中、小池氏は10、11日も2週連続で都内11カ所を回って応援演説。情報公開の重要性を強調しつつ、加計疑惑に触れる街宣を繰り返した。特に10日には、元文部科学大臣の下村博文自民党都連会長の地元・板橋区に駆け付けた。

「都連会長(下村元文科大臣)は文科行政に最も詳しい人だ。教育行政はどうあるべきか。このこともまず情報公開から始めなければいけない」「事務次官まで務めた人(前川喜平氏)が顔をさらして伝えている。そのためにはいかに公文書を管理するか(が重要)で、東京大改革の土台。その土台の都議会を変えなくてはならない」

小泉政権下で環境大臣を務めた小池知事は2005年の小泉郵政選挙を参考に、「(政策決定過程)ブラックボックス化の自民党イエスか、ノーか」「アベ友ファースト自民対小池新党など非自民」の“情報公開選挙”を都議選で仕掛ける可能性が高まったと言える。

「都民ファーストの会」幹事長に就任した野田数前代表も1日の総決起大会で、「(国政の)文書管理や情報公開の杜撰さを調べた上で都政で見本を示すという考えがあるのか」との質問にこう答えた。

「恐らく東京都で情報公開をさらに加速化させていくと、それは国であろうが、他の道府県であろうが、方向性としては情報公開の方向にベクトルが向かっていくのではないかと思っております」

都議選を情報隠蔽の安倍政権に「NO!」を突きつける場にする狙いと、「東京から国政(安倍政権)を変える」という意気込みがみえてくる。公文書管理法改正案を提出した野党と連動、都議選の構図がそのまま次期総選挙に持ち込まれる可能性も出てきた。小池新党は国政進出まで見据えているのではないか。

(横田一・ジャーナリスト、6月16日号)

スクープ!笹子トンネルの天井板落下事故で新事実
大成建設施行の天頂部だけが波打っていた(明石昇二郎)

トンネル内を調査した「笹子トンネルの真相を探る会」メンバー。(撮影/明石昇二郎)

 やる気のない警察の捜査を尻目に、民間人による手弁当の調査が新事実を炙り出した。2012年12月に発生し、9人の尊い命を奪った中央自動車道「笹子トンネル天井板落下事故」。発生から4年半が過ぎた今も捜査は終結しておらず、今回判明した新事実の活用が望まれる。

中央自動車道上り線の「笹子トンネル」で天井板落下事故が発生したのは、2012年12月2日のこと。すでに4年半が経過している。同事故では、トンネルの天頂部に接着剤で固定したアンカーボルトによって吊り下げられていたコンクリート製の天井板と隔壁板が約140メートルの区間にわたって落下。走行中の車両を直撃し、9人が死亡、2人が負傷した。

被害者に落ち度はなく、事故を招いた責任は、道路管理者である中日本高速道路(NEXCO中日本)等にあることは明白だった。現に警察はNEXCO中日本に対し、業務上過失致死傷の容疑で家宅捜索を実施している。

だが、これまで誰一人として、逮捕も書類送検もされていない。いまだ「捜査中」(山梨県警本部)なのだという。

そこで、大学教授や元トンネル施工業者、そして技術士などの民間人によって結成された「笹子トンネルの真相を探る会」(真相を探る会)が4月17日、笹子トンネルの内空調査を実施。その結果、事故現場付近のトンネルが沈下していたことを突き止めた。

測定費用は10万円

真相を探る会が着目したのは、天井板落下事故が発生する以前に繰り返し発生していた「天井板への接触事故」だ。

08年6月に発生していた天井板接触事故では、高さ4・95メートルのコンテナ車が高さ4・7メートルのトンネルを通過した際、約3キロメートルにわたって天井板に擦過痕をつけたとされていた。これが事実だとすると、そのコンテナ車はそもそもトンネルに侵入することができない。

なぜ、こんなことが起きたのか。しかも、この天井板接触事故が起きた区間(約3キロメートル)は、天井板の落下区間(約140メートル)を含んでいる。さらには、05年9月のトンネル点検で発見されていた天井板の損傷全49カ所のうち、なんと42カ所までが天井板の落下区間とその直近で見つかっていたのだ。真相を探る会では、天井板を吊り下げていたトンネル自体が沈下してきているのではないかと考えた。

図1 トンネル内空計測で測定した「長さ」。(提供/「真相を探る会」)

この仮説の下、4月17日の笹子トンネル内空調査では、実際に笹子トンネルを車で走り、天頂部の沈下具合を測定。使用したのは10メートル先の距離を1ミリメートルの誤差で測定できるライカ社製レーザー距離計「DISTO D2」3台。これと自前のノートパソコンを連動させ、測定費用を10万円以内に収めることができた(図1参照)。

天井板は波打っていた

笹子トンネルでは送気と排気のため、落下した天井板の上を空気が通る構造になっていた。天頂部から吊るされた隔壁板を境にして、片方がトンネル内にたまる自動車の排気ガスを吸い出す排煙用の道(排気ダクト)。もう片方が新鮮な空気を送り込むための道だった。

同トンネルには大きさの異なるS、M、Lの3種類の掘削断面がある。路面から天井板までの高さ4・7メートルはどこも一定で、その代わり、一番大きなL断面では天頂部から天井板までの長さが5メートル以上になっていた。

今回の実地調査により判明したのは、天井板の落下が発生した区間(L断面)の「路面から天頂部までの高さ」が一定でなかったことだ。真相を探る会では、「トンネルの一部で沈下が起きているとみて間違いないだろう」と判断した。

図2 大月側と甲府側の「L断面」比較。○をつけた箇所でトンネルの天頂部が際立って下がっているとみられる。(提供/「真相を探る会」)

図2に示すように、問題のなかった甲府寄りのL断面は大変滑らかに施工されているのと比べ、事故が起きた大月寄りの天頂部はデコボコして波打っていた。となれば、その天頂部から吊り下げられていた天井板も一緒に波打っていたことになる。天井板接触事故が頻繁に起きていたのはまさにこの区間(約420メートル)であり、天井板が落下した区間(約140メートル)を丸々含んでいる。

もうひとつ、判明したことがある。天井板落下とトンネル内の「非常駐車帯」との関係だ。

大月寄りのL断面に入ってしばらく走ると非常駐車帯の「A―3」(長さ32メートル)がある。そして、このA―3を通過してすぐのところで、42カ所の天井板損傷が集中発生していた。

非常駐車帯のA―3部分は、一番大きなL断面よりもさらに巨大な掘削断面になっていた。掘削断面積はL断面が123・1平方メートルであるのに対し、A―3部分は171・5平方メートル。これに伴い、打設するコンクリートの厚みも増し、L断面では55センチメートルなのが、A―3部分では1メートル近い90センチメートルにもなっている。このような施工区間は笹子トンネル上下線の中でもここだけだ。

この非常駐車帯に関し、会計検査院が1976年11月、気になる指摘をしていた。同院の調査により、笹子トンネル上部のコンクリートの厚さが不足する等の施工不良が見つかり、設計よりも強度が低くなっていたことが判明。全国各地で同時期に行なわれた調査では、コンクリートの厚みが半分の量しかなかったところや、コンクリートと土の間に1メートルほどの隙間が空いていたところもあったのだという。

同院では、笹子トンネルのどの箇所でどのような施工不良が見つかったのか、詳細を明らかにしていないが、問題が見つかった箇所について、設計上の覆工コンクリートの巻き厚が「55㎝から90㎝」だと具体的に記述していた。「55㎝」は笹子トンネルのL断面、「90㎝」はA―3非常駐車帯の設計とピッタリ符合する。

施工不良の原因は「監督及び検査が適切でなかったため」と結論づけられていた。指摘を受け、当時の道路管理者である日本道路公団は補強工事を行なったとされる。それでも、トンネルの天頂部は波打ち、天井板落下事故は起きた。

同トンネルの施工には、大成建設、大林組、飛島建設、前田建設工業の大手ゼネコン4社が関わっており、天井板落下事故が起きた区間を請け負っていたのは大成建設である。トンネル天頂部の施工がデコボコしていたのは、大成建設が担当していたところだけ。他のゼネコンが施工した天頂部では目立った「波打ち」は見つからなかった。

そこで、大成建設にコメントを求めたところ、
「(真相を探る会は)刑事告発をされていることですので、当社からのコメントは控えさせていただきます」(同社広報室)
とのことだった。

16年に刑事告発していた同会は、4年半が過ぎても立件しない天井板落下事故の捜査を指揮監督する立場にある最高検察庁の「監察指導部」に対し、今回の測定結果を無償で提供。迅速に立件するよう促した。

調査を立案した、真相を探る会メンバーの西山豊・大阪経済大学教授は語る。
「忘れてならないのは、国内8000万ドライバーすべてに崩落に遭う危険があったということ。再発防止のためには、徹底した科学的な原因究明が必要です」

(あかし しょうじろう・ルポライター、2017年6月2日号)

尊属殺人罪を復活したいのか?(佐高信)

前略 櫻井よしこ殿

「教育勅語は、後に天皇一人に対する忠誠心として利用されてしまったために、悪しき帝国主義の神髄を表すものだと思われています。たしかに『朕思うに』で始まるのですからそうした側面は否めませんが、内容を読んでみれば、両親に孝行しなさいとか、兄弟、夫婦は相和しなさい、友達同士で信じあいなさいといった、本当に基本的だけれども、現代の日本人が忘れてしまっているような素晴らしい心得が書かれています」

あなたは、小林節教授に不可とされた『憲法とはなにか』で、こう言っていますが、それで、教育勅語を幼稚園児に暗唱させる森友学園に講演に行ったのですね。安倍昭恵や曽野綾子、そして百田尚樹も講演したという森友学園ならぬ安倍友学園の前理事長、籠池泰典について、あなたはいま、どう考えていますか。あなたが熱烈に応援する安倍晋三と同じく、クルリと評価を変えたのでしょうか。

あなたは教育勅語の「両親に孝行しなさい」は「現代の日本人が忘れてしまっているような素晴らしい心得」だと簡単に言いますが、尊属殺人罪というのは知っていますか。

尊属殺重罪は違憲という判決

教育勅語の親孝行は尊属殺重罪に裏打ちされ、国民は天皇の赤子だから天皇に忠義を尽くせという教えに収斂されていました。それが多くの悲劇を生んだことを知らないから、あなたは能天気に教育勅語バンザイと言うのでしょう。

ここに谷口優子という弁護士が書いた『尊属殺人罪が消えた日』(筑摩書房)という本があります。

1968年10月7日付の新聞に「不倫な父娘関係の清算 事実上の夫を絞殺」とセンセーショナルな見出しが躍りました。そして次のように事件が要約されています。

「Y市の市営住宅で五日夜、戸籍上は親子関係にありながら事実上は夫婦関係にあった娘が実父を絞め殺すという猟奇的な事件が起った。今から十五年前に父親が実の娘を手ごめにして、夫婦関係を結んだことに端を発し、それまでの正妻が家出、一家が離散するというのろわれた家系で、父親と加害者の娘との間には三人の子どもまであるという常識では考えられない生活をしていた」

刑法200条の尊属殺人罪は「死刑又ハ無期懲役」で、執行猶予は付けられない重罪でした。しかし、親殺しはこの例のようによくよくのことです。ところが、大日本帝国憲法下に制定された刑法は家族国家のイデオロギーから義理を含めて親殺しを、他の殺人罪より重くしていました。

これに対して、この事件を担当した弁護士の大貫大八さんは、尊属殺重罪は日本国憲法14条の法の下の平等に違反すると訴えます。

一審はその主張が認められましたが、高裁で引っくり返り、最高裁に持ち込まれます。

途中で大貫大八さんが亡くなり、弁護は息子の正一さんが引き継ぎました。そして、1973年4月4日、最高裁は尊属殺重罪は違憲という画期的な判決を下します。

「尊属に対する尊重や報恩という自然的情愛ないし普遍的倫理の維持尊重の観点からは尊属殺人を普通殺人より重く罰することは不合理ではないが、刑法二〇〇条が尊属殺の法定を死刑・無期に限定している点において甚しく不合理であり、憲法一四条に違反する」

これが判決理由でした。私は最近、尊属殺重罪がこの年まで生きていたことを知って衝撃を受けました。あるいは、あなたはこれを復活させたいと思うのでしょうか。戦争中の娘身売りも大変な“親孝行”ですが、徳義を説くより、そんな社会にしないことが大切なのではありませんか。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、6月9日号)

釜山総領事の更迭にみる「共謀罪」の片鱗(西谷玲)

国会は6月18日の会期末を控えて、最終盤に入った。加計学園の獣医学部新設問題など解明すべきことはたくさんあるが、7月2日に東京都議選があることに加え、そして政府は種々の問題を解明したくないのであろうから、大幅延長は望むべくもない。

その限られた会期末までの期間の中で、政府が何としても成立させようとしているのが「共謀罪」法案である。政府の答弁は安定せず、大臣と官僚の言うことが違い、いったいこの法案が通ったら、どうなるのかよくわからない。捜査権が乱用され、監視社会を招く懸念は一向にぬぐえない。

「安倍政権むかつく。秘密結社つくって革命だ」。筆者が実際に最近送ったメールの一節である。こんなメールだって、問題にされかねないのである。

安倍晋三首相に近いある幹部級の官僚にそう言ったところ、「運用次第ですよね」とこともなげに答えた。ほら、やはりそうなるじゃないですか、と言うと、「すべての法律はそういうものだから」。なるほど、そういうものだろう。だから、人権ができるだけ侵害されないように配慮することが重要なのだ。今の法案審議の中では、政府からその姿勢は見られない。

そんな中、ある人事のニュースが流れた。新聞もテレビもごく小さい扱いだった。何かと言うと、韓国・釜山の総領事が6月1日付で交代するというのである。昨年6月に着任したばかりであって、通常、外交官や官僚の人事というのは2年が一つの単位だから、1年で交代というのは異例である。

新聞によっては理由を報じていないところもあったが、数紙には書いてあった。それによると、前総領事は、昨年12月に釜山の日本総領事館の前に少女像が設置された後、一時帰国した。この間、知人との私的な会食で政府の対応を批判したことを首相官邸サイドが問題にしたというのである。

記事にはさらっと書いてあったが(書いてあるだけましだが)、これ、よく考えてみると恐ろしい事態である、私的な会合での会話が問題にされての更迭である。

つまり、その場にいた誰かが、「あいつがこんなことを言っていた」と流し、政府がそれをキャッチしたわけである。共謀罪が通ったら、この種のことが多くなる、というか、国家権力の元で行なわれないとも限らない。おちおち国家の悪口を言えない。すでにその萌芽は見られるのだ。

また、最近の別の記事。2013年、特定秘密保護法が通った。その後、同法の運用をチェックする独立公文書管理監が、防衛省や経済産業省の特定秘密を含む文書の廃棄を「妥当」と判断したそうである。今年5月の管理監の報告書で明らかになった。

このまま文書が廃棄されると、何が特定秘密なのかわからないままである。一体どういう政策がどのように政府内で検討されて意思決定されていったのか検証できず、闇の中に消えていってしまうかもしれないのである。これは、法案の審議段階から指摘されていた。いざ法律が施行されて、本当にその通りになっているのである。

共謀罪だって、だから「ほらやはりあの時言った通り、心配した通りになったじゃないか」となりかねないのである。その時に後悔したとしても、あまりに代償は大きい。すでにその片鱗はあるのだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、6月9日号)

牛久入管が「痛い」と泣き叫ぶベトナム人を“見殺し”
(『週刊金曜日』取材班)

グエンさんが収容されていた牛久入管。(撮影/『週刊金曜日』取材班)

「痛い痛いと泣き叫ぶ彼を入管は見殺しにしました」――。茨城県牛久市にある法務省入国管理局の東日本入国管理センター(通称・牛久入管収容所)の被収容者は、こう訴えたという。3月末、40代のベトナム人男性が牛久入管収容所の独房で死亡した。男性は死後も放置された可能性が高い。関係者の話を総合すると、入管の対応はあまりに非人道的だ。6月20日の「世界難民の日」に合わせて記事を配信する。

泡を吹いて医務室へ

牛久駅からバスで約30分、林の中の道を進んだ先に牛久入管収容所はひっそりとたたずんでいる。この収容所の独房で、ベトナム人男性Nguyen The Huan(グエン・ザ・フン)さんは死亡した。被収容者や支援団体関係者によると、グエンさんはインドシナ難民として28年前に来日。昨年11月に名古屋入管(愛知)に収容された後、品川入管(東京)を経て、3月15日に牛久収容所に移された。

グエンさんと同室(4人部屋)だった男性によると、「15日にきたときは元気だった。普通にごはんを食べて、タバコを吸っていた」という。しかし17日20時ごろ、様子は一変。「グエンさんは2段ベッドの上で横になっていましたが、急にガガガガと口から変な音が出てきたんです。寝て夢を見ているんだと思い、『起きて、起きて』と言いました。でも起きなくて、見ると口から泡を吹いていた。変な音は泡を吹く音だったんです。起こそうとしましたが、目は開かない。おしっこも漏らしていました」

同室だった男性は急いで担当職員を呼び、職員4人と同室の被収容者3人でグエンさんをシーツごと下ろした。グエンさんは収容所内の医務室に運ばれたが、そこから外部病院には運ばれず、翌18日夕方に独房ブロックの一室に移された。

グエンさんと同じインドシナ難民で、同じブロックの三つ隣の独房だった男性は、「18日にきてからグエンさんはずっと寝込んでいて、ごはんも食べていなかった」と話す。収容所は毎日9時半から11時半、13時から16時半まで部屋のドアが開放され、被収容者は共有フロアに出てシャワーや洗濯をしたり、電話をしたり、同じブロックの他の被収容者と交流したりするなどできる。

男性は19日に様子を見に行ったが、グエンさんは「頭と首と胸が痛い」と言い寝ていた。額を触ると高熱があった。職員を呼んだが、職員は氷枕を持ってくるだけの対応だったという。

21日昼、グエンさんはフロアに出てきたが、「痛い」「我慢できない」と、頭、首、胸の激しい痛みを訴えた。そのうち動けなくなり、フロアの卓球台に横になった。だが職員は誰も来なかったので、みなで「医者に見せてほしい」と監視カメラに向かい頼んだ。

その後、グエンさんは収容所内の医務室に連れて行ってもらえたが、レントゲン撮影をし、痛み止めや湿布を渡されただけだったという。

22日夜には、グエンさんは「痛い、痛い」と叫び声をあげて痛みを訴えた。男性は職員を呼んだが、職員は「静かにしろ」「うるさい」などと言い放ったという。グエンさんはその後、休養室に移されたが、やはり外部病院には運ばれず、翌23日朝に独房に再び戻された。

同日も、グエンさんは寝込んでいた。24日朝10時半ごろ、男性の部屋にグエンさんがきて少し会話をしたが、グエンさんはすぐ部屋に戻った。その後の11時から20時ごろまでの長時間にわたり、グエンさんは継続的に「痛い、痛い」と泣き叫ぶほどの苦しみを見せた。しかし、その間、職員は一人もこなかったという。

遺体に心臓マッサージか

20時ごろ、急にグエンさんの叫び声などがなくなった。収容所では毎日22時ごろに職員が灰皿のゴミを回収にくる。この日も職員が「灰皿ちょうだい」とグエンさんの独房にやってきた。通常、被収容者が食器口から灰皿を渡すが、グエンさんは何の反応もしていないようだった。

15分後、職員が他の職員数人とグエンさんの独房に再びやってきて、ドアを開け部屋の中に入った。だがその次の瞬間、職員らは慌ただしく部屋から出てきてドアを閉め、その場を去っていった。

日付が変わった25日1時ごろ、数人の職員がグエンさんの部屋に再び入っていった。部屋からはAED(自動体外式除細動器)の機械の音が漏れ聞こえてきた。しかし、職員がグエンさんに声掛けしている様子はなかったという。そのうち救急隊員もきて、グエンさんはストレッチャーでフロアに出された。

男性が食器口からのぞくと、グエンさんは、両腕を胸のあたりで曲げ、片足が斜め上に上がった状態で固まっていた。救急隊員が腕を引っ張って伸ばそうとしたが、硬直していてピクリとも動かなかった。男性は「死後硬直している」と思った。それでも救急隊員はグエンさんの胸に注射をし、心臓マッサージをほどこした。そして目の反応を確認し、死亡の診断がされたという。

男性はこう話す。「ずっと痛いと訴えていたのに、外の病院に連れて行ってもらえず、グエンさんは死んでしまった。本当にかわいそう。担当職員は私たちの言うことを『嘘の病気』と思うみたいです。グエンさんは、叫び声が聞こえなくなった24日20時ごろに死んだと思います。22時ごろに職員がグエンさんの部屋に入ってすぐ出たのは、グエンさんが死んでいたから逃げたんじゃないでしょうか」

男性はC型肝炎と肝硬変を患っているが、収容所の医師からは「ここに治る薬はない。外に出てから治しなさい」と言われたという。「この中にいる限り、人間の扱いは受けられない。こんなところで死にたくない」(同男性)

「詐病が多い」との偏見

入管側は、グエンさんの死因はくも膜下出血で、死亡時刻は25日2時20分ごろ、死亡の確認場所は病院だとしている。北村晃彦所長(4月より清水洋樹氏が新所長に)は発表時、「現時点で処遇に問題はなかった」とコメントした。

これに対して港町診療所(横浜市)の山村淳平医師は、「グエンさんが24日にこれまでにない強い痛みを訴えていたようなので、このとき、くも膜下出血の診断と緊急手術がなされれば助かった可能性はある」との見解だ。24日22時ごろにグエンさんの死亡を職員が発見していたとすると、その時点で救急車を呼んでいないことにも大きな問題があるとした。グエンさんが医務室に行ったときのことについては、「胸のレントゲン写真と心電図検査、血圧測定、胸の聴診、身体の触診をする必要があったと考えられる」と指摘した。

牛久入管に確認すると、3月末に法務省に検証チームが設けられて現在調査中のため、詳細は答えられないとした。調査チームについて、「死亡事案だから、一応、すべて調べる必要があるじゃないですか」という言いぶりで説明した。

しかし支援者によると、現在までのところ、被収容者への聞き取りがなされた様子はないという。牛久入管はまた、24日22時ごろに職員がグエンさんの死亡を確認していたのではないかとの質問には、「そうした事実は把握していない」と答えた。

入管収容所の医療については以前から多くの問題が指摘されている。「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表は、「収容所生活のストレスで、病気が悪化したり、薬が効かなくなったりする人をたくさん見てきた」と話す。収容所に常勤医師はいない。とくに3月は18日から20日が連休で、17日17時から21日13時まで医師は不在だった。同会は入管に、常勤医師の早急な確保、職員への人権教育の徹底、外部病院への柔軟な通院を認めることなどを求める申し入れをした。被収容者が外部病院に通院できるケースはごくわずかで、通院できても腰縄に手錠という非人道的な扱いを受ける。

同会によると、「(グエンさんは)早くここから出たいから病気であると嘘を言っている」などと職員が話していたとの被収容者からの告発もあった。グエンさんと同ブロックだった男性も、同会会員に手紙で、この惨状を真っ先に訴えていた(手紙は、同会ホームページに全文掲載されている→http://www011.upp.so-net.ne.jp/ushikunokai/)。山村医師が入手した資料よると、牛久収容所は2010年から12年にかけての毎年の業務概況書で、「詐病やささいな疾病により診断を要求するものが多い」と記していた。

同所では10年に日系ブラジル人と韓国人が自殺。14年3月にはイラン人とカメルーン人が相次いで“病死”している。低待遇に加え、差別意識と偏見が悲劇を招いていることは間違いない。

(2017年6月16日号を一部修正)

自民批判の小池都知事の思惑 加計学園問題は都議選で争点化へ

都議選の応援で加計問題に触れる小池百合子都知事。6月4日。(撮影/横田一)

加計問題で“安倍政権包囲網”ができつつある。「都民ファーストの会」代表の小池百合子東京都知事や、維新法律政策顧問だった橋下徹前大阪市長までもが政府与党の対応を批判し始めたのだ。

民進党は加計学園疑惑追及チームの会合を6月2日にも開き、「官邸の最高レベルが言っていること」などと記された文部科学省内のメールを公表。複数の文科省職員の宛先が示されて件名には「概要共有」とあり、内閣府が文科省に早期の開学を促す文書「打合せ概要」も添付されていた。そこには、「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短スケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」と記載されていた。

座長の今井雅人衆院議員が文科省に尋ねたが、「出所不明の文書なのでコメントは控える」と調査に消極的。山井和則国対委員長や玉木雄一郎幹事長代理ら出席議員も、「宛先の人物に確認していただければわかる」と迫ったが、文科省は事実確認を始めようとせず、2時間以上押し問答が続いた。

地元・今治市でも疑問の声が出始めた。住民らでつくる「今治加計獣医学部問題を考える会」は2日、電話調査の結果を会見で発表。6割以上が「地域振興のために予算を使った方がいい」と回答、「多額のお金を出して誘致」は4割以下に止まったのだ。

【橋下氏まで対応を問題視】

加計問題は都議選にも波及。自民党を離党した若狭勝衆院議員は5月29日の会見で、「総理のご意向」と記された文書は「文科省の中に存在すると思う」と断言。「信憑性がない」と述べる菅義偉官房長官らを「曖昧な形にして収束させたい思惑」「総理が何らかの便宜を図った疑い。公正らしさに欠けるとしか見えない」と批判した。

「都民ファーストの会」の都議選候補への支援表明もした若狭氏は6月1日の決起大会で挨拶、自民党のしがらみ政治からの脱却を訴えた。すると、小池知事も「情報公開(公文書の管理条例改正など)」を都議選の目玉政策と位置づけ、加計学園をめぐる自民党の情報公開の姿勢を「情報公開徹底は当然」「これは都政でも国政でも同じ」と囲み取材で指摘。都議選の構図は「(意思決定過程)ブラックボックス化の自民党対透明化の都民ファーストの会」と強調。

4日の応援演説でも「まずは情報公開から始めなければならない」と最重要政策と位置づけ、自民党との違いをこう説明した。「今でも永田町と霞ヶ関とでやっているでしょう。『この文書は怪文書なのか』『私たちはちゃんとした文書としてキープしている』と。しかし基本は資料はすべて公開するのを大前提にしてこそ、新しい東京大改革が始まると思っています」。

一方、3日と4日に都議選向けの講演をした橋下徹前大阪市長も、政府与党の対応をこう問題視した。「『政治の力が働いていなかった』『文書がなかった』とか、そんなわけないじゃないですか」「総理のご意向で動いたのは間違いない。大阪府と大阪市に文書を取り寄せられたら『橋下知事のご意向』『橋下市長のご意向』と一杯入っていますよ」「安倍さんも菅さんも『政治主導で役所を動かしていった』と言ったのなら良かったと思う。問題なのは自分の友人が仕事を請けてしまったところ。友人だから引かせた(選考辞退の)方が絶対に格好が良かったと思う。『獣医学部を作るのは加計学園しかできない』というのだったら、無理やりにでも複数の学校に手を挙げてもらって、公開の場でちゃんと審査をすれば、良かったと思うのです」。

実際には、正反対のことが罷り通った。広域的に獣医学部がないこととの条件が付加され競合相手の京都産業大学が脱落したのだ。安倍首相の天の声による実質的な官製談合の疑いがあると前号で指摘したのはこのためだ。

都議選向けの集会で小池知事と橋下氏が、安倍自民党の対応を批判したことで、都議選が民意を示す絶好の機会になりつつある。「意思決定過程ブラックボックス化の安倍自民党イエスか、ノーか」を問う“情報公開選挙”の様相を呈してきたのだ。

(横田一・ジャーナリスト、6月9日号)

国の“基地負担軽減策”が沖縄の自治体を圧迫(黒島美奈子)

沖縄県内に6カ所ある養護老人ホームの一つ「具志川厚生園」(以下、厚生園)内に、沖縄初の視覚障害者用居室ができたと聞いて5月下旬、県視覚障害者福祉協会の視察に同行した。

養護老人ホームは、介護者がいなかったり、経済的困窮にある高齢者の福祉施設。そのうち視覚障害者を対象にした施設を「盲養護老人ホーム」という。戦後、全国で設置が広がり、これまで未設置県は鳥取と沖縄だけだった。離島県の沖縄では早くから必要性が指摘されてきたが、戦後72年たったこのほどようやく、既設ホームを改装する形で実現した。

トイレや浴室への音声案内、居室の点字表示、廊下の誘導テープ、階段の転落防止柵などの整備を確認した「県視力障害者の生活と権利を守る会」事務局長の渡嘉敷綏秀さんは「これで先輩たちに紹介できる」と感慨深げだった。

一方、視察後の金城清安厚生園園長との懇談では気になる話題が出た。養護老人ホームの入所者が年々減少しているという。他県の入所率が80~90%で推移しているのに対し、県内の養護老人ホームの入所率は5割程度で、厚生園では現在40%台まで落ち込んだと心配していた。低所得の高齢者が利用する特別養護老人ホームには毎年、入所待機者が数千人も出る。無届けの低料金有料老人ホーム開設も後を絶たないという状況で、金城園長は「養護老人ホームのニーズはある」と話す。にもかかわらず入所が進まない要因に「自治体が措置しない」ことを挙げた。

養護老人ホームに入所するには自治体の措置が必要だ。措置費は高齢者1人当たり1カ月約20万円。別枠で国の補助対象だったが2005年に一般財源化された。金城園長によると、以降、県内では養護老人ホームへの措置が極端に低迷している。一般財源化後も、高齢者を措置すればその分の補助が自治体に入る仕組みに変わりはない。県内の低迷について金城園長は「一般財源化で補助が目に見えなくなり、自治体の負担分が際立ち、敬遠されているのではないか」とした。

それを聞いて、琉球政府の福祉部に在職していた元県生活福祉部参事・西表孫称さんの話を思い出した。県内では、人口当たりの特別養護老人ホームや認可保育園の設置率も他県に比べ低い。理由を尋ねたら西表さんは「基地問題で有形無形に割かれる自治体の負担が影響しているのだろう」と語っていた。

他県にはない新たな自治体負担がことし5月にも明らかになった。昨年発生した米軍属による暴行殺人事件を受け、国が全額補助する「防犯灯・防犯カメラ等緊急整備事業」。当初国は県内37市町村に13億円の交付を決めたが、整備台数や自治体の数が、国が見込んだ半数程度になる見込みだ(5月14日付『沖縄タイムス』)。維持管理費が自治体負担となることが主な理由。事件後に国が事業化した「沖縄・地域安全パトロール隊」の予算約9億円も昨年、沖縄関係予算に組み込まれ県から反発が出ている。

国が次々と打ち出す基地負担軽減策が、県や自治体の財源負担としてブーメランのように返る構図。それは復帰から45年間、澱のように溜まり続け、県民生活に影響を及ぼしている。そこにいかほどの国税が投入されてきたかも、国民は知るべきだと思う。

(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者。6月2日)

G7の隠れ孤立男、安倍首相(浜矩子)

「6対1だった。」ドイツのメルケル首相の言葉だ。5月26・27日に、イタリアのタオルミナでG7サミット(主要国首脳会議)が開催された。上記のメルケル発言は、この会合について語る中で出てきたものだ。

この「6対1」は、「トランプ米大統領対その他6カ国首脳」を意味している。今回のサミットで、トランプ大統領は少なくとも二つのテーマについて他の国々の首脳たちと衝突した。その1がパリ協定。その2が貿易である。

パリ協定は、地球温暖化対策に関する国際的枠組みだ。2015年にG7各国を含む国々の間で合意を得ている。ところが、トランプ大統領はパリ協定を受け入れるか否かの判断を留保した。何しろ、大統領選を闘う中で「地球温暖化はでっち上げだ」と叫んでいた人だから、スンナリ受け入れられるわけがない。

貿易に関する焦点は保護主義だ。大統領就任演説の中で、トランプ氏は「保護は豊かさをもたらす」と宣言した。これまた、保護主義排除を謳い上げる共同宣言に、素直に合意できるはずがない。

貿易とのかかわりでは、サミット開催直前に、こともあろうにドイツを名指しして、対米貿易黒字が大き過ぎると不平不満をぶちまけた。「ドイツは悪い!」そう叫んでしまった。

こんなトランプ芝居に突き合わされれば、メルケル首相が「6対1だった」と不快感を露わにするのは、とてもよく解る。さぞかし、憤懣やるかたなかったことだろう。

ただ、それはそれとして、今回のG7サミットは、正確にいえば、「6対1」ではなかったと思う。確かに、表面的にはトランプ氏が1人で浮きまくっていた。だが、本当の構図は「5対1対1」だったと思う。もう1人の「1」が、日本の安倍晋三首相である。なぜなら、彼には、このサミットで決して明かすことがなかった大いなる野望がある。

安倍首相の野望とは、「世界の真ん中で輝く国創り」である。これが、今日における彼のメイン・テーマだ。主旋律である。そうだということを、今年の1月20日、通常国会の冒頭における施政方針演説の中で、安倍首相はみずから高らかに宣言している。

これは凄いことである。トランプ大統領の「アメリカ第一」などとは、野望度の高さがまるで違う。「アメリカ第一主義」は、ただ単に、アメリカはアメリカに引きこもりたいと言っているだけだ。アメリカはアメリカのことしか考えない。アメリカはアメリカの外に出ていかない。外からアメリカに入って来てほしくもない。引きこもらせて。ほっといて。そう言っているだけである。

だが、世界の真ん中で輝くとなると、これは、大変だ。要は、自分が太陽になるのだと言っている。その他大勢は、惑星どころか衛星と化して、我が周りを回っておれ。これは、世界一になりたいというのとも、大いに違う。世界一になるというのは、多くの競技者の中で一番になることだ。太陽になるつもりの人は、衛星たちと競ったりする気はない。これぞ、本当の孤立だ。G7の隠れ孤立男こそ、重大要注意人物である。

(はま のりこ・エコノミスト。6月2日号)

共謀罪と松本人志(小室等)

前にも書いたと思うけど、僕の伯父は、あの太平洋戦争で中国に連れていかれ、制圧(?)した村で水たまりに引きずり出した村民の男の首を連隊長が日本刀で切り落とすのを目撃したと僕たちに語った。別の叔父は、東南アジアの雨のジャングルで、濁流に足を取られた戦友の手を必死に摑んだが力及ばず手は離れ、戦友は濁流の中に消えていったと語ってくれた。

戦争体験は僕のところまでは語り継がれている。

フジテレビの「ワイドナショー」を見ていたら、共謀罪について、松本人志の「冤罪事件を生むかもしれないリスクが多少あっても、テロなどの事件を未然に防ぐことのプラスの方が多いような気がする」という発言が飛び込んできた。

事件を未然に防ぐためには冤罪の一つや二つの犠牲はかまわない。この理屈に今の世間は頷く。

街中に無数に設置された防犯カメラで四六時中僕らは監視されているというのに、そのことを気持ち悪いと思わない今の世間。

そう言えば、近所の連帯を表す「向こう三軒両隣」という標語は、戦時中には助け合いの裏に監視し合う機能があったらしい。向こう三軒の密告を促し、反戦思想者や共産党員をあぶりだす機能を果たした。向こう三軒両隣という「世間」が、共産党員ならあぶりだされてもしゃーないやろ、と考えるなら、僕は世間じゃない。

本土決戦まで時間を稼ぐ持久戦としての、その名も「捨て石作戦」。その沖縄戦での沖縄人の死亡者、〈沖縄県出身軍人・軍属(現地召集を受けた正規兵のほか、防衛隊・鉄血勤皇隊など)2万8228人。戦闘参加者(日本軍に協力して死亡した準軍属と認定された人数)5万5246人。一般住民3万8754人(推定)。地上戦域外での餓死者・病死者、疎開船の撃沈による被害なども含めると沖縄県民の犠牲者は15万人とする場合もある〉(ウィキペディア)。

沖縄の犠牲が多少あろうとも本土決戦を未然に食い止めることのプラスの方が多い、と言えてしまえる? たかだか共謀罪をすぐに大げさな話にすり替える、って?でもね一九四一年三月、共謀罪と同じ内容の改正治安維持法が可決されたよね。その年の一二月、日本は真珠湾攻撃を仕掛けて太平洋戦争にまっしぐら。結末は沖縄一五万人の死。「未然に防ぐことの方がプラス」なのは共謀罪でしょ。

どんなに嫌な奴でもひたすら旦那をヨイショし、後ろ向きになったときペロッと舌を出すのが芸人、と聞いたことがある。松本人志さんはどんな芸人かな。同じマツモトさんでもいろんなマツモトさんがいるね、ヒロさん。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、6月2日号)

自民党都議56人を独自調査、「意見交換会」で1100万円超支出の“非常識”

政務活動費で「新年会」の参加費を払ったことを示す自民党早坂義弘議員宛ての領収書。(撮影/三宅勝久)

自民党東京都議会議員が自治会や消防団、商業団体などに対して、「意見交換会」と称して政務活動費(月額上限50万円)を支払った例は、2015年度1年だけで約1500回を数え、金額は1100万円を超すことが、都議会事務局が保管・公開する領収書類の調査・集計によってわかった。特に1月に集中して多く、800件を超す。「意見交換会」の実態は新年会などの宴会の類が大半とみられる。

また、1日に何件もの支出を行なっている例が多数あり、事実上の有権者に対する「祝儀」になっている可能性は否定できない。

今回調査した領収書は、自民党会派56人(当時の会派所属議員。うち4人は後に新風自民党、都民ファーストの会、無所属へ移籍)の2015年度分。領収書はざっと1万枚もの大量で、大型ファイル41冊につづられている。そのすべてに目を通して「意見交換会」関連のものを抜き出した。

その結果、懇親会の類に支出した自民党都議は50人とほとんど全員で、うち20万円以上の支出があった議員は26人、うち40万円以上は11人にのぼった。

金額の多い都議は次のとおり(敬称略、カッコ内は選挙区、金額は概算。5000円未満の支出は省略した)。(1)堀宏道(豊島)59万円、(2)来代勝彦(港)54万円、(3)鈴木章浩(大田)50万円、(4)山内晃(品川、都民ファースト)49万円、(5)崎山知尚(荒川)46万円、(6)早坂義弘(杉並)45万円、(7)高木けい(北)45万円、(8)菅野弘一(港)43万円、(9)清水孝治(立川)41万円、(10)柴崎幹男(練馬)40万円、(11)高橋かずみ(練馬)40万円。

1回の支出額は、都議会の使途基準で上限を1万円と定めている。その上限いっぱいの1万円を払っている例が大半だ。堀議員の場合、78件で59万円を支出しており、平均額は8000円近い。

【出納簿を公開しない理由】

この78件の内訳をみてみよう。70件が1月に集中している。毎日1件では足りない、1日で3件~5件の「意見交換会」をはしごしている。精力的な「意見交換」の様子は想像にかたくない。2016年1月26日付で、豊島区米穀小売商組合に払った1万5000円のうち政務活動費で支出した1万円について、堀議員の説明書には「健全な営業の維持・向上について意見交換」ともっともらしいことが書かれている。しかし領収書の但し書きにはこうある。

「平成28年度新年懇親会会費」

どうみてもただの新年会である。顔を出して金を置いてきたというのが本当のところではないか。かりにそうだとすれば公職選挙法に抵触する恐れもある。

堀議員にかぎったことではないが、領収書も、税務署に出したら指摘されそうなあやしげなものがいくらでもある。電話番号が載っていればまだよいほうだ。いっさいの連絡先がない。町内会らしい名前、趣味の会のような任意団体。早坂議員は「杉並区民謡連盟」といったゴム印だけの領収書を提出している。実在するかどうかすら一見しただけではわからない。かりに実在するとしても、そこに払われた政務活動費がどう会計処理されているのかはわからない。小泉やすお杉並区議が「団長」だとの情報もあり、単なる自民党“杉並ムラ”の寄り合いということも考えられる。

議会の政務活動費には、政党支部あての支出を認めたり、人件費の金額と支払い先を非公開にするなど、大きな問題がある。しかし世論の関心は高くない。理由の一つは、調査が困難だからだろう。

大量の領収書を開示しておきながら、支出の明細を整理した出納簿を出していない。共産党だけは自主的に公開しているが、特に自民党は整理の悪さも加わって調査に膨大な労力を要する。わざとそうしているきらいがある。

都議会事務局によれば、来年度からインターネットで領収書と出納簿を公開する方針だというが、簡単にできるはずの出納簿の即時公開をする予定はないという。7月2日投票の都議選を控え、多くの議員にとっては見られたくないものがあるということか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月2日号)