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女性市議はなぜ「炎上」したのか(黒島美奈子)

発端は3月9日夕、沖縄県宮古島市の市議が自身のフェイスブック(FB)にした投稿だった。

陸上自衛隊が米カリフォルニアで米軍演習に参加したことを伝え「海兵隊からこのような訓練を受けた陸上自衛隊が宮古島に来たら、米軍が来なくても絶対に婦女暴行事件が起こる。軍隊とはそういうもの。沖縄本島で起こった数々の事件がそれを証明している」などと綴られていた。

米軍による性的暴行は深刻だ。米国防総省が2014年に公表した報告書によると、13年度の米軍内での性的暴行件数は5061件で前年度比50%増。同省が数年前から対応を強化しているにもかかわらずにだ。軍別では海兵隊が最も多く、女性海兵隊員の7・9%が被害を訴える。こうした性的暴行の多さは軍隊の構造によると指摘されている。市議の投稿はそうした事実を踏まえ、米軍との共同訓練強化で自衛隊が影響を受けるのではないかと懸念したものだ。

ところがFBには投稿を批判する意見が相次いで寄せられた。いわゆる炎上だ。市議は翌10日、同じFBで「言葉足らずな表現から、私の意図するところとは違う様々な誤解を生んでしまいました」と謝罪。(1)自衛隊や自衛隊員を批判しているわけではない、(2)自衛隊員がみんな婦女暴行事件を起こすと思っているわけではない、と釈明した。投稿の趣旨は「米軍と一体化して訓練することで、本来の自衛隊の専守防衛の枠を外れつつあることに強い危機感を持った」としたが、誹謗中傷や家族の情報を暴露するような書き込みも増えたことから一連の投稿を削除した。

日本という国で、軍隊による性暴力について認識を共有することは難しいのだろう。72年前の米軍の侵攻と同時に、沖縄では兵士による性暴力が続いている。しかし被害の実証は長い間困難だった。性暴力への偏見が根強い社会で被害者の多くは沈黙し、表面化するのは殺人に至ったケースなど一部の事件のみだ。県内の女性団体が古い警察記録や文献から洗い出した資料によって、米軍の駐留と性被害の関係性が明らかになったのは1990年代後半のことだ。

FB騒動は投稿削除で収まるかに見えたが、その後、舞台は市議会へ。投稿を疑問視した保守系与党会派議員団が市議の辞職勧告決議案を緊急動議で提起し可決。理由は「市議会の品位を著しく傷つけた」からだという。市議が議員継続の意志を示すと翌日、それに反発した議員ら15人が一般質問をボイコットし流会。本会議が2日間も停滞する異例の事態となった。

なぜか。私は、くだんの市議が女性であったということが関係していると思う。ネット投稿で批判を浴びる議員発言は今や枚挙に暇がないが、それに対してほかの議員が一般質問をボイコットするなど聞いたことがない。辞職勧告決議の理由が「市議会の品位を傷つけた」というのも釈然としない。強引な市議会の態度は、国会で野党の女性議員が質問に立つと、男性議員の時とは明らかに異なる態度をとる閣僚たちと重なる。

同様に感じた人は、多かったのかもしれない。次第に市議会の対応への疑問の声が寄せられるようになり、議員らのトーンは急速に低下した。3日目には一転、議会は正常化した。政治をただすのはやはり、市民の声なのだ。

(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者。3月31日号)