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アイヌ遺骨返還に国際協力を――世界考古学会議で訴え

2016年9月29日4:56PM

海外のアイヌ遺骨の返還へ、研究者の後押しを求める北海道アイヌ協会の加藤忠理事長。9月1日、京都市。(撮影/井澤宏明)

海外のアイヌ遺骨の返還へ、研究者の後押しを求める北海道アイヌ協会の加藤忠理事長。9月1日、京都市。(撮影/井澤宏明)

世界最大規模の考古学の学会、世界考古学会議(WAC)の京都大会で9月1日、北海道アイヌ協会の加藤忠理事長(77歳)が演説し、海外に研究資料として渡ったアイヌ民族の遺骨返還への協力を呼び掛けた。大会では、アイヌを始めとする先住民の遺骨返還を後押しするため、研究者の間で各国の遺骨の保管状況について情報交換していくことを確認した。

同会議は1986年に発足。考古学の社会的責任を重視し、先住民やマイノリティ自身の研究参加にも積極的に取り組んできた。京都大会は、約80の国や地域から約1600人が参加し、9月2日までの6日間開催された。

加藤理事長は演説で、国内の大学や博物館などに約1700体のアイヌ遺骨が保管され、ドイツやロシアなど海外にも渡っていることを説明。「国の責任の下、発掘時の姿にするのが、あるべき慰霊の姿。日本の先住民政策への取り組みについて、国際的な後押しと、継続的なモニタリングを」と訴えた。

米・ハワイの先住民マオリの文化人類学者は、「アメリカ先住民墓地保護・返還法」成立後、研究機関などから約6000体の遺骨が返還されたことを、米・スミソニアン国立自然史博物館の遺骨返還担当でチョクトー族の女性は、返還作業に先住民自身が携わることの意義について、報告した。

遺骨収集が、国際的な研究者間のネットワークを使って行なわれていたことを示す報告もあった。オーストラリアの研究者によると、メルボルン博物館にあるアイヌ遺骨1体について、日本の人類学者と同博物館の研究者の間で、先住民アボリジニーの遺骨と引き換えに入手した記録が残っているという。

北海道大アイヌ・先住民研究センターの加藤博文教授(考古学)は「国内の研究機関に海外先住民の遺骨があるかどうか調べ、確認されたら、先住民への返還を考えていく必要がある」と話している。

(井澤宏明・ジャーナリスト、9月16日号)

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