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沖縄二紙は「本当に潰れたほうがいい」──自民党国会議員も出席した東京都内の「靖国集会」(内原英聡)

2016年5月27日9:09PM

「『琉球新報』とそして『沖縄タイムズ』(注)という非常にこう、明らかにおかしな新聞が二社ございます」「本当に潰れた方がいい」――。

かながわ自民党の小島健一県議は5月8日、「沖縄県祖国復帰44周年記念」の「日本民族団結靖國集会」(同実行委主催・以下、靖国集会)に登壇し、冒頭の発言をした。

小島県議は「神奈川にも『神奈川新聞』という三流左翼新聞がございまして」と続け、「基地の周りには基地反対だとかオスプレイ反対だとか、もう毎日のように騒いでいる人たちがいます。これを基地の外にいる方ということで“きちがい”の方というふうに私なんかは呼んでおります」と述べると、会場は盛大な拍手と笑い声に包まれた。

「市民運動を隠れ蓑に堂々と反社会行動をしている方々が、沖縄二紙に守られている」。こう挨拶したのは自民党の長尾敬衆院議員(比例近畿)だ。昨年6月25日、党の文化芸術懇話会で沖縄メディアを「左翼勢力に完全に乗っ取られている」「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落だった」などと語ったことが問題視され、党からも厳重注意処分を受けている。

長尾議員は靖国集会で、「戦後わが国は沖縄に対してどのような措置を講じてきたのか」と問いかけた。そしてこう言及した。「米軍基地があるんだから、我慢してもらってるんだから、とりあえずお金だけ配っとけばいいんじゃないの、というような風潮がまったくなかったとは言わせません」「観光の名所、米軍基地があるところ、なんかとっても南国でのんびりとして楽しいところというようなイメージ」「沖縄もおそらくそれに甘んじていたんじゃないか」。

さらに憲法については、「基本的人権、権利、自由、こういったものを標榜する憲法のなかで現在の国柄をつくらざるを得ない環境になった」との見解を示した。「基本的人権」や「自由」を否定するかのような発言だが、長尾敬事務所(東京都)は、「義務なき権利、秩序なき自由等、行き過ぎた個人主義が蔓延した我が国の現状を憂える意であり、否定というご指摘はあたりません」と言う。

     目的は国連の勧告撤回

沖縄の日本「復帰」を記念するとともに、靖国集会は〈「国連先住民族勧告の撤回を実現させる国民の会」設立決起大会〉と位置づけられた。国連の人種差別撤廃委員会は2008年と10年に各1回、14年は2回にわたり、沖縄の人びとは「先住民族」だとして諸権利を保護するよう勧告している。

5月8日の靖國集会で登壇した自民党の宮﨑政久衆院議員(比例九州)。(撮影/内原英聡)

5月8日の靖國集会で登壇した自民党の宮崎政久衆院議員(比例九州)。(撮影/内原英聡)

靖国集会には政財界などから11人が登壇。長野県出身で九州比例選出の宮崎政久衆院議員(自民)は「遺伝学的な部分」を強調した出典不明の自説を論じ、「沖縄の人は紛れもなく日本人であります」と主張した。4月27日の衆院内閣委員会で質問に立った宮崎議員は、国連の勧告について「民族分断工作だ」としていたが、この「民族分断」がいったい何を指すのか実態は曖昧だ。

5月13日、小島・長尾・宮崎の三議員に次の質問への見解を訊ねた。

〈5月8日の靖国集会では、日本政府は先住民族としてアイヌしか認めていない、との見解が示されました。一方で集会の表題は“日本民族団結”とあります。
質問(イ)、「日本民族」の定義はどの資料又は文献で示されていますか。
質問(ロ)、「日本民族」が存在する場合、この集団は日本国における先住民族なのでしょうか。
質問(ハ)、先住民族であると議員が考える場合、政府見解との整合性について伺いたい〉

回答期限の16日、長尾敬事務所から「集会の趣旨に関しては、主催者にお問い合わせください」と消極的な文書がファクスで届いた。国会の宮崎政久事務所は「多忙」を理由に回答が間に合わないと返答。17日、小島健一事務所に質問書の確認をするとスタッフは、「小島のほうにはその旨伝えております」としつつ、回答の有無について小島氏は「何も言っておりません」とのことだった。

(うちはら ひでとし・編集部、2016年5月20日号)

〈注〉正しくは『沖縄タイムス』ですが、小島健一県議の発言通りに記述しました(下記動画の2分45秒すぎからが該当部分です)
https://www.youtube.com/watch?v=cnwWteGBl0w

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