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戦後補償裁判の報告でも――「慰安婦」合意を批判

2016年2月5日2:29PM

1月14日、東京・霞が関の弁護士会館で「戦後補償裁判の現状と課題2016」というフォーラムが行なわれた。主催は戦後補償問題を考える弁護士連絡協議会と戦後補償ネットワーク。

当日は、日本・中国・韓国で進行中の戦争被害者の戦後補償裁判の現状報告に加え、韓国内で戦後補償裁判にかかわる張完翼弁護士の特別報告があった。昨年12月28日の従軍「慰安婦」に関する日韓両政府の合意について参加者の注目が集まった。(1)形式的に日本政府は責任を認め、(2)韓国が創設する財団に日本が10億円拠出する。(3)不可逆的に解決する「合意」だ。韓国政府は日本大使館前の少女像の撤去・移転に努力すると表明した。

張弁護士は「法的責任とは口でなく行動で示すべきものであり、岸田文雄外相に代読させて安倍晋三総理本人が話していないことに多くの人が批判的だ」と安倍首相の姿勢に言及した。さらに、「合意」の問題を次のようにあげる。

「1995年のアジア女性基金と何が変わったのか。今回は日本政府が10億円を財団に出すだけ。また少女像に関しても、韓国政府は10億円拠出を前提に移転撤去に努力すると発表していない。(かりに移転等するにしても)資金を出したうえで、少女像の今後を考えようというのが筋だと私は思う」

張弁護士が指摘するように、財団へ資金提供するやり方は、国の責任をあいまいにして批判されたアジア女性基金の二の舞になる可能性がある。

さらに今後の影響について張弁護士は、「合意の5日前の12月23日、韓国の憲法裁判所は『韓日請求権協定』を合憲とみなす決定を行なった。今回の『慰安婦』の合意と合わせ、現在起きている十数件の日本企業相手の戦後補償裁判に悪影響を及ぼしかねない」と指摘する。「合意」は問題解決に向ける努力に水を差す結果になった。

(林克明・ジャーナリスト、1月22日号)

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