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青林堂の“沖縄ヘイト本”に絡む政治家――「辺野古」を「裏口」と呼び捨てる共著者も(内原英聡)

青林堂『沖縄の危機!『平和』が引き起こす暴力の現場』は、はすみとしこ氏が表紙のイラストレーションを担当している。(撮影/編集部)

今年1月、(株)青林堂から沖縄の基地問題に関連する書籍が刊行された。冒頭の章「はじめに」で〈「平和主義」を唱える〉のは〈反日集団〉だと断定するなど不確かな情報が多いこの本の共著者には自民党国会議員が名を連ね、緊急出版記念講演会では浦添市長も挨拶していた。

 

本のタイトルは『沖縄の危機! 『平和』が引き起こす暴力の現場』(以下、『沖縄の危機』)。兼次映里加、仲新城誠、ロバート・D・エルドリッヂ、仲村覚、宮崎政久(自民党衆院議員)の各氏が共著者だ。

ジャーナリストを名乗る兼次氏は『夕刊フジ』などに寄稿する人物。『沖縄の危機』では〈基地反対派〉を〈職業を持たずに、専ら「平和のための市民運動」をしている〉と断定。米軍新基地建設の阻止を求める市民運動は、〈「破壊活動」そのもの〉などと記述する。

産経新聞社と提携する『八重山日報』の編集長である仲新城氏は、同書で〈沖縄タイムスと琉球新報〉を批判。たとえば県内2紙は辺野古での「米軍新基地建設」と表記しているが、仲新城氏はこれを「嘘」だとし、日米両政府が主張するように「移設」だと強調している。仲新城氏は基地を〈駐在所〉、米軍を〈非常にガラが悪く、近所の評判が悪い〉〈警備員〉にたとえ、この〈駐在所を人目がつかない裏口に移動することにした〉と本書で解説した。裏口とはつまり辺野古のことだが、故郷をそう呼ばれる人びとへの配慮はないようだ。

エルドリッジ氏は(一社)日本戦略研究フォーラムに所属。関係者は改憲を目論む“右派”団体「日本会議」と多数が重複している。

仲村氏の肩書は政治系団体「沖縄対策本部」代表など。同書では〈沖縄のマスコミ〉や〈国連〉には中国の工作が入っており、侵略を狙う〈日本の敵〉などとある。

さらに、今回『沖縄の危機』の表紙イラストレーションには「はすみとしこ」氏を起用。はすみ氏は2015年9月、実在する難民の少女をモデルにした絵を公開し、「他人の金で。」「そうだ難民しよう!」との文言を添えた人物だ。

当時は国際的に批判を浴びたが、青林堂は同年12月、作品集『そうだ難民しよう! はすみとしこの世界』を出版。ここにも差別煽動表現が含まれていたため、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」は同年11月18日、「差別を商業主義と結びつける卑劣な行為を強く非難します」との声明を発表した。

青林堂は14年、桜井誠氏(「在日特権を許さない市民の会」当時会長)の著書『大嫌韓時代』なども出版している。今年2月6日放送のNEWS23(TBS)では、社内の深刻なパワハラ被害が報じられるなど、話題多き出版社だ。

「本はまだ読んでいない」

松本哲治浦添市長が参加した緊急出版記念講演会のチラシ。宮崎政久衆院議員も講演した。(撮影/編集部)

この『沖縄の危機』に政治家が関与していた。1月28日沖縄の浦添市内で、同書の緊急出版記念講演会が開かれた。主催は前出の仲村氏らだが、松本哲治浦添市長(自民・公明両党が推薦)がここに招かれ、堂々と挨拶をしていたのだ。

松本市長は2月17日の市長選挙で2期目となる再選を果たした。翁長雄志知事とは事実上、対立関係にある人物だ。

『沖縄の危機』との関係を松本市長本人にたずねた。文書での回答は3月8日。要旨は以下の通りだ。〈特別ゲストとして発言をした。主催者や出版社のことは、本当に知らなかった。本はまだ読んでいない〉。さらに経緯については、共著者の宮崎議員が「市長選挙の選対本部長であり、選挙直前の急な依頼であったのでとりあえず参加した」のだと言う。

宮崎議員には3月6日質問を送っており、松本市長の回答も後日事務所に伝達した。しかし記事締め切りの13日まで回答は得られなかった。『沖縄の危機』では〈政治に身を置く者として〉〈自ら信ずるところを誠実にお伝えして理解を得る努力をする〉としていたが。

(うちはら ひでとし・編集部。3月17日号を一部修正)