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「反原発」にまで広がる「反核」運動――福島から始まった原水禁大会

2011年8月26日6:25PM

毎年夏に世界大会を開いてきた原水爆禁止日本国民会議(原水禁)。被爆六六周年の今年は東京電力・福島第一原発事故が起きた福島が大会スタート地に選ばれ、この地で何が語られるのかが注目されていた。

七月末から福島・新潟は記録的豪雨となったが、三一日の開催日には全国各地から約八五〇人(主催者発表)がJR福島駅前にある辰巳屋ホテルホールに参じた。

大会実行委員長の川野浩一氏は「広島、長崎では(被爆から)六六年経った今でも原爆症に苦しむ人や、病に怯える生活がある。(福島でも)長い年月の闘いを覚悟しなければならない」と、被爆者である自身の体験を踏まえながら主催者挨拶をした。

地元の代表として挨拶に立った福島県実行委員会委員長の竹中柳一氏は「福島で水田がなくなりつつある。何百年にもわたって稲作をしてきた先人・先祖に対して、償いきれないほどの過ちを犯してしまったのではないか」と話した上で、「大地を取り戻そう」と呼び掛けた。

双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎氏は現地報告として「屋外の活動を禁止された子どもたちが一〇万人もいる。子どもたちがいる学校や、夏休みの原風景が失われてしまった」と、大人の責任を問うた。また、原子力ムラをはじめとする原発推進勢力は「われわれ世代の男たち(が主)」と指摘し、“男性中心社会”の弊害を訴えた。

全国各地の原発を取材してきたジャーナリストの鎌田慧氏は、「原発の危険性を前から訴えていた人は私を含めて多かったが、事故を防ぐ力には成り得なかった。こんな事故が起きる前に、どうしてもっと力を込められなかったか」と悔恨の念を示し、「原発体制を越えて 人間の未来へ」と題する講演を行なった。鎌田氏は「白河以北・一山百文」という言葉を紹介。明治維新を遂げた薩長土肥勢力が東北地方を侮辱して用いた用語で、「この白河以北に日本全体の半分の原発がある。中央政治はこの地域を虐めて虐めて虐め抜いてきた」とし、原発問題は差別問題であると説いた。また、放射能に汚染され作物を作るという営みができなくなった福島の地について、自然科学者レイチェル・カーソンの言葉を引き「“沈黙の春”になってしまった」と例え、「社会を変えなければ(人間は)生きていけない」と語気を強めた。

小雨の福島市。20代がデモの先頭を歩いた。(撮影/編集部)

年配層が中心にいたこれまでの「反核」運動だったが、今大会では若い世代の参加も目立った。同日、世界大会の前に実施された福島県民大会でのデモには約一七〇〇人(主催者発表)が集まったが、先頭は地元港湾で働く組合「全日本港湾労働組合」青年部で、メンバーはほぼ二〇代。リーダーの鈴木雅史さん(二五歳)は二歳と〇歳四カ月の子の父親だ。被災後、妻と逃げるべきか話し合ったが、結局留まり、三月一六日に地元いわき市で二人目の子が誕生した。「この子らへの放射能の影響が一番心配。妻ともいつもその話をしている」という。デモでは「核のない平和な世界を」と旗を掲げた。

原水禁と同じ反核平和運動を展開してきた原水爆禁止日本協議会(原水協)でも、八月三日から世界大会が始まっている。

(野中大樹・編集部、8月5日号)

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