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新潟県知事選、自主投票の民進党は「怪我の功名」――再稼働に反対の米山氏が当選

2016年10月31日11:31AM

新潟県知事選に当選した米山隆一氏(右から2人目)。(撮影/横田一)

新潟県知事選に当選した米山隆一氏(右から2人目)。(撮影/横田一)

東京電力「柏崎刈羽原発」再稼働が最大の争点となった新潟県知事選が10月16日に投開票され、再稼働に慎重な泉田知事路線の継承を訴えた米山隆一氏(49歳、共産・自由・社民推薦)が、前長岡市長の森民夫氏(自公推薦)に約6万3000票差で初当選をした。森氏は連合新潟の支持も受けて当初は「圧勝」と予想された。その後も、接戦の世論調査を受けて二階俊博幹事長(全国土地改良事業団体連合会会長)が土地改良関連団体や建設業者などの企業・団体を回り、石破茂・前地方創生大臣ら有名国会議員も新潟入りしたが、まさかの敗北を喫した。

安倍政権直撃の「新潟ショック」は首相の解散戦略に影響を与える一方、共産党の志位和夫委員長が「歴史的な勝利」と言えば、自由党の小沢一郎共同代表も「安倍政権打倒へ野党共闘を積極的に進める」と野党陣営は勢いづいた。

米山氏の選挙事務所も熱気に溢れていた。21時すぎに当確が出ると、歓声が沸き起こり、万歳後に米山氏は、「原発再稼働に関しては、皆さんの命と暮らしを守れない現状で認めることはできないとはっきり約束します」と明言。

続いて選対本部長の森ゆうこ参院議員が勝因分析。「原発問題を最大の争点とする選挙は今回の県知事選が初めて。それで『再稼働イエスかノーか』を問うことができ、『郵政民営化イエスかノーか』を迫った小泉元首相の郵政選挙と同じような構図に持ち込めた。全国に広めていきたい」。

「怪我の功名」とはこのことだ。7月の参院選新潟選挙区では、野党統一候補の森参院議員が接戦を制したが、原発推進の電力系労組が抱える連合新潟が支援に回ったこともあって原発問題は封印。それに対し、今回の県知事選では、民進党が自主投票を決めて支援団体の連合新潟が自公推薦候補の支持に回ったことから、米山氏は原発再稼働反対にまで踏み込み、原発推進の安倍政権との対立軸を明示した。そして小泉流郵政選挙に似た米山流原発選挙を展開、6割以上が再稼働反対の県民民意の受け皿となって猛追、奇跡の逆転勝利にこぎつけたのだ。

県連丸投げで指導力欠如の執行部に呆れた民進党国会議員有志が続々と新潟入り。超党派議員連盟「原発ゼロの会」の阿部知子衆院議員や近藤昭一衆院議員を皮切りに、代表選を戦った前原誠司・元国交大臣や松野頼久・前維新代表らも応援演説をすると、自主投票を決めた県連会長の黒岩宇洋衆院議員も米山氏の個人演説会で支援表明。遂に14日に蓮舫代表と江田憲司代表代行がそれぞれ大票田の新潟市と長岡市に入り、事実上の野党共闘態勢となったのだ。

こうして蓮舫代表は最終盤で米山氏勝利に関わることができたが、「新潟入りは代表としてではなく、個人的立場での応援」(蓮舫代表)。応援演説をした松野氏は馬淵澄夫選対委員長に「自主投票から推薦への格上げ」を提案していたが、組織決定に至らなかったためだ。

都知事選では都連が決めた候補を執行部が差し替えたように、県連の決定を党本部が変えることは可能。なぜ蓮舫代表の意向が組織決定(推薦への変更)に至らなかったのか。「選挙担当の野田佳彦幹事長と馬淵選対委員長が野党共闘に消極的であるため」という見方が有力。「共産党や小沢一郎氏嫌いで有名な野田氏が『小沢氏に近い森参院議員が決めた候補は応援したくない』『共産を含む野党共闘はしたくない』という感情に囚われたためだろう」(民進党国会議員)。

17日の幹事長会見で野田氏にこの見方をぶつけると、「私も馬淵選対委員長も野党共闘に消極的ではない」「県連の自主投票決定を『誤ったもの』と決め付けるつもりはない」と反論。しかし自公に勝利した県知事選を最大限活用できない原因は、推薦決定をしなかった執行部2人(野田氏と馬淵氏)の職務怠慢にしか見えないが、野田氏は「執行部が総括をするつもりはない」と県連に責任を丸投げする姿勢。衆院補選で惨敗すれば、「総選挙で安倍政権に勝利するには2人の交代が必須」と声が出るのは確実だろう。

(横田一・ジャーナリスト、10月21日号)

 

 

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